君がそこに

@ReiRei6396890

第1話 囚われた妃 

種族同士が万物の願いをかなえる「聖杯せいはい」を巡って聖杯戦争があった。

しかし、聖杯はある「刀」によって封印され聖杯戦争が終わりを告げた。






XXXX年。


戦いは再び始まろうとしていた。


天使や神々の住まう、天界で刃と刃が荒々しくぶつかる音が響いた。


ーキンッ!ー

阿修羅王あしゅらおうッ!」



自分自身の体を抱きしめ身を小さくしてその戦いを

見つめていた女が高く声を上げた。



紗羅さら・・・、逃げろッ・・!」


紗羅さらと呼ばれた者は涙から大粒の雫を流しながら首を横に振った。


「嫌です・・ッ私はあなたの・・阿修羅王の妻です・・ッ 」


「紗羅・・・」


阿修羅王と呼ばれた男は眉をひそめながら沙羅を見つめた。


その後ろに素早く潜む影がいた。


「・・・ッ!阿修羅王ッ!後ろですッ!」


再び高く声を上げた瞬間、紗羅の瞳の中は真っ赤になっていた。


阿修羅王の心臓にに刃が突き刺さり、そこからは血が止めどなく溢れでていた。


「はははッ! 修羅刀しゅらとうがなければ破壊神もたやすいのぅ、」


阿修羅王の体に刃を突き刺したのは天帝の座に君臨している

艶やかな女性、帝釈天たいしゃくてんだった。


阿修羅王の体を寄せ、勝ち誇った顔を浮かべ笑みをこぼした。

その瞳は狂気に満ちていた。


「ぐ・・・ッ がはぁ・・・ッ、たい・・しゃくてん・・ッ!」


阿修羅王は帝釈天を突き飛ばし、零れ落ちるように地面に倒れた。


紗羅は震える体を無理やり動かし、阿修羅王の元へ走った。

阿修羅王に近づき、手を握り阿修羅王の瞳を見つめた。


「王・・ッ王・・・ッ阿修羅王・・・ッ!」


「紗羅・・・にげ・・・ろ・・・」


阿修羅王は紗羅の頬に手を伸ばすが、それは届くことなく地面に落ちていった。


「---ッ! 阿修羅王ーーッ!」


紗羅は阿修羅王の体を抱き寄せ、強く抱きしめた。


「ははははッ、あはははッ!つまらんのぅ・・・、世の一もここまでか。 」


紗羅の様子を見つめる帝釈天は甲高く笑い、刃についた血を舐めた。


「帝釈天・・ッなぜ・・なぜ阿修羅王を殺したのですか・・ッ!」


紗羅は笑い転げる帝釈天を強く睨んだ。


「わらわはがほしい。しかしこやつはもう”王”ではない。修羅刀を持っていないのがその証拠だ。」


帝釈天は阿修羅王の手元を見つめ、言い放った。


「もう次の”王”がいる。だから阿修羅王は修羅刀を持っていなかった。持てなかった。つまり・・・。」


帝釈天は紗羅を見つめ笑みをこぼした。


「お前・・・身籠っているな・・次のを・・ッ!」


帝釈天は紗羅のおなかを見つめ指さした。


「・・・ッ!この子は・・・ッこの子だけはお願い・・ッ!」


紗羅は自分の体を強く抱きしめ、顔を横に振った。


「その女を捕らえろ。」


帝釈天が言い放つと闇から数名の男が現れ、沙羅を捕らえた。


「その子供はとして、わらわのものに。育てさせてやろう・・はははッ!」


帝釈天は天を仰ぎ、甲高い笑いを上げた。



「阿修羅王・・・朱羅しゅら・・・」


紗羅の瞳から涙が零れ、悲しく地面に落ちていった。




-囚われた妃- 終








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