第2話 六道凛音の章

(六)「お久しぶりです!ホラー小説愛好家の六道凛音と!」

(戸)「純文学愛好家の戸村純です!」

(六)「戸村さん!私達まだ出番あったんですね!てっきり自然消滅するものとばっかり思ってました」

(戸)「筆者は飽きたから自然消滅させるつもりだったらしいよ。でも次回作を書くにあたって、やたらと短編作品の投げっぱなしは不味いと思ったらしく、仕方なく続きを書いたらしいよ」

(六)「え〜。嘘〜。私達の存在って一体何・・・」

(戸)「というわけで、サクサクとやってチャッチャと終わらそう!六道さんのおはなしをお願いします」

(六)「ホントに非道い〜(泣)」


(六)「では私が最初に紹介するのは、言わずと知れたジャパニーズ・ホラーの殿堂、「リング」「らせん」「ループ」の三部作です。90年代に「リング」と「らせん」が映画化されて『貞子』のキャラクターが一気にメジャーになりましたよね。私は当時、家で夜中に一人で観ました。超有名な例のシーンの時は、あまりの怖さに映像止めたくてビデオのリモコンを探しました。でもなんかその時偶然リモコンが見つからなくてテレビの前で無様にパニックになってました。しかもそのビデオは友人がダビングしてくれたビデオだったという、何とも恐ろしい話ですよね」

(戸)「私も観ましたが、貞子がテレビから出てくるシーンですね」

(六)「はい。しかし原作には、そのシーンは無く、別の方法で人を殺しているのは、原作好きの方には有名かもしれませんね。映画の衝撃的なシーンと比べると、原作の怖さは少し劣るかもしれませんが、この小説の何が凄いって、最終作の「ループ」の巻末の解説にあるように、『文学と医学の融合作品であり、他の作家さんたちにとっての文学界における「ホラー」になり得る』ってところなんですね。純粋なホラー作品だった「リング」を「らせん」で科学的に分析し、「ループ」で想像を絶する壮大なスケールに発展させています。「らせん」で紹介される貞子の呪いのメカニズムも、なるほどと思わせるものです。見開きで遺伝子配列が掲載されてたりしますからね。ガチガチの文系の私は泡吹きそうになりましたよ、本当に」

(戸)「文系の人は医学系は苦手そうですもんね」

(六)「鈴木晃司先生は文学部卒だから、友人に医学部卒の方がいたんでしょうか。そんじょそこらの知識じゃ考えられない内容でしたよ。そういえば人気漫画「進撃の巨人」に出てくる立体機動装置も、作者の方が理系の友人の力を借りて出したアイデアだったみたいですよ。文系と理系のフージョンは商業的に成功しやすいコラボレーションなんですね」

(戸)「お互いに不得手な部分をお補いあってるのかもしれないね」

(六)「はい。そして最終作の「ループ」はホラーの欠片も無く、もはやアメリカを舞台とした壮大なSF小説と化しています」

(戸)「いきなり紹介した小説がホラーじゃないんですか?ホラー小説愛好家なのに」

(六)「うう。それ言われるとちょっと困るんですが、私としてはどうしても紹介したかったんですよ。それに角川「ホラー」文庫だし、いいかなと思って。私、この本に感動しすぎて、鈴木先生が執筆するにあたって参考にした文献を色々買っちゃいましたし。癌についての本とかアメリカン・インディアンについての本とか、あとアメリカにも行きたくなっちゃいました。凄い本ですよ、ホラーなのに科学のことも世界のこともわかっちゃう」

(戸)「本当ホラーっぽくないですねえ」

(六)「そうですね。言ってるうちに私もそんな感じがしてきました。でも、ホラー小説から派生した物語ですから。皆さんもあの頃を思い出してこの三部作を読んでみたらいかがですか?文学史に残る名作ですよ!ホント!」

(戸)「あの頃って・・・」

(六)「さて、続いては、現代ホラー小説界の大御所、貴志祐介先生の「黒い家」と「クリムゾンの宮殿」です」

(戸)「「黒い家」は映画化されてますよね。TSUTAYAで見たことあります」

(六)「はい。どちらの作品も幽霊等は出てこないのですが、読んでいると結末が非常に気になり、読む手が止まらなくなる作品です。「黒い家」は過去に貴志先生が勤めていた生命保険会社の経験をもとに作られたそうですよ。貴志先生の作品は現代人の心理を非常に共感できるように描かれていると思うので、活字が苦手な方も一気に読めてしまうと思いますよ。「クリムゾンの宮殿」なんかは「バトルロワイヤル」が好きな方なら絶対に好きになりますよ」

(戸)「いかにも売れそうな題材ですね」

(六)「はい。あと貴志先生の「天使の囀り」こちらもオススメですので、是非読んでみてください。あと私が触れておきたい本は加門七海先生の「祝山(いわいやま)」です」

(戸)「ホラーっぽくないタイトルですね」

(六)「はい。なんかおめでたそうな名前ですよね。なぜこのタイトルなのかは作中で明らかになるのですが、何を隠そう、この本の舞台は私の出身地である群馬県なんですね。ホラー作品って大体舞台が都会なのでこれは珍しいですね」

(戸)「原始人が出るんですか?」

(六)「グンマーじゃないですよ(苦笑)。この本は日本独特の伝統を背景にしたホラーになっているんですが、貞子を代表にした、黒い長い髪の白衣の女などは出てきません。ちょっとおかしな言い方ですが、ちゃんと形のある幽霊というものは出てこず、日本独特の、暗い山林の中にある古ぼけた鳥居の薄気味悪さって言えばなんとなく想像つきますかね?」

(戸)「あー、確かに日本独特だねー」

(六)「はい。これも新しい形のホラーだなと認識しているんですが、問題が起こる山のモデルが、おそらく過去にあの大事故があったあの山だと思われるんですよ」

(戸)「あー、なるほど」

(六)「リアルな出来事も背景にあるんですね。「祝山」。オススメですので是非読んでみてください。あと、テレビでも活躍されている岩井志麻子先生の「ぼっけえ、きょうてえ」、飴村 行先生の「粘膜人間」もホラー小説として超名作となっておりますので、併せてお読みください」

(戸)「いかがでしたでしょうか皆さん」

(六)「目指せ!1日1ホラー小説!」

(戸)「ご縁があればまたどこかでお会いしましょう!」

(六)「それではこの辺で」

(戸・六)「さようなら!!」


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ある純文学愛好家とホラー小説愛好家の対話 黒煙 @maruyasu1984

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