第62話 心と体の行方
瑞歩は寝室に入る寸前に、
「あかん!・・・ シャワー・・・」と言いましたが、私はそれを許さず、彼女をベッドに寝かせたあと、目の前にいる女性が誰の娘で、どのような宿命を背負っていようと、そんな現実的な問題や、非現実的な問題は全て後回しにして、ただ単に自分の欲望を満たすために、瑞歩の心と体を抱き始めました。
瑞歩の中に入った瞬間、私の心の中には、アキちゃんの存在や、愛子の面影など既にありませんでした。
心から瑞歩を愛しているという、単純で明快であり、純粋な気持ちで、ひたすらに瑞歩を求めました。
しかし・・・ 心のどこかに、こうすることが本当に正しかったのかという思いと、もうこれから先に、どうなっても構わないという、投げやりな思いといった、様々な思いが交錯した時でした。
瑞歩はどういう気持ちで、私を受け入れているのだろうと思いました。真実を知り、ずたずたに傷ついた心を、余計に傷つけてしまっているのか・・・
それとも、こうして瑞歩を抱くことによって、傷ついた心を癒しているのか・・・
そのどちらなのかさえ分からない自分が、はたしてこの先、本当に瑞歩を救うことができるのでしょうか・・・
そうして私は、瑞歩を救うためには、どうすればいいのかの明確な答えを見つけられないまま、射精に近づいた時でした。
「私って、ママの代わりじゃないやんなぁ?・・・」
「!・・・・」
瑞歩の質問に答えるためというよりも、射精を遅らせるために動きを止めたあと、
「違うよ。瑞歩は愛子の代わりじゃない」と言いました。
「じゃあ、私は・・・ 涼介の子供を生んでいいの?」
彼女が言った言葉の意味を探し始めました。
もしも瑞歩が妊娠して、彼女の体が、彼女ひとりのものでなくなれば・・・と思った時、ミツコが言っていた、本能的な直感を信じて、という言葉の意味が分かったような気がしました。
おそらく瑞歩は、子供を宿すことが、生へとつながる唯一の道だということを、本能的に自らが感じ取り、導き出したのだと思い、私も自分の本能的な直感を信じて、
「瑞歩、俺の子供を産んでくれ!」と言いました。
瑞歩は私の目をまっすぐ見つめたまま、ゆっくりと小さく頷きました。
私は再び瑞歩を抱き始め、そして彼女の中に射精しました。
それから3日間、私たちはお風呂も一緒に入り、トイレ以外はひと時も離れずに抱き合ったまま過ごし、私は体力が回復するたびに、何度も瑞歩を抱き続けました。
そして私は、瑞歩が感じ続けているであろう、自分の出生に対する倫理的な嫌悪や、医学的な根拠、道義的な背徳や、遺伝的な不安などを、彼女の体から押し出すような気持ちで、激しく突き続け、瑞歩は自らの悲しい宿命を、まるで洗い流そうとするかのように激しく濡れ、私は瑞歩の中に、何度も生命を注ぎ込みました。
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