君たちの中に男の子がいます。先生怒らないからいってごらん
「ところでダイスケさん。気になっていたんですが、この方は?」「ダイスケどの。この者らは?」
ニケアとフェスの台詞が同時に発せられた。
「えっと、このエルフっ娘はニケア。髪が紅いのはアステマ」
「ニケ・アムステルダムです」ぺこりと頭をさげるニケア。
「おまえなどに名乗る名は無い!」ぷいっとそっぽを向くアステマ。いや、そこは名乗れよ。
「アステマのことは放っておいてくれ。いま機嫌がわるいみたいだから」
「そうか。ならば忘れよう。これはご丁寧に、ニケどのは礼儀正しいエルフじゃな。わらわの名は――」
「あなたは『黒神フェス』さんです!!」
オレはズサーとフェスとニケアの間に割り込んで、フェスの台詞をかき消した。ここで正体がバレるといやな展開しかおもいつかない。バトルとかバトルとかバトルとか。オレ達を閉じ込めていた魔力ドームが解けたいま、フェスと争う意味は無い。
……って、あれ? 彼女が生きているのにドームが解けたって……どういうことだろう? フェスは自分のことを『ドラゴンじゃない』っていってたけど……。も、もしかして、ドームの解除と闘技場の
!? まさか。そんなことないよな……。
でも、これって、やっちまった系の話じゃなかろうか。『祭り』参加者はオレをふくめて全員、闘技場の黒ドラゴン=フェスを倒さなくちゃと思っていたけど、そもそもノーカンだったとか……。
……うっわあ。
この仮説は怖いので、オレの胸にしまっておこう。永遠に蓋しとこ。
「む。わらわはそんな名ではないぞ、ダイスケどの。お主さっきからなんなのじゃ?」
「その話はあとでな。えっと、ニケアはオレの嫁なんだ」
「……はい」横ではにかむエルフ。その笑顔プライスレス。自慢の嫁。
「はは、まさか。ダイスケ殿も冗談が上手い。ニケどのは、まだ子どもではないか」笑顔でフェス。
嫌みとか、煽るいったような意味合いのないマジコメ。……これって、余計くるやつだ。
「子ども……」ピクと、こめかみをひくつかせるニケア。
「プッ――」吹き出すアステマ。おまえ、そのリアクション余計!
「それが証拠に胸なんて絶無。むしろ窪んでおるのでは? む、もしや
「窪んでる……男の子……」さらに、こめかみをピクピクさせているニケア。耳もピンと張ってきた。表情は笑顔だけど、ぜんぜん目はわらってない件。様子から悪意がないのはわかるけど、フェス、それいじょうはやめて!
「そうか! そうだったんだねニケ。すべての謎は解けた!」
「解けてねぇよ! っうか、アステマ! なんの謎だよ!」
「魅力的なあたしより、ニケを選んだ謎だよ! ダイスケは『男の子』がすきだったんだね! じゃあ、しかたないね!」
「おまえ自己評価高すぎ! あと、男の子すきちゃうわ!!」
「そうです! ニケは男の子じゃないです!」
「わかった、ニケどの。そこまでいうなら、わらわが真偽をたしかめよう」そういってフェスは、すすすっとニケアの背後に回り込む。そこから両手で――わさっとニケアの胸を握ると、谷間をつくりだすように寄せ上げた。もちろん服の布地を押し上げるような、内側からのボリューム感は皆無。できるのは布地のシワのみ。
だまって首をよこにふるフェス。やはりない。という意味だろう。そりゃそうだ。ニケアに胸がないことはオレがいちばん解っている。エルフだから
「フェス! ちがう、そっちじゃない! 下だ! あたしが押さえたげる!」そういってアステマがニケアを羽交い締めにする。
「!? え……なにを」
「む、そうじゃな。失礼する」
アステマと入れ替わったフェスは、こんどはニケアの前に廻り、その場で屈んだ。フェスはためらい無しに、みじかい丈の草色スカートの裾から太腿に添わせるように手をつっこむ。そのまま、ニケアのだいじな部分を存分にまさぐっている。スカート生地が、むにむにと盛り上がっているのが見える……。
「あ、……ふッ……」頬を染め、吐息を漏らすニケア。
うおいフェス! さわり方いやらしくないですか? オレの嫁に盛大なハラスメントじゃないですか? ……だけど、美少女同士なんで許す! 全力で許されるんです! なんだろう? 胸がドキドキする。オレは目がはなせない。こんな機会めったにないよね! なんか興奮してきた。
「ど、どう? あった?」
「む、ないようじゃ。入念にしらべたが、どこにもない……」
「ダイスケさん! なんか辱められました!」涙目になったニケアがオレの胸に飛び込んでくる。よしよしと頭と耳をなでる。
「あたりまえだろ! フェス! アステマ! ニケアに
「ニケどの、うたがってすまなかった。このとおりだ、許されよ」
きっちり謝罪するフェス。うん、いい子。
「男の子とうたがわれるような胸をしている、あんたも悪いよニケ」
ひでぇ、さすがはアステマ。わるい子。
「ま、あたしは男の子だけどさ……」
「「「!?」」」オレ達3人の視線がアステマに集まる。
「……って、ええ!? アステマ。いまなんと?」
「あたしは男の子だよ。ダイスケとおなじだね。えへへ」
「!? な、ななな!? なにをいってるんだアステマ!」
「たしかめる? ちょっと……はずかしいな」アステマはオレの右手をとり、じぶんの股間部分にぐいっと押しつけた。
オレはとつぜんのことに混乱しながらも、おそるおそると握ると…………。
そこには、無いはずの…………。
けっして、あってはならない…………。
――そんな、男の子のふくらみが。質感が。ぬくもりが……。
たしかに、あった……。
……あっちまっていた。
「……ね? これで、しんじてくれた?」恥じらいの表情をみせ、人差し指を甘噛みするアステマ。いつもどおり可愛いじゃないか……でも。こいつは……。
「マジか………………………………」
衝撃の事実に、オレの頭は真っ白になる。アステマとのいろんな思い出が、走馬灯のように頭をよぎる。
って、おい!
アステマ! うおい!!
あんだけキスしまくってイチャイチャして、機をみてはいたずらをしていたアステマが……。悪魔っ娘だとおもっていたアステマが……男の子だった。……男の子でした。オレは膝からその場に崩れ落ち、両腕を天につき出し大絶叫した。
「あっかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!」
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