思い出を繋ぐ公園

狂華

小さな私の思い出を

後悔したことって、ありますか?もし、過去を変えられるなら。そんな思いあるでしょう。それが叶う街、夢見たいな素敵な街があるんです。私も、そのおかげで今があるんです。私の話を聞いてみませんか?

あれは確か、二年前の夏の話です。私は中三でした。たまには息抜きもいいかなって、祖母の家に遊びに行ったんです。

あの時は、私も受験戦争をくぐり抜けていたので、ストレスも相当溜まっていて一緒に祖母の家に来ていた妹に八つ当たりしてしまったんです。どちらかと言うと私は大人しいんですけど、祖母も驚くくらいの大喧嘩で。妹は泣きながら、家を出て行っちゃったんです。まだ、小一で小さいのに、八つ当たりで泣かせてしまうとは、本当に恥ずかしいんですが、私も疲れていたんでしょうね。大人気もなく、知らんぷりしちゃってたんです。追いかけもせずに。大丈夫だろうと思い込んで。

でも、妹は夜になっても帰ってこないんです。流石に祖母が怒って、私に妹を探させました。祖母の家がある街は、田舎というよりは都会の方ですが、そんなビルが沢山あるような街じゃなくて、台東区たいとうくの下町だったんです。だから、そう遠くへは行ってないはずなんですけど、見つからなくて。私も本当に泣きそうでした。

そんな時、少し向こうの方で、沢山の赤い光が見えたんですよね。気のせいか、いつもより騒がしくて。なんか急に不安になったんです、私。胸が締め付けられて。だからか、何も考えずに、そこへ向かったんです。そしたら。救急車に運ばれる妹がいて。見えている景色が真っ白になった感じがしました。よく、ドラマとかで見る光景が目の前にあるんです。本当に何も考えられないんだなって。そうしてるうちに、祖母がきて。私がぼぅっとしてるうちに、通り過ぎて行ったんですよね。

私が正気に戻ったのは、すべて片付いて、何も無くなった頃です。妹は事故にあったんです。重症で、むしろ息があるだけでも奇跡ってくらい弱ってて。私は、そう聞いてその場を走り去っていました。気付いたら、昔よく妹と遊んでいた公園にいて。その公園は、柳北りゅうほく公園って言って、小さなプリン型の山があるんです。そこで、三角座りして、遠くを眺めてたんです。やっぱり行動が似ていて姉妹らしいななんて、どうでもいいこと考えてたりして。理解が遅れていて、涙も出なくて。なんで、八つ当たりしたんだろうって。ごめんねって。そのうち、また会いたい、って後悔に溺れ始めて。そしたら、私の周りに小さいけど綺麗な光が沢山浮かんできたんです。なんだろうって触れてみると、誰かの記憶が私に流れ込んできたんです。それは、私と妹が一緒にこの公園で遊んでるものでした。他にも触れてみると、それも今まで遊んできた妹との記憶で。もう、赤ん坊のように泣きじゃくりました。拭いても拭いても涙が溢れてきて、光と一緒に私に吸い込まれていくんです。ぽっかり穴の空いた心がどんどん埋まっていくように。そしたらね、奇跡が起こったんです。光が一つに固まって、小さな光の可愛らしい日本人形になって。もう、そりゃあ驚きましたよ。手のひらにちょこんと座って、

「お前は何を変えたいの?」

ってずっと問うてくるんです。私が驚いて、固まっている間も、何回も何回も問うてくるんです。だからね。私はつい、

「妹ともう一度でいいからやり直したい」

って叫んだんです。自分の全てを吐き出すかのように。そしたら、その光の人形さん。「そうか。」って言って消えちゃったんです。私は、涙も枯れちゃって驚いてて。

しばらくしてから、もうどうしようもないから、祖母の家に帰ったんです。そしたらね、妹が「お姉ちゃん遅い!」ってほおを膨らまして怒ってるんです。その顔見たら、無我夢中で妹に抱きつき、泣きました。枯れた涙が溢れてきて。祖母もどうしたの?って出てきて。ずっと泣いてました。妹がいるっていいなぁって心から思って。

その事件の後、祖母に聞いてみたんです。妹の事と、あの日の公園でのこと。そしたら、妹には何もなかったそうなんです。私がいきなり出て行って帰ってきたら泣いてたんだって。驚きますよね。でも、そのあとの話を聞いて心がストンッって落ち着きました。あの公園、柳北公園には昔から言い伝えがあって、思い出を繋ぐんですって。ああ、なるほどって。あの光は全部思い出なんだって。あの公園が見てきた小さな思い出の光なんだってわかりました。私と妹を繋いだんです。

少し後にその公園でお祭りがありました。毎年、その公園でやってる小さなお祭りですが、昔、妹と行ったことがあって。もちろん、妹と浴衣の着合いっこして、遊びましたね。その時にまた聞こえたんです。あの声が問うてきたんです。

「もう、後悔はないかい?」

って。だから、私はこう答えんたんです。

「ないよ。ありがとう」

不思議な思い出ですよね。もしかしたら、私が見たただの夢なのかもしれません。だけど、もしあなたが後悔をしてるなら、訪ねてみるのもいいんじゃないですかね?

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思い出を繋ぐ公園 狂華 @akashikyoka

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