第9話 Chia Teの蔓越莓鳳梨酥

 蔓越莓鳳梨酥


 もう、字画が多すぎてなにがなんだか……読もうという気すら起きないほどのインパクトだ。


 Chia Teの鳳梨酥は以前、黄身が入った鳳黄酥を食べたのだけれど、今回は蔓越莓鳳梨酥という、ひどく難解な文字が書かれていた。

 どうやら、蔓越莓と書いてクランベリーを意味するらしい。


 クランベリーケーキ?? と思ったけれど、これがどうして。かなりの人気なのだそうだ。というのも、こちらのお店、以前も書いた通り、鳳梨酥の有名店でパイナップルケーキコンテストの初代チャンピオンなのだけれど、中身が色々あることでも有名なのだそうだ。

 今回、定番の鳳梨酥と同じくらい人気のクランベリーを買ってきてくれたのだけれど、他にもメロンやイチゴ、クルミなど色々な種類があるのだとか。

 箱詰めされた商品もあるようだけれど、お店ではバラで置かれている商品を、各々がお店の空箱を手に、自ら詰めてレジに持って行く買い方がポピュラーなようだ。箱の大きさも3種類あるそうだし、この買い方はとても効率的で楽しそうだ。私もやってみたい。そうしたら、自分のためだけの一箱を作ったみたい。勿論、食べたことのないメロンやイチゴ、クルミも入れるだろう。

 ところで、Chia Teは地元でも大人気のお店で、平日でも相当混雑するそうだ。なぜここまで混雑するのかというと、どうも支店がないらしい。

 最近になって商品を置くお店やコンビニは増えたようなのだけれど、Chia Teの看板を掲げるお店は工場兼本店しかないのだそうだ。その本店では、出来上がりがどんどん店頭に補充されるらしい。出来立てが買えるのだから、本店にお客さんが集中してしまうのも頷ける。

 さて、この蔓越莓鳳梨酥――クランベリーケーキなのだけれど、確かにとても美味しかった。従来の鳳梨酥のクランベリー版なのかと思っていたけれど、全然違う。なにが違うって、生地から違う。鳳黄酥はバターの風味が強くしっとり感があったのだけれど、蔓越莓鳳梨酥は、なんだかサクサク感が強いのだ。それに、見た目もザラザラとしていて違う気がする。調べてみると、胚芽が混ぜられ少しザクザク感を出しているのだそう。食べてみると、なるほど。クランベリーがかなり甘味が強く、従来の生地だとちょっと違うのかもしれない。胚芽のザクザク感がクランベリーが入った餡に合っていると、きちんと生地も研究して作られている。Chia Teは、コンテストでチャンピオンになったからといって、そこに甘えてはいない。有名店になったからといってやたらと店舗を増やすのではなく、地元に腰を落ち着けて研究をし、新しい味にもチャレンジし、そしてそちらも人気商品へと育て上げた。そこに私は、職人魂を感じた。

 Chia Te――佳徳糕餅――私はこのお店に、とても好感を持った。


 ところで、蔓越莓鳳梨酥と書かれているからには、クランベリー餡だけが入っているわけではない。鳳梨酥の餡と一緒に入っている。これもまた、Chia Teのこだわりなのかもしれない。益々、他の味にも興味が出てきた。

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