かぼちゃの祭典

白石定規

01

 前回までのあらすじ。


 私こと灰の魔女イレイナは、世界中を渡り歩く旅人。黒のローブに三角帽子を身にまとい、灰色の髪をなびかせながら国々を見て回るのが生きがいで、そしてそれ以外は特に何も考えることをしないのも生きがいです。


 私がその国に訪れたのは昨日。

 かぼちゃ祭が行われていると巷で噂の国に訪れた私は、門兵さんに声を掛けられて「やあ君可愛いねえ! 凄いや! こんな可愛い子見たことないよ! 最高だ! というわけだからこれあげるよ。キャンディ」と大量のキャンディを籠いっぱいに貰ったんですね。やったあ。


 で、私は街を歩いていたわけですけど、街の人たちの様子はなんだかとっても妙ちきりん。

 包帯ぐるぐる巻きの大男とか、吸血鬼とか、サキュバスさんとか、白い布をかぶったお化けとか、狼男とかとか。


 つまり街は魔物で溢れていて、右も左も魔物ばっかり。うわあすごい。

 私はまるで猛獣の檻に投げ込まれた餌でした。

 かぼちゃ祭とは一体何だったのか。

 ここはまるで地獄そのもの。


「へへへ可愛いねえお嬢ちゃん」「おやおや? 魔女さんが我々の街に迷い込んできたのかな?」「お兄さんと一緒に遊ぼうかふへへへへ……」「あらぁ! こんなところ、お子様が来る場所ではなくってよ?」

 魔物たちは私を取り囲み、下品な笑みを浮かべました。

 そして私はそこで魔物たちの餌食となってしまったのでした。


 諸行無常。

 こうして私の旅は終わったのでした。

 めでたしめでたし。


「…………」


 まあ、さすがに魔物の餌食となったという展開は嘘なのですけど。もっというと前回までのあらすじという出だしの文句も嘘っぱち。

 ちなみにキャンディを貰ったというのも嘘です。

 正しくは、換金しました。

 この国のこの日はキャンディを通貨の代わりに使っているそうなのです。

 だから持っているお金を全部手渡してキャンディに換えたんですね。


「へへへ可愛いねえお嬢ちゃ」以下、先ほどのあらすじとだいたい同じことが起きました。

 そしてキャンディを抱えた私は魔物に取り囲まれて、こう言われたのです。

「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ」

 と。


「……………………………………………………」

 聞きしによると、この国のこの日は、このような行いが容認されるおぞましい日なのだそうです。

 この国におけるかぼちゃ祭の一日は、国がかつあげ的な行いを容認しておられました。


 魔物に囲まれた私。

 おびえて何もできやしませんでした。

 逆らったら何されるか分かったもんじゃありません。国の中は魔物だらけですし尚更、騒ぎは起こせません。

 なので。

 ということで。


「……………………………………おかしどうぞ」

 私は無一文になってしまったのでした。

 諸行無常。

 うふふ意味わかんないです。

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