第101話 初見殺し・殺し
――ライネスとメランが戸惑う中、猛然と突貫してくるバルザックと改子は
「――来るッ!!」
バルザックに対し、エリーが迎え撃つ。
「――うっ!! ぐぐぐっ――――」
――早速、バルザックの得意の練気、磁力を操る能力を使ってきた。以前ライネスが
必死にその場で地に踏ん張り、捕まるまいと両脚に力を込めるエリー。
しかし、硬い地面を削りながら、徐々に引き寄せられる…………。
「――ぬっふっふっふ……よく踏ん張ってるが、そんなに身を固めちゃあ……攻撃も防御も出来んだろうッ!!」
バルザックは両手に磁力の練気を込めたまま、両脚で駆け出し、猛然とエリーを襲う――――
(――落ち着け……練気を高めたまま堪えるのよ――――対策は、ある!!)
エリーは両手に練気のエネルギーを集中し、バルザックの額を目掛け――――
「――――かああああーーーつッッッ!!」
――そう。練気を一時的に阻害する『練気の当身』を見舞った!!
「――かはっ…………!?」
意表を突かれたバルザック。一瞬バルザックから立ち昇る練気の流れが途絶え、集中が切れる。
「――やったっ!! 成功――――」
「――――と、思ったっしょ? ざあああ~んねえええ~んんん――――」
「――エリー、離れろ!! 背後を取られてる!!」
「――はっ!?」
――ガイの声で我に返った。だが時すでに遅し――――いつの間にか背後に回り込んでいた改子に捕まり、首筋に大きなナイフをあてがわれていた――
「――がっ……!!」
――過たず、エリーの頸動脈は掻っ切られてしまった――――
「――ホントはあたしが自分の練気で『隊長に練気を使われている』という幻覚を見せてるだけっした~♪ 『鬼』遺伝子との混成ユニットって聞いてたのに……呆気なく死んでんじゃあねえよ、弱ええんだよカスがあッ!!」
――強者と思って接近した相手を簡単に首を掻っ切れてしまえたので、改子は逆上し、倒れ伏すエリーの背中を踏みつけ、何度も蹴りつけた。エリーの首筋から鮮血が迸る。
――だが――――
「――ぐっ!? な、何ィ!?」
確かに首を搔っ切ったはずのエリーの亡骸に、突然、足を手で掴まれた。俄かにエリー自身の練気が立ち昇る。
「――けほっ、ケホッ――――ふーっ……掻っ切られたのがあたしで良かった~……他のみんなだったら死んでたかもね……」
「――んな、馬鹿な……こいつ、確かに――――!!」
――掻っ切られた首筋は、エリーが高めた練気によってあっという間に傷跡も残らず回復した。幻覚を喰らっても練気の開放度を高めにしていたのも一助となった――今度は自分が幻覚でも見せられているのか、と一瞬混乱する改子。
「――でええいいッ!!」
エリーはそのまま身を転げて、掴んだ改子の足ごと豪快に引き摺り倒した!! すかさず、柔道の寝技の如く改子の脚を固め、関節を極めた――――
「――ぐがあっ…………!!」
――鈍い音が鳴り、脚関節を折られた苦痛に喘ぎ、歪む顔。
「――むっ!!」
だが、すぐに改子は手に持っているナイフを振り、反撃してきた。飛び退いて躱す。
「――ほオウ!! 普通、改子のあの手の幻覚は初見殺しもイイトコなんだがなア!! まさか頸動脈を掻っ切られてもすぐ治るたァなア――――ぬふふふ。こいつは壊し甲斐があるぜえ!!」
――改子の『初見殺し』を練気と超再生で無きものとしたエリーを見て、改子の心配よりもますます激しい闘争の歓喜に吼えるバルザック。
「――――生憎、あたしは首を搔っ切られたぐらいじゃあ死ぬわけにはいかないのよ。壊し切れるもんならやってみろッ!! あたしだけでなく――――他のみんなも結構頑丈よ!!」
――初手は幻覚を見破れなかった分イーブン――――否。改子の脚を折っている分エリーに一手軍配だろうか。
「――――ぐっ……ふくくくくくかかかか…………そうねえ、隊長…………そう来なくっちゃあ……面白くないと思ったよ。」
――改子もまた、苦痛と同時に、闘争の歓喜、生命の遣り取りに戦闘狂特有の快感を見出している。何処か目は恍惚としている……。
「――OK、OK。あんたは合格だわ。あたしらに一方的に殺られる屑みてえな弱者じゃあなくて、全力で殺しに行かないと殺される、なかなか見ない強者だわ、こりゃあ――」
改子は上体を起こし、すぐに自分の練気を折られた脚に集中する。ゴギゴギッ、と痛ましい悲鳴を上げつつも、折られた脚は即座に治った。
「――隊長ッ!! それにライネスにメランも! 全力で死にに行くよ!! でないとつまんなく死ぬよ!! 殺される前に殺しに行くよ!! はっはあーーーッ!!」
――改子は奇声を上げ、跳躍した。
ニルヴァ市国を守る為の闘いはまだ始まったばかりだ――――!!
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