第9話 未知の値
「ふーちゃんは~もう今日はお休みね~~ 」
孔雀は朱羅と風花の頭を優しく撫でた。
「はい、先生。朱羅様・・・また今度、」
風花は優しく修羅に笑いかけると出口へと向かった。
「風花。部屋まで送る。」
「零ちゃん・・・ありがとう、」
零は風花の腰に手を回し寄り添いながら部屋をでようとした。
けれど、零は立ち止まって孔雀の方を向いた。
「・・・先生、朱羅様の異能は風花の異能を凌ぎます。一度マリアベル様に
零は朱羅を勢いよく睨みつけると、風花と共に部屋を後にした。
「・・・僕たちも、部屋に戻る。」
そう言うと左近は右近の手を強く引いた。
「あッ・・・朱羅様・・先生、また明日・・・。」
左近は孔雀と朱羅に手を振って部屋を後にした。
「じゃー、マリアベル、朱羅の異能値測ろっか♪ 」
”・・・朱羅、こちらへ来い・・・”
「う、うん・・・。」
朱羅はどきどきしながらマリアベルの前に立った。
するとマリアベルの球体が白い煙に覆われた。
白い煙が晴れると、髪も肌もとても白く、髪の長い女性が立っていた。
「・・・え、マリア・・ベルなの・・?」
「・・・そうだ、本来の・・・わたしの姿だ・・・。」
マリアベルは自分の髪をくるくると指で巻く仕草をした。
「力を蓄えるために・・普段は球体になっている・・・
異能値を測ったりするときなどに、本来の姿に戻るのだ・・・。」
マリアベルは朱羅に近づいた。
「朱羅・・・わたしの目を見ろ・・・」
朱羅は、マリアベルの蒼い瞳を見つめた。
すると、周りの音が聞こえなくなった。まるですべての音が遮断されたかのように。
マリアベルは朱羅の前に跪き、自分の額と朱羅に額を重ねた。
すると全身の血が沸騰し、血流がとてつもなく早く流れ鼓動が慌ただしく鳴り響く
かのような感覚に襲われた。
深い、深い海に投げ出され、ゆく当てもなく途方もなく流されていく。
そんな光景が朱羅の脳裏に浮かんだ。
(海に浮かんでるのは・・・誰・・・?)
朱羅は浮遊感のような感覚に襲われながら思った。
海に浮かぶのは白い髪の女だった。
彼女の顔は殴られたような紫色に腫れで顔はひどいことになっていた。
腹部からは、刺されたかのように服が鮮血に染まっていた。
そしてその血は青い海へと広がっていった。
”痛い・・・痛いッ・・・わたしは・・死ぬの・・・?”
海に浮かぶ女性の声が聞こえた。その声はとても悲しい声だった。
”生きたい・・・生きたい・・・ッかみ・・さま・・・ッ”
その女性は薄暗い空に手を伸ばした。
「・・・ら、・・・朱羅・・・ッ!」
ハッとすると、朱羅は孔雀に肩を掴まれ、揺さぶられていた。
「く・・じゃく・・・?」
修羅は思考が定まらず、孔雀を見つめた。
「もーお兄さんびっくりだよー。マリアベルが測定した途端、朱羅意識失っちゃうんだもん、」
「・・・朱羅、意識なかったの・・・?マリアベルは・・・?」
(それに・・・さっきの光景は何だったんだろう・・・)
朱羅は辺りを見渡した。 そこにはピンクの球体姿に戻っている
マリアベルがいた。
”・・・測定は・・・
「・・・
孔雀は眉をひそめた。
”異能値が・・・測れない・・・未知の値だ・・・”
「朱羅の異能・・・弱いってことなの・・・?」
”それは違う・・・強すぎるのだ・・・未知数だから測れないのだ・・・”
マリアベルは朱羅の周りをゆらゆらと回りながら話した。
”わたしは・・・異能値を測るだけで・・・星見の力はない・・・。けれども・・・
修羅・・・お前はこの先誰よりも強くなる・・・。”
「・・ッ!本当に・・ッ!?・・・朱羅・・・強く・・強くなれるの・・・ッ?」
朱羅はマリアベルを見つめた。
”あぁ・・・強く・・・なれるぞ・・・”
(強く・・・母上のために強くなるんだ・・・ッ!)
幼い朱羅にとって、強くなることで母に、カルロスに褒めてもらえる。
認めてもらえる。そう思った。
「朱羅・・・強くなる・・・ッ!誰よりも・・・ッ!」
朱羅は、強く誓った。
-未知の値-終
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