哲学について

母と言う人は、言い出したら最後までやり通す、初志貫徹の人である。


今日も倉庫に目が行った彼女は、何を思ったか、のこぎりでぎーこぎーこと、倉庫の棚を切り崩し、「後で農家さんに持って行ってもらうから」と片づけをものすごい勢いで始めた。


もんの凄い根性のある人である。

やっていることはほぼ土木の仕事だ。


私は犬を連れて二階にいたのだが、下が何やら騒がしいので、下りて見たら案の定、お片付けの真っ最中だった。


「夏、これのこぎりで切ってー」と板を渡され、それが炬燵を解体したものであると知ったのは後のことである。


それを通りかかった人たちが見ては笑って挨拶してくれる。

母の哲学とは苦労の先にあるのである。


さて、哲学と言えば、昔小学校で同級生が持ってきた本、「山田君」といったか。

彼は日々ぼーっとして過ごしているのだが、なかなか頭が良く、同級生が将来社長になると言ったら「絶対こいつの会社には入らないでおこう」とか、待っている間に川を眺めていて、川と地面とどちらが進んでいるのかわからなくなってきたりと、面白要素が沢山あるのだ。


今探しても「山田君と七人の魔女」しか出てこなくて、やれ、もう廃刊になったかと少し残念である。

心に残るほど面白かった。


私は父から電話で「もうすぐ帰るからタバコ買っといて」と言われ、歩いてそこのタバコ屋に行ったが、無くて、駅前まで歩いて行った。

そこのローソンでくじを引き、「応募ですわ」と見せてから、やはり私と同じような気性の店員さんに安堵しながら帰る最中、ソフトヤンキーを見た。


彼らはタンクトップに短パン姿で、残夏を謳歌していた。


うわお。

声には出さずにそう思い、リーマンが歩いて行ったのでそちらとは反対方向に歩いて行ったら、いつもの工事現場に出た。

若干顔覚えられるだろ。そんな風に思った。


帰ったらまだ母と祖母が納得いかないのか片づけしていて、「ああ、なんでそんなにガッツがあるんだ」と若干貧血気味の私は呻くようにして後ろを歩いて行った。

楽しいことはみんな私には訪れないのだから、困ったもんである。犬抱いて文章書くくらいか、できることは。


おこぼれ貰ってのこぎりで木を切っていたら、くらくらと目まいがした。

あんまり良いことじゃないよな、ひ弱って。そんな風に思った。


昨日父が寝ていたら、犬が起こしに来てとてもうざかったらしい。

嬉しくてしゃーないんだな、そう思った。


家族が揃う日、もうすぐ無くなる日。

大事に過ごそうと思う。

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