夢の中で恋人を選ぶことになった俺
黒煙
第1話
今俺は夢の中にいる。
感覚でわかる。真っ暗な空間の中で宙に浮いているような地面に立っているようなどっちつかずの感覚がする。
明晰夢と呼ぶのだろうか。
しかし明晰夢とは少し違うような気がする。
自分の思い通りの夢にすることができない。強く念じても場面は切り替わることなく、俺はひたすら同じ場所に立たされていた。
すると目の前に白い衣を着た女神が現れた。
「あなたが落としたのはこの右の女性ですか?それとも左の女性ですか?」
いや、何も落とした覚えはないんだけど・・・まあ夢の中だし聞き流そう。
すると女神は続けた。
「選んだ女性をあなたの恋人にすることができます」
ほう・・・面白い。
「右の女性は顔は可愛いが、挙動が明らかにおかしい女性」
はあ。
その右の女性を見ると確かに、かなり可愛い。大きい瞳で目鼻立ちのはっきりした、ツインテールの女子高生だったが、急に直立不動で「もっちゃラヘッピャラモケモケサーー!!」と叫びだした。
おお、確かに挙動がおかしい(汗)
女神は続けた。
「左の女性は、顔は微妙だが、清楚で礼儀もしっかりした女性」
左の女性を見ると、確かに礼儀正しそうな女子高生で、こちらに向かってお辞儀をしていた。
ただ顔は確かに微妙だった。太ってはいなかったが、メガネをかけており、どこかのテレビで見た女性お笑い芸人に似ていた。
「さあ、どちらの女性にしますか?」
どうしよう。
気になるのはなぜ両方とも女子高生なのか。
別に自分は女子高生フェチではないのだが。
でもまあ特に悪い気はしない。
しばし熟考する。
うーん。
すると一つ名案が浮かぶ。
「女神様、あなたを恋人にすることはできますか?」
「ダメです」かぶせ気味に女神はそう返した。
ダメかー。どうしよう。普通なら断然右だ。あんな可愛い顔をした子は現実でなかなか拝めない。だが・・・
「エイドリヤーーーンエイドリヤーーーン!」
その子はまだ意味不明なことを叫んでいる。
そこで女神は話し始めた。
「なかなか決められないようですね。でしたらここで手助けにテレフォンを使うことができます。あなたの知人に電話して助言を請うことができます」
まるでどこかのクイズ番組だ。
ポケットには自分のスマホが入っていた。試しに誰かにかけてみるか。
友人のTにかけることにした。
Prrr... Prrrr...
Tは応答に答えた。
「おう俺だ。今シャワー浴びてるところだが、どうした?」
一体どうやってシャワー浴びながら電話しているんだろう。まあ夢の中だからこれもスルーしておこう。
事情をTに説明した。
「なるほど。なら一つ聞くが、胸はどちらの方が大きい?」
なるほど、Tはおっぱい星人か。俺は答えた。
「そうだな。遠目から見て、右の子のほうだな」
「なら右だな。じゃあな」
ツー、ツー。
そう言って、Tは電話を一方的に切った。
再度右の子を見てみた。
「ライスシャワー!大外からライスシャワー!」と言いながら腰を振っている。
いいのかそれで。左の子を見ると、健気に待ち続けている様子がわかる。
もうちょっとだけ顔が良ければ左なのになもう!
女神は言った。
「まだ決まらないようですね。では次はオーディエンスに意見を聞くことができます」
へ?
急にピカッと照明が照らされた。すると周りには、数百人の観客が現れた。
俺は360度、観客に囲まれている形になった。
まさにあのクイズ番組じゃねーかと思ったが、これはやはり夢なので、深く考えるのはやめた。
「じゃあお願いします」と言った。
女神は「ではオーディエンスの皆様、ボタンをお願いします」と言った。
目の前に大型ビジョンが現れ、下部には右、左とある。そこから棒グラフがどんどん上がっていく。
結果は?
右:154人
左:246人
と表示された。
ほう。これは少し意外だ。もう少し右が多くなると思ったが。
ふと観客を見回してみた。女性の顔が多く目につく。なるほどなー。
女神は「時間です。決めてもらう時間がやってきました」と言った。
何!まだ悩んでいるのに。
んーーーーー。どうする。
「あと10秒で決めてください」と言われた。
ああああ!!!!困ったなあ!!!!でも夢だし!夢だからいいや!
「右で!」
しばらくの沈黙が流れる。
女神「ファイナルアンサー?」
俺「ファイナルアンサー!」
女神はニコッと俺に笑いかけた。
気がつくと、視界には天井があった。あ、俺の部屋だ。夢から覚めたんだ。我ながらくだらぬ夢を見てしまった。
そう思い、時計を見た午前10時。今日は日曜だからゆっくりできるな。
もう少しゴロゴロしてようか、とゴロンと布団の上を転がってみると。
目の前には、さっきの夢の中の右の女子高生がいた。
「ライトニングプラズマ!ライトニングプラズマ!」と叫んでいる。
うわああああああ!!!!!!?????
すると、また視界には自分の部屋の天井が映り、自分は布団から飛び起きていた。
さっきのも夢か・・・・ああびっくりした・・・
すると「起きてるのー!?」という声が一階からしてきた。
体が一瞬ビクッと硬直したが、それは聞き慣れた自分の母親の声だった。
はあ、どうやら完全に夢から覚めたらしい。
それにしても生なましい夢だった。
「何?」と階下にいる母親に答える。
「あなたにお客さんよ〜!こんな可愛い女友達がいたのね!びっくりしちゃった。なんか独り言が激しい子みたいだけど。今階段上がっていったからね!」
終
夢の中で恋人を選ぶことになった俺 黒煙 @maruyasu1984
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