魔王様の人間世界逗留記

三田村綯夜

プロローグ:かくして世界は平和になった

 人々に魔王城と呼ばれている城。


 そのエントランスホールで今、人類と魔族の命運を賭けた最後の戦いが行われていた。


 白銀に輝く鎧に身を包み、聖なる力を宿した剣を振るう勇者、ロミロフ。


 相対するは、闇を漉いてすいて作ったかのような漆黒の衣服を身に纏い、鋭い二本の角を生やして、破壊の魔法を放つ魔王、バルクロム。


 先程までは舌戦を交えながら戦っていたのだが、長い戦いのうちに語る言葉は尽き、勇者の荒い息づかいと魔王の詠唱の声だけが二人の口から漏れる。


 そして、二人の戦いは終わりを迎えた。


 勇者の剣が魔王の右の角を切り飛ばし、魔王の放った雷が勇者の体を焼く。


 魔王は力を失い、勇者は床に伏せ肉が焦げたような臭いを立てる。


「すまないなロミロフ、貴様の言うことも一理あったが、理ではなく力に従うのが魔族なんだ」


 戦いに巻き込まれないように離れていた従者達を呼ぶために、勇者の亡骸に背を向ける魔王。


 その背に、勇者の剣が突き刺さる。


「なっ……!?」


「不意打ちなんてかっこ悪いが、俺の勝ちだ」


 魔王の角が折れた為に魔王の雷は勇者の命を奪うに足らず、勇者は魔王を倒すことに成功した。


 こうして、世界は魔王の脅威から解放されたのだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る