第161話 クレイジーモーターサイクル5
――――レースも気が付けば4周目に突入していた。あと2周でゴール。
エリーの活躍によってレーシングカーの狙撃手を退場させることに成功したが、同時にエリーのパワーに耐え切れなかったロケッタブルエリーが砕け散り、失格となってしまった。これで走っているのは4者。
「――エリーっ!! この馬鹿野郎ーっ!! もったいねえことをーっ!!」
――最下位ながらもエリーを追い越し、ガイは遠巻きながら叱る。
「――うう~っ……もうちょいでゴールだったのにぃ~…………しゃあない。イロハちゃーん!! それにガイ、グロウー!! 頑張ってーっ!!」
仕方なく、エリーもトラックから去り、円形闘技場の端の方からガイとグロウ、そしてイロハを応援するのみ。
「――皆さん。4周目以降はどうやら走行ルート上に
――テイテツがいつもの冷静なトーンで、しかし重要な情報を仲間たち全員にアナウンスする。
「了解っス――――うわっと!!」
――イロハが頭に取り付けたヘッドフォンマイクによる通信で意識をほんの少しでも逸らしていると、それを見て取ってすかさずレーシングカーの操縦者から銃撃。慌てて回避する……一切の油断は出来ず、余裕も無い。
しばらく、4者が4周目のコースを走り続けていると――――
「地面が…………浮き上がる――――!!」
――突然、前方の走行コース上の地面が、ところどころ無数に浮き上がり始めた――――突発的な障害物の発生だ。
「ちいっ!」
「むううっ!」
――隙を見ては持っている大型拳銃で攻撃してくるレーシングカーの操縦者だが、さすがにこれには操縦に集中せざるをえない。すぐ判断し大型拳銃を脇に仕舞い、減速して慎重に走る。
イロハも同様だ。巧みに素早くハンドルを切ってエンジンも調節し、浮き上がった地面を躱して走る。
一方、ガイとグロウは――――
「――くっ……こりゃあ……ガンバじゃあやりにくいぜ――――!!」
――ガンバも改造したとはいえ、それは主に装甲を固め頑丈にする為。2階席を取り払ったりと重量を落とす工夫もしているが、元々大きな砂漠や沼地などの足元が悪い処を突破する軍用車両。小回りの利き方では圧倒的に他の3者に劣っていた。
加えて、地面が浮き上がる障害物のギミックは第1位を走る走者に反応して浮き上がってくる。つまり最下位であるガンバが通る頃には、地面が浮き上がっている箇所が大量にあり、それだけで普通に走って突破するのは困難であった――
「――ぐあっ……! ――くっそが……!」
――とうとう、ガンバは障害物に衝突し、止まってしまった。衝撃でガイは額をハンドルにぶつけ、流血する――
「――が、ガイ!! 大丈夫!? 今、治すから――」
「――今はほっとけ! ぐずぐずしてると周回遅れで失格に――――」
「――駄目です、ガイ。ガンバは外部装甲は硬いですが、それだけの急ハンドル急ブレーキを繰り返す小回りを利かせるだけの内圧に耐えられなかった。既に前面にあるエンジンは煙を上げています。エリーとセリーナが確認しました。それ以上走行すると爆発する危険が非常に高い。ガンバは今後も必要な旅の足です――英断を。」
――このまま走り続けると、内圧に耐えられなくなり、最悪の場合ガンバが爆発四散する。加えて今の衝突でエンジンが死にかけている。
「――ガイ!! 無理しちゃ駄目!!」
「――悔しいのは解るが…………イロハに託すんだ……!!」
通信越しにエリーとセリーナも、ガイにリタイアという英断を呼びかける。
――ガイもまた、最後までイロハのサポートが出来ない苛立ちと悔しさのあまり、拳をハンドルに打ち付ける。
「――畜生がッ…………!!」
「――ガイ。治さないと頭からの血が――」
「わかってる!! これぐらい、自分の
――とうとう、エリー一行の中でリタイアせずに走り続けられるのはイロハだけとなってしまった。その通信も当然イロハは聴いていた。己の中にさらなるプレッシャーがかかるが――――
「――やってやるっスよ!! 何としても、ウチが勝って見せるっス――――!!」
――イロハは己の中の重圧を跳ね飛ばす為に、高らかに叫んだ。前方を走るのはレーシングカー(変形後)と強化機械装甲のみ。
――現在順位、1位強化機械装甲。2位レーシングカー(変形後)。3位イロハ――――
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