魔法使いのカボチャパーティ★2016 前編
10月30日。
魔法使いたちの住むその世界では、魔法使いたちが目まぐるしく動き回っていた。
「急げ急げ~♪」
真っ赤な髪の魔法使いがカボチャを運んでいる。
……といっても、その量は1個や2個じゃない。それはもう───大量に。
カボチャは、宙を飛んでいる。
しかしまぁ、この世界では何かが宙を待っているのは日常的な風景だ。
「茜!?少しは落ち着けよ!」
そこに、偶然近くを通りかかった蒼い髪の魔法使いが彼女に声をかけた。
「え??」
彼女───茜と呼ばれた魔法使いは、足を止める。
すると、蒼い髪の魔法使いは、呆れたような表情で近づいてきた。
「お前……ちゃんと気を配れよ。さっきからカボチャが色んなところにあたってるぞ……」
茜は、今来た道を注意深く見渡す。
すると、所々にカボチャがぶつかったらしい痕跡が見つかった。
「え!?まじ!!やば……」
茜は、みるからに動揺している。
「師匠に起こられるぞ」
そう言った蒼い髪の魔法使いは意地悪な笑みを浮かべている。
「……
そんな二人のもとに、緑色の髪をした魔法使いがやってきた。
「あ、
茜は、クマのぬいぐるみを抱いて現れた友人に今にも泣きそうな表情で助けを求める。
そして、空と呼ばれた蒼い髪の魔法使いはいたずらっ子じみた表情をさっと隠した。
「安心、して。師匠も同じ……」
緑の髪の魔法使い、碧は眠そうな表情で上を向く。そこには満月になりきれていない大きな月。
「え?」
碧の言葉に茜は思考を巡らすが、言葉の意味に全く見当がつかない。空を見上げる碧につられて茜も空を見上げた。
「さっき、急いでお菓子作ってた……忘れてた、って……お部屋、粉まみれ……」
ふいに語った碧の言葉に空は小さな声でボソリと呟いた。
「……さすが師匠……」
そして、その声は碧にのみ聞こえていた。
「……でも、怒る……かも」
碧は、スッと目を閉じる。
茜は、碧の言葉にドキドキしていた。
「……空ちゃん、に」
碧の言葉に、茜は、空を見る。
空は「うげっ」と嫌そうな顔をした。
「空、何かしたの??」
茜は、ピュアな瞳で空を見つめる。
「……空ちゃん、師匠の用意したお菓子……全部食べた」
碧は口角を上げ……効果音をつけるなら、ニヤリという音がぴったりの表情をした。
「え!?……え、でもじゃあ、さっきの忘れてたって……?」
茜の言葉に碧は遠い目をした。
「師匠、食べられたこと……忘れてた……」
「くそぉ~!これは碧の仕事だろ~……」
あの後、仲良く帰った3人は、粉で真っ白になった師匠に迎えられた。
そして、空は「お菓子の準備を手伝う」という罰をサボったせいで、別の仕事をさせられていた。
「……空ちゃん、がんば……」
碧は、毎年自分がやっていた仕事をやらされている空をクッションに沈みながら見守っている。
「頑張って、空!!」
茜は、師匠に言われて1人仮装大会をするはめになっていた。
応援するその時の茜の姿は猫又の仮装。
尻尾は確かに2つあるが、ぱっとみただの猫。怖さなんてなく、あるのは愛嬌ただそれだけ。
「……茜ちゃん、かわいい……」
猫又のコスプレ……もとい、仮装をする茜に碧は素直に感想を述べる。
「ほんと!?」
喜ぶ茜。その姿をパシャりとカメラにおさめた碧は衣装の山に視線を送り、言った。
「でも……ハロウィン、って……感じじゃ、ない……」
茜のテンションがすぅっと下がる。
「そんなぁ~……」
茜の仮装大会……もとい、衣装選びはなかなか終わらない───。
3人はそれぞれ、自分のやることを終え、大きなクッションの中で3人仲良く夢の中だった。
その笑顔はまさに天使……なんてことを思いつつ、黒髪の女は3人を起こした。
「お前ら~、お疲れさん。そろそろ時間だ、行っておいで」
女は3人を中に浮かせ、クッションを何処かへしまってしまう。
「おーい、時間だぞー??」
何度か声をかけると、茜が目を覚ます。
「……あ、師匠??……って、え!?もうそんな時間ですか!?」
茜は他二人のぐっすりと眠る姿をみてなんのためらいもなく魔法を放った。
「おきてーっ!!」
それは、茜がもっとも得意とする炎の魔法。
暖かな火の玉が二人の周りを漂う。
「…熱っ!」
真っ先に起きたのは空。
そして、すぐさま事態を把握し、いまだに目を覚まさない碧を起こそうと魔法を放つが……。
魔法を放った瞬間、碧が消えた。
「……行こう……」
そして、女───つまり、3人の師匠である黒髪の女の後ろに現れた。
数分後、それぞれが衣装に身を包んでいた。
碧は幽霊の仮装。
空は海賊の仮装。
そして、事前に色々と仮装しながら写真を撮られていた茜はサキュバスの仮装。
ついでに、師匠は吸血鬼の仮装。
少し恥ずかしそうな茜とともに、師匠の合図で3人は目的地へと向かう。
「───さぁ、前夜祭といこうか!!」
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