第50話 発覚
妻の妊娠を知った秀喜に、チャンスが訪れました。有名な映画監督の助手として、アラスカの大自然を舞台とした、ドキュメンタリー映画の撮影に参加しないかという、映画監督を目指す秀喜にとって、願っても無い話でした。
秀喜はもうすぐ生まれる、我が子との対面を当分の間諦め、アラスカの長期ロケに出発しました。
その間、郁美は秀喜の帰りを待っていましたが、郁美が妊娠16週を過ぎ、安定期に入ったときでした。
偶然にも麗子が神崎と旅行中に、銀行から郁美に、貸し金庫の契約更新の手続きの連絡がありました。
その貸し金庫は麗子が使用していたのですが、郁美の名義で借りていたので、当然のことですが銀行は郁美に連絡しました。
郁美は麗子に頼まれて、その貸し金庫を開設したのですが、郁美自身は中に何が入っているのか分かっておりませんでした。
その当時の銀行は、現在のように身分照明なども必要なく、架空の名義で口座の開設や、貸し金庫の利用もOKという、言わば何でもありの時代でした。
銀行を訪れた郁美は、やはり女心と言うべきか、中に高価な宝石などが入っているのでは?という思いから、契約更新の手続きを終えたあと、貸し金庫の中身を確認しました。
しかし、郁美が目にしたのは貴金属類ではなく、秀夫と久美子の遺書でした。
二人の遺書読んだ郁美は、加代の元へ向かいました。
加代は麗子に裏切られた、という怒りよりも、何も気付かなかった、自分の愚かさを嘆きました。
二人は話し合った結果、まずは中絶を考えました。
しかし、中絶するには父親である秀喜の同意書が必要で、仕事上でもっとも大切な時期を迎えている秀喜には、やはり話すことができないと諦めましました。
郁美の場合、すでに妊娠12週を過ぎていましたので、中絶すると役所に死産届を出さなければなりませんし、何よりも中絶手術自体が、母親の命に関わる危険性が高い大手術なので、それなりの覚悟が必要でした。そして、このまま時間が経過し、妊娠22週を過ぎれば、法律で中絶することはできなくなってしまいます・・・
困り果てた郁美と加代は、すべてを明らかにする覚悟を決めて、野間陽子を頼りました。
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