第123話 舞い降りた剣
「――――よっしゃぁぁぁ!! 発破成功っス!! この研究所の要となる電源や動力源は全部オジャンにしてやったっスよー!!」
「そして、中にいる人命への殺傷は確認出来ません。怪我をしても軽傷程度で済んでいるはずです。」
「……おめえらが仲間にいてくれて、本当に助かったぜ…………」
「なーに言ってるっスか!! ガイさん、リーダーであるあんたが先陣切って行かないことにはこの救出作戦は何も上手くいかないっス!! 礼ならエリーさんとグロウくんを助け出してからにして欲しいっス!! にひひ。」
「――だよな。よっし! 行くぞイロハ、テイテツ!! エリーとグロウ、死んでも奪い返すぜ!!」
――――研究所内で、主に電源や動力部を狙って、周期的に爆発が起きている。そしてその混乱の中――――遂にガイたち3人によるエリーたちの奪還作戦が始まった。
「――な、何だ!? 敵か!?
「――げ、現在、被害を確認中です!! 非戦闘員は速やかに地下シェルターへ避難開始! 戦闘員は速やかに警備体制レベル5で散開開始!!」
――エリーを移送中の兵士たちも研究員たちも、突然の強襲に狼狽えている。
激しい爆発音と振動が発生しているが、超人的な聴力を持つエリーの耳には、微かに聴こえていた――――再会するのを諦めかけていた、愛しき恋人の勇猛果敢な雄叫びと、仲間たちの掛け合う声が――――
「――ああ…………ウソ、まさか本当なの――――ガイ! 来てくれたのね――――!!」
――愛しき恋人の声。即ち、自分を助けに来た証。
絶望の淵に沈み、虚ろに満ちていたエリーの双眸は、忽ち希望と闘志の光を灯し、燃え始めた。
「――はあああああッッッ!!」
――ガイが、来てくれた。
その事実だけで、エリーにとっては己の力を漲らせる百万の理由に勝っていた。
急速に
「う、うわっ!?」
「あちぃッ!!」
――エリーの突然の出力に伴う熱と圧で、捕縛していた兵士たちも一瞬怯んだ。
すぐさまエリーは、拘束具を熱と力で引きちぎり、一瞬にして周囲を円の動きで1回転――――兵士と研究員たちに当身を見舞い、昏倒させた。
「――――今行くわ、ガイ――――!!」
エリーは、ガイたちの気配がする方向へ、一気に駆け出した――――
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「――――むっ。これは…………」
――突然の強襲による爆発音と衝撃に、さすがのアルスリアも表情を強張らせ、グロウを抱いて周囲を警戒した。
「――まさか……もうここへ来たのか。世界中バラバラに飛ばしたはずだったのに…………忌々しい人間風情め。ダーリンは渡さん。」
アルスリアはしばらくグロウの手を取り辺りを睥睨していたが、すぐに下士官が駆け寄ってきた。
「――――も、申し上げます!! 先のニルヴァ市国侵攻作戦での残党と思しき輩が、当研究所を襲撃しております! れ、連中は僅か3名! ですが予想外の強さに兵たちも苦戦を強いられております! アルスリア中将補佐閣下、大至急防衛戦の指示を仰ぎたく存じますッ!!」
「――ちっ。せっかくダーリンとのデートの最中だと言うのに、無粋な…………他に指揮官はいるんじゃあないのかね? 私は私で任務があるのだが?」
「――そ、それが…………この研究所内の指揮系統を把握している階級の将官殿はほとんど陽動によって遠ざけられた模様!! 指揮可能な将官は…………げ、現在、閣下しかいないと存じますッ!!」
――俄かに殺気立つアルスリア。報告に来た兵士も跪いて平伏する姿勢を取りながらも、敵襲以上に、恐ろしい上官の圧に震えが止まらない。
「…………奴ら、警備も指揮官も手薄な頃合いを狙って最高のタイミングで奪還に来たというわけか…………その狡猾で知恵の利いた作戦、見事と言わざるを得ない、か…………」
――グロウの結婚相手であり、同時に大勢の部下を抱えて任務にあたる軍属でもあるアルスリア。本当はもっとグロウと共に過ごしたい欲求がありながら、上官として指揮を執らねばならない責務に内心唾棄した。一見アドバンテージであるように見えるガラテア軍高官と言う勲章が却って仇となったのだ。
「――仕方ない。中央管制室に向かう。臨時にこのアルスリア=ヴァン=ゴエティアが防衛戦の指揮を執る――――さあ、君も来なさい。」
「わっ…………」
当然アルスリアは、グロウの手を強く握り、指揮を執る場所まで連れて行くことにした。
(――ガイ……みんな、来てくれたんだね! でも…………このままガイたちのもとへ戻って、いいのかな…………)
――グロウは、アルスリアが語るこの星の真実を知ってしまい、とうとう今まで通りエリーたちの仲間でいるべきか、それとも『種子の女』アルスリアと共に己の『養分の男』としての使命を全うすべきか、心は揺れ始めた。
「――――渡すものか。絶対に渡すものか…………大事な大事な
――どんな荒事にもアルカイックスマイルで通してきたアルスリアも、結婚相手が掻っ攫われるかもしれない危機に、静かではあるが表情を引き締めた。その内心を、自分から大切なモノを奪おうとする存在への憎悪と、大切なモノへの愛情で渦巻かせながら――――
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