第10話 スカート丈が短すぎます①
この日が来てしまった。
3月某日。卒業式の、2日前。
「それでは、これから服装検査を行います。――出席番号1番から順番に、生徒会室に来てください」
卒業式直前の、服装検査。この日が、来てしまいました。
都内の名門私立女子高校。昭和初期から変わらない制服。少し厳しい校則――スカートは膝下。靴下は白のみ。鞄は学校指定のもの。髪の毛のカラー・パーマは禁止、肩についたらしばる。化粧はダメ。携帯、スマホは休み時間であっても使用禁止。不純異性交遊の禁止。やや、前時代的だと批判するのは、生徒ばかりではなかったりもするのです。特に、スマホ等の規定については親御さんからの苦情が多いのが、現実といったところなのです。
仕方のないことだと思います。ルールは、時代とともに変わっていくものです。スマホは時として、緊急時の連絡手段になりますし、髪型や服装についても、学業に本質的に関係がない以上、過剰に縛るのは人権侵害である、という意見があるのも当然の話でしょう。
私は、校則に厳しい教師だ、という自覚があります。生徒から疎まれているのも、重々承知です。
「サイトーは、『伝統』にどっかり腰下ろしちゃってる系の時代遅れ教師だから」
私のことをそんな風に言っている生徒の言葉を盗み聞きしてしまったことがあります。生徒による陰口なんて、この年にもなれば慣れたものだ――と言えればいいのですが、この学校の生徒、というか、高校生女子の悪口は、かなりレベルか高かったりして、お恥ずかしいことに、年甲斐もなくイラッと来ることもあるのです。
それでも、私は口を酸っぱくして、身なりや言動に気を付けるよう、言い続けるのです。――残念なことに、人は人を、見た目で判断するから。そして自分の判断を、相手の見た目を利用して正当化するから。
学生時代――ちょうど、私がこの子たち位だった頃に、とある男に言われた言葉がありました。
「誘うような格好をしている方が悪いんだ」
今で言う、ストーカー。毎晩、学校帰りの私のあとをつけて来たその男を、当時の同級生と協力して捕まえたときの話だったかと。
この男が発した言葉は、間違っています。――女性がどんな格好をしていようが、危害を加えてはいけないなんて、当然のこと。
「そんな格好をしていたから」
「誘うような言動をしていたから」
絶対に間違っている、承知です。
それでも、思うのですよ。――こういう輩に、言い訳をさせてはいけない、と。
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