第7話 膝上10cm、こっそりアイライナーのぶりっ子論①


 可愛い女の子が好き。だから、私が可愛い女の子になるの、それだけ。



 私の通う高校は、そこそこ校則が厳しい。スカートは膝丈程度(程度、と言いながら膝上だと先生にチクリと叱られる)、メイク類は一切ダメ(色つきリップもアウト)、なんなら髪型だって肩についたら必ず縛らなきゃいけないという徹底っぷり。カラーはダメとかパーマはダメとかいうレベルじゃない。そこまでする必要ある?みんな文句を言いつつ校則を守る子は守る、破る子は徹底的に破る。私は、後者。


 スカートは膝上10cmくらいかな。これくらい短くしないと「JK感」が出ないと思うの。髪の毛だって下ろしたいときは下ろすし、アレンジしたいときはアレンジするし、そんなことくらい自分で決めさせてくれたっていいでしょ?


 ちょっと自分でもやり過ぎかなって思っているところはある。例えばこの目。ちゃっかり黒目を大きく見せるカラコンを入れてるし、極細のアイラインを仕込んでたりもする。下手すると友だちすら気づかないから、ほぼ無意味とも言える。


 若くいられる時間って、短い。そう考えると自分が「可愛く」居られるのって人生のほんの一瞬で、自他ともに認める「可愛い物好き」の私にはそんな時期を校則通りのむさい姿で過ごすなんて有り得ないといったところだ。


 私の妙な信念のせいで、ママは親の個人面談の度に先生に怒られる。本当に申し訳ないなと思うんだけれど、うちのママはその辺は寛大で、


「やることちゃんとやってたら、身なりは好きなようになさい」


 みたいな感じで割と許されている。申し訳ないので結構勉強は頑張っちゃったりして、こう見えて高校に入ってからは校内一位の成績を修めていたりする。私、スゴいっ。


 まあ、こうやって派手な見た目でいい成績をとったりしちゃうと周りからは自然と一目おかれちゃったりするわけ。なんだかみんな、私の機嫌を損ねないようにお愛想してきたりするんだけど、正直そういうの、いらない。悲しいよね、「あの子は怖いから怒らせないでおこう」みたいなのがずっと付きまとうんだよ。


 確かに私は少々空気が読めないところとか有るし、あんまりお世辞も言わないタイプだから完全にこちらに非がないとは言えないんだけど、少なくとも誰かをいじめたり、わざと傷つけたりしたことはないはずだ。それでもみんな、「沙羅ちゃんは怖い」っていうのが心のどこかにあるの。そういうの、普通に分かっちゃう。


 可愛いものが大好きな私は可愛い女の子が大好き。じゃあなんでクラス一地味な透子と仲良くしてるかって?答えは単純、透子はいい子だから。私を受け入れてくれるのはたぶん、透子しかいない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る