第159話 クレイジーモーターサイクル3
――――戦闘機2機がリタイアし、イロハが一気に1位に躍り出たものの、援護しようとしたセリーナが黒い
エリーが遠くの壁に激突したセリーナをその視力で見遣ると、どうやら何とか受け身を取ったらしく軽傷で済んでいる。
だが、空中走行盤は明後日の方向に落ち、乗り物から落ちた時点で脱落という判定。先に脱落した戦闘機2機と同様悔しみが残るが、すぐにセリーナは駆け足で安全な地点まで行き、通信ユニットからテイテツ同様情報によるサポートに回った。
「――――ふん。小娘め。俺たちの前に出るのはいいが…………覚悟はいいのか――――?」
――『黒風』を駆るイロハのすぐ背後にレーシングカー。
後部席の者はスナイパーライフルを持って先ほどは狙撃して来た。では前に位置取れば安全――――などということはもちろんない。
後部席からの狙撃はしにくいが、今度は前部席の者がコックピットを操作し、レーシングカーの前面を展開する。
――前面には、先端が槍のように鋭く尖ったアンカーが数本。バルカン砲が2基。さらに小型のミサイルも装備していた。後部席の狙撃手ほどの命中精度を誇るかは定かではないが、このままではすぐ前に走っても後ろに走っても鴨射ち。いい的になってしまう。
「――このまま避け続けようにも無理があるっス!! 援護を頼むッス!!」
――イロハは再び仲間に援護を要請した。
「――――よっしゃ!! おぉおおおおりゃああああああああーっ!!」
――イロハの呼ぶ声に応じてエリーが動いた。噴射機構を搭載したブーツをフルに稼働し、それ以上にエリー自身の強力な脚で以て猛烈に追い上げて来た――――すぐにレーシングカーの後ろまで走ってくる。
「――なっ……あいつ、化け物か……!? それともあのブーツの仕掛けか――――だが同じことだ!! 喰らえぃ!!」
レーシングカーの後部席の狙撃手は一瞬怯んだが、すぐに気を取り直し……スナイパーライフルで遮二無二エリーに照準を合わせる。的の大きい胴体を狙い、撃つ――――
「――ふんっ!! りゃっ!! とおっ!!」
――しかし、元々低い
「――ぐっ……こいつ…………なら、とっておきの奴をお見舞いしてやる――――!!」
――スナイパーライフルでは命中しない。命中したとしても恐らく目の前の超人にはライフル弾が効くかも怪しい。
そう判断した狙撃手は窮しながらも、素早くスナイパーライフルを仕舞い、違う銃器を取り出した――――
「――これならどうだ!! くたばれ――――ッ!!」
狙撃手が取り出した銃器は、グレネードランチャー。ランチャーの弾が扇状に幅広く広がる軌跡を見せたのち――――一気に爆発した。
「――うわっ!? くううッ…………ゴホッ、ゴホッ――――」
――エリーは、相手が強力な火器を撃って来たと察し、素早く練気の開放度を一気に高めた。低い開放度のままなら重傷だったかもしれないが――――これも間一髪。練気の圧で身体を覆って、両腕を交差してガードし切った――――多少服が焼け焦げた程度で済んだようだ。
「――――嘘ッ…………だろ――――!?」
狙撃手は、さすがにグレネードランチャーすら効かない出鱈目な耐久力を持つエリーを見て呆然と口を開けて固まった。多少練気などが使える者がこの大会に挑戦していたとしても、無理からぬ反応だろう。観客席からもひと際大きな驚嘆の声と叫びが上がる。
――この時点でおよそトラックを2周半。まだ先は長そうに思えるが、脱落者が続出し、猛スピードで駆ける姿は、挑戦者たちはともかく、傍で見ている者たちには凄まじいスピード感だった。高速で走り、攻撃によって火花が飛ぶことに加えて衝撃波なども観客席まで飛んできており、とてつもないスリルに、この旧きコロッセオを思わせる円形闘技場内外はさながら人類史の命懸けの戦闘が繰り広げられるコロッセオのそれのように狂気的なまでの熱狂の渦と化していた――
「――ちっ! どうやらとんでもない化け物と競い合うことになっちまったな!! 相棒、そのまま撃ち続けて少しでも牽制しろ!! 俺が一気にゴールまで逃げ切る!!」
「――りょ、了解だ…………!!」
――操縦する前部席の相棒の声を聴き我を取り戻した狙撃手は、弾を込め直して、続けざまにエリーへと爆炎を浴びせ続けた――――!!
操縦席の方の相棒は、自らの冷たい汗が滴る感覚を覚えながらも、ギアを一気に上げ、イロハを抜き去った。このまま逃げ切るか。
――――現在順位、1位レーシングカー。2位エリー。3位イロハ。4
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