第162話 クレイジーモーターサイクル6

 ――――トラックを4周目もとうとう通り過ぎた。最後の5周目――――ここで先にゴールすれば勝利。




 ――4周目に続いて、地面が浮き上がるギミックが作動している。しかし――――





「――ジャンプ台、か!?」





 ――今度はただ局所的に浮き上がるのではなく、コースのあちこちに長短の坂道が形成され、スピードを乗せたジャンプが可能となってきた。





 当然、ただジャンプ出来るだけでは終わらず――――





「――落とし穴っスか!!」





 前方の地面が一気に沈み込み、あちこちに落とし穴が形成された。





 ジャンプ台を選び、適切なスピードを乗せて走らなければ、穴の中へ真っ逆さま。これも命の保証は無い。





 1つ目のジャンプ台と落とし穴――――





「――くっ……とにかくスピードを上げて飛ばねえと――」



「――ギア、1段階上げるっス――」



「…………」





 ――それぞれがジャンプ台を瞬時に判断して選び、飛ぶ――――






「――むっ! よいしょ!! っとおぉ――――」





 『黒風』で宙高く、弧を描いて飛びあがり、着地の衝撃を受けるイロハ――――タイヤもホイールも強靭なものにしておいて正解だった。





「――や、やべえ……今のでホイールがずれて来やがった…………!!」




「――――っ」





 他の2者…………レーシングカーと強化機械装甲パワードスーツも落とし穴を飛び越えたようだが、レーシングカーは痛恨の故障発生――前輪のホイールが音を上げて来たようだ。強化機械装甲は、自分だけ2足歩行による走り幅跳びだが、着地の衝撃にも耐え、問題なく再び走り出している。





 ――いよいよクライマックスが近い第5周目。ただでさえ熱狂の中で高鳴る歓声がさらにどんどんとボルテージを上げていく。





 ――すぐに次のジャンプ台と落とし穴が現れた――――






「――ち、畜生……持ち堪えてくれ、俺の愛馬よッ!!」




「――痛いっスか、『黒風』……でも、もうひと踏ん張りで勝てるっス!!」




「…………」





 ――強化機械装甲以外の2者は、己が跨る愛馬に忍び難きを耐えるよう激励する……次のジャンプだ――――!!






「――よっしゃ!! これもクリアっス!!」



「――――っ」





 イロハと強化機械装甲は今度も飛び越えたが、やはり――――





「――ひ、飛距離が足りな――――うわあああああッッ!!」





 ――レーシングカー(変形後)は勢いよくジャンプしたものの、やはりホイールの故障か、あるいは操縦者の心胆が臆したか。僅かに飛距離が足りず、落とし穴の崖の部分近くで落ちて行く――――





「――うおおッ!! とっ……とおお――――」





 ――思わず奇跡を信じ、車体から飛び出し、落とし穴の淵に掴まった――――九死に一生を得た。奇跡的に操縦者は淵に掴まって持ち堪え、何とか這い上がって命を繋いだ――――すぐ下で、レーシングカーが爆発四散する恐ろしい音が鳴り響いた。





 ――――とうとう、勝負はイロハと強化機械装甲の一騎打ちとなった。円形闘技場の熱狂度は最高潮に達している。歓声に混じって、エリーたちは必死に応援の声を送っている。





「頑張ってーッ!! イロハーッ!!」


「何としてもそいつを抜き去るんだ!!」


「こっからが正念場だぜ、根性見せろよ!!」


「負けないで!!」






「――イロハ。もはや『黒風』のボディも限界ギリギリでしょう。ゴールするまでもつかは50%程度。しかし、それに懸けるしかなさそうです――」





「――――解ってるッスよおッ!!」





 ――眼前に、最後のジャンプ台が現れた――――





 ――現在順位、1位強化機械装甲。2位イロハ――――

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