アステマとあそぼう
「!? まさか、オレの
「なにが妹だ! どこに妹の要素があるんだ! そんなんで、だまされないから! あたしをばかにしてんだろ! ぜったいばかにしてるでしょ! しょうじきにいって!」
「バカになんかしてないぞ」してる。
「……ほんとうに? ばかにしてない?」かなりしてる。
「ほんとうだ。だってオレ達、トモダチだろ?」オレは右手でアステマの肩をやさしく抱きよせて、その耳元に息を吹きかけるようにささやく。左手でひょろひょろさせている
「!? え、あ……どうしたのきゅうに……ちょっと、くすぐったいな」身をよじらせるアステマ。
「おまえだけには本当のことを話すよ。フェスの正体さ、実は……」
「……うん」
「
「そうかー
「だろ? 裸の女の子と抱きついていてもしょうがないよなーあはは」
「ニケーーーーーー!! ダイスケが浮気してるよーーーーー!!」
するりとオレの元から抜け出し、ダッシュしながらさけぶアステマ。
「!? 瞬時にばれた。これは予想外だ! ちょ、ちょいまち!!」
「ばーーーーーか! ダイスケのばーーーーーーか!!!!」全力であっかんべーをしてくるアステマ。
「アステマ待って! アステマ、カムバーーーーック!!」
そんなアステマを全力で追うオレ。
「なにをやっとるんじゃ、お主ら……」
背後からポツリと、フェスのそんなつぶやきが聞こえた気がする。
😈
闘技場を何周かしたところで、逃げ回るアステマを掴まえた。そのとき青白い天井――オレ達を、バレンヌシアの街を包み込んでいた魔力ドームが溶けるように消えた。
「あ、ダイスケ。みて! 空だ!」
「本当だ! ニケやったか!」
「やったみたい!」
オレとアステマは自然と抱き合う。そして、ごくみじかく唇を重ね、互いに見つめあい空を見上げた。眩しさに、いっしゅん目がくらんだ。陽の光だ。ひさびさに直接みる青空。
「こんなにも空って青かったか……」
「青かったみたいだね」
ほんらいは何気ない光景なのだか、数ヶ月失ってみて再会してみると、なんともいえない感慨が湧き起こってくる。
それはアステマも同様なようで、あたたかな笑顔をうかべて空を眺めている。真紅の髪が、瞳が、陽の光をかえして輝いている。オレは不覚にもその横顔にみとれてしまった。
「やっと『ドラゴン追い祭り』終わったね。これからどうする?」
「そうだな、これから考えないとな」
「あたしはとりあえず、美味しいものが食べたいかな。あとゆっくり寝たい」
「同感だ……」
それにしても、雲ひとつ無い青空だ……。こんなにも空って開放感を与えてくれるものなんだな。元の世界でも眺めていたけど、ここまでの開放感は感じられなかった気がする。こんなことを感じられるようになったのは、傍らにいる悪魔の少女、アステマの存在が大きいのかもしれない……。この青空と同じように、アステマもオレにとって大切な存在となっているのではないだろうか? 共に過ごしてきた仲間として、いや……オレのなかで、それ以上の存在となったアステマ。いろいろと問題はあったが、やっとわかり合えた気がする。
そんな感慨にふけっていると、手をふりながら駆けてくる小柄な人影がみえた。
「ダイスケさーーーん!」
すこしでも早く、喜びを分かち合いたいという想いが伝わってくるニケアの全力疾走。そのままの勢いでオレに飛びついてきた。勢い余ってクルクルと回る。
「ニケアおつかれさま! はやかったね!」
「ちょうど他の生き残りの人達が、最後のドラゴンと戦っていたんです。ニケも手伝いました」
「そうか、ありがとう。ようやくすべてが……『祭り』は、終わった……」
「はい。『祭り』はおわりました」
「あ、ニケ。おつかれー」
「アステマさんも、おつかれまさでした」
「あのね。さっきダイスケがあたしと浮気してたよ」笑顔でアステマ。
前言撤回! ちっとも、わかりあえてねぇえええ!! 言動がちっとも読めない!!
「浮……気?」――ギンと。瞳を碧くさせるエルフ。
「そうだなアステマ! あの浮き雲のように、みんなでどこまでもいきたいよな!! あはははははは!!」オレは天をビシッと指さして、不必要な大声でアステマの台詞に被せる。
「あ、雲。浮き雲ですか……。……そ、そうですね……。ちょっとニケにはみえませんが……雲ひとつないようですが……」
「よくみてみてニケア。ホラあそこ、あそこ!」テキトーなところを指さすオレ。素直なエルフは、目をほそめていっしょうけんめい雲を探す。
「ちがうよニケ。ダイスケは浮――いたっ!」オレはアステマの肩に指を食い込ませるように置いて、ガシッと抱き寄せた。そのまま、すすすっと、ニケアと距離をとって、ごく小声で続ける。
「……アステマさんよお。いったいどういうつもりだ?」
「え? このほうが、たのしいかなーとおもって。キャハハ」
たのしいて……おまえ鬼か? いや悪魔か。
……そうか、おまえがそのつもりだったら、オレにも考えがあるからな。
「……オレをニケアに売れば、オレもおまえを売る」
「は? あたしを脅すつもり?」
「さっきキスしたよな。オレら。なんならニケアの目の前で、いまからディープなのしてやろうか? その唇に……」
「!? ま、まさか?」驚愕の表情をうかべるアステマ。
「アステマさ~ん。いま、あなた魔力ないんでしょう?
「ぐっ……なんていう邪悪な笑顔。ダイスケは生まれついての魔王だ。目的の為に己の身すらもやすやすと賭けてみせる。その狡猾さ……」サッと、表情を青ざめさせ、ガクブルするアステマ。
「くふふ、3度死んだオレには、もはや死の恐怖など、とうにない」
「……ううっ、あたしの負けだ。完敗だ」
「いいか。オレだけが不幸にはならない。そのときは、お前もいっしょだアステマ。道連れだからな。わかったか? わかったならニケアに説明してこい!」オレはドンと背中を押す。よろよろとニケアの前にたおれこむアステマ。
「アステマさん? なにかあったんですか? 顔色が悪いですよ……」
「(ビクッ)あ……えっと……なにもない。なにもないよ!」ブンブンとカオを横に振るアステマ。よし。賢い子だ。
「でも、さっき……気のせいでしょうか? 浮……気? とか、そんなことさけんでいませんでした?」
なんという地獄ならぬ。エルフ耳。長いのはダテじゃないようだ。じっさい、よく聞こえそうだよなエルフ耳。
「ち、ちがう! あたしはそんなこといってない! ……そ、そう! あの浮き雲のように、みんなでどこか遠くにいきたいね! そういってたの!」ビシッと空を指さすアステマ。
「……あの? さっきからなんですか? 雲? ニケにはみえませんが」空を仰ぎ見るエルフ。
「……雲はあるよ」
「え……雲ひとつないですけど?」
「あるよ」
「?」
「あたしの心の中に……」
仄暗い表情でうつむく悪魔っ娘。うまいこという。それでいい。これからも仲良くしようぜ、ア・ス・テ・マ。
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