なごり

 魔王を倒した私は、やつの呪いに苦しめられていた町を訪れた。


「ありがとう。我々は君のおかげで魔王の呪いから救われた」


 そう声をかけられたが、道の向こうには奇妙な横歩きの男がいる。


「彼はまだ呪われて?」


「いや、あの人は呪いで蟹の姿にされていたのだ。そのなごりであんな風に歩いてしまう」


「なるほど。ではあなたも?」


「そうだ。私は呪いで人の姿にされていた。そのなごりでこんな風にしゃべることができる」


道は、そう言った。

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