第壱節 第一章〜内臓が捩れる話前編〜

「はァ……はァ……コレで、少しは『持つ・・』、かな……」

パリ…パリ…ムシャ……

古本市が偶々運良く開催していたので、其処で怪談話集を沢山買い込み、人気ひとけの無い場所でパリパリペリペリページを千切って文字を舐めるように口に運ぶ。お陰で周りには食い散らかした、真っ白な紙片が散らばっている。

口の中に今口に入れた怪談話が口味悪く、広がり、ネットリとした血の味や、薄ら寒くなる冷涼さを伝えてくれる。その味を通して、その怪談話の詳細を詳しく教えてくれる。

ムシャムシャゴクリ

「…………………ご馳走様でした」

パンッと拍手を打って書いた人に感謝を示す。

「よーいせっと! さてさて探しに行きますか〜……」

…………………………って何を?

俺は腹ごなしを終えた為、俺は本来の目的を忘れていた。

「えーと……法螺貝に〜録音してた、ハズ…………ア、あったあった」

鞄の中から目的のモノを見つけ出し、スイッチを押して耳に軽く当てる。

中から録音していた音声が流れる。

「…………ふんふん、ほぉほぉ……あ〜こんな仕事、受けてたのかァ……」

ガチンッとスイッチを止めて、鞄に法螺貝を終う。

「ほぅ……人間ヒトって面倒な生きモンだなァ? なァ…………姫さん」

俺は切り立った崖っぷちで蒼空を見上げながら、仕事をくれたクソ生意気な姫様の顔を思い出していた。

真っ黒に染まった黒い長髪を複雑に編み込んだ、素晴らしく頭のキレる脳味噌を有した頭に、長い睫毛に縁取られた王蜜色の瞳、薄らと薄桃色に染まる柔らかな頬、サッと紅い紅を引いた唇を悪戯っぽく引き上げ笑う、とびきりの美少女大和撫子

「…………もう二度と、逢う事も無いんだろうなァ……逢いたくもねぇけど」

俺は誰に言うでも無くボソッと蒼空に向かって呟いた。

「コ~ク~レ~イ~!? 何処だ〜!?」

「………………はァ……今行く」

俺は蒼空をもう一度見て軽く溜息を吐くと、騒々しい同行人の元へ向かった。



ー…………コレから始まる。姫様に頼まれた、本来の・・・仕事が……表向きの仕事は見せ掛けだ。見ず知らずの人間に、俺の正体をバラす訳にもいかないしな……

俺はそう心の中で呟いた。深層心理胸の奥底で『早くタヒにたい』と思いながら……。

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