第4話 不安と思い
あれは夢だったのだろうか……
僕はお母さんの声に起こされ目を覚ました。重たいまぶたを右手で擦りながらリビングに向かう。そこにはお母さんが朝ごはんを作っており、お父さんは椅子に座りながら新聞を読んでいて朝ごはんができるのを待っている。
僕にとってはこの光景が日常だ。
「おはよう務」
お母さんとお父さんから毎日貰う言葉をもらった。
僕は、「おはよ~〜お母さんお父さん…」
まだ、半開きの目をしている僕はお父さんの横である、リビングの椅子に座った。
座った直後「眠そうだな?務、眠れなかったのか?」お父さんが僕の顔が眠そうなのが疑問に思ったのか質問してくる。
「昨日ちょっと眠れなくて…」
「務が珍しいわね。昼間はたくさん動き回ってるからいつも夜はぐっすり寝てるはずなのに」とお母さんが料理を机に置いてくる
「まぁ、ちょっとね…」
と話の話題を変えるように、お母さんが置いた料理に手を付き始めた。
・・・・
「急がないと学校遅れちゃうや」
口の中にお母さんが作ったばかりの卵焼きや味噌汁を啜りもぐもぐしている僕はそういった。
父親と母親は顔を見つめ合わし、心配そうな顔をしたが、大丈夫だろうと2人同時に頷き、いつも通りの家族の雰囲気に戻った。
僕は学校に着いてからも上の空だった。上の空だからといって遊んでないとは言っていない。授業中や休憩時間常に僕らにとっては常に遊んでる時間だ。授業中とかは練カス作ったり、絵しりとりなど先生の目を盗み毎日している。休憩時間では外に出てサッカーや鬼ごっこなど身体を思いっきり動かしている。だけど、今日はいつもなら何事も考えず遊んでるんだけど一定の時間になると脳裏にちらつく。
あの出来事は夢だったのではないかと…
今日僕はまたあの場所に行けるのだろうかという不安に…
僕はあの人の演奏を聞きたい。そう思っている。でも、あの夢のような不思議な思い出は本当に存在したのかもわからない。
僕は考え込んでしまうのだ。
そうして少しの間考えてるつもりが、絵しりとりは書かず上の空で、友達を待たせてるのに全く気づいていないし、鬼ごっこしているのにすぐ立ち止まってしまい鬼に捕まってしまった。
友達からは今日、様子が変だぞと言われてしまうぐらいだ。
自分でもわかってる。でも気づいた時には考え込んでしまっているのだ。
僕は学校が終わると、走って家に帰っていった。帰る前に友達に遊ぼうと誘われたが僕は用事あると言って断った。今思えば、僕は初めて断ったのかもしれない。誘った友達も初めて断られびっくりした顔をしていた。僕はまた次の日遊ぼうと言って僕は走っていったのだ。
僕はあの場所に行くために早く寝ようと考えた。早く寝たらあの時間帯に起きて目が覚めるかもしれない。完全な策などではないが、少しの可能性でもあるなら賭けてみようと思った。
僕はそう考え、お母さんに今日は早く晩御飯にしてと頼んだ。お母さんにも今日友達と遊ばなかったことを驚かれたが、昨日あんまり眠れなかったから早く寝たいと伝えたら快く了承してくれた。
晩御飯の時間帯はいつもなら19時すぎだが今日は早めにと頼んだので18時にお母さんと2人で晩御飯を食べた。お父さんはいつも20時前頃に帰宅してくる。
そして僕は20時までに風呂と歯磨きをしてしまい、20時半には布団に潜った。
僕はドキドキしていた。眠れるのかも分からないぐらい心臓の音が早い。
ドクンドクン。ドクンドクン。
どんどん早くなってくる。
布団潜ってから、30分が経過した。
僕はまだ眠れていない…
なぜか、逆に疲れていた。身体には何故か汗をかいてしまい、布団の中がとても暑かった。
「暑いなぁ……今日眠れるのかな…」
自分に対して自問自答した。だが、その答えはかえってくるわけがない。僕の部屋は静けさでいっぱいだった。
最悪眠くないなら寝ないままでもいいんじゃないかなと思った時、突然ドアが開いた。お母さんだ。僕が早めに布団に入ったため、ちゃんと寝ているか確認しに来たみたいだ。
「そんな事しなくても寝れるのに(寝れていないけど笑)」僕は心の中で思う。
「務、まだ眠れないの?」
お母さんが僕のベッドまで近づいてきて顔を覗いてきた。昨日、僕があんまり眠れなかったから心配してくれたみたいだ。
「うん、でもそろそろ眠くなってきたから大丈夫だよ。」
僕は嘘をついた。お母さんに心配させたくないってのもあり、全然眠たくなかったが、僕はそう答えた。
そういったお母さんは何故か僕のベッドに腰を下ろし唐突に、僕の頭をなでてきた。
「そっか……」
「おやすみ……」
お母さんの手からは、暖かく家族の温もりを感じた。暖かく優しい温もりだ。
僕は頭をなでてきた際に唐突だったため、目をつぶっていたが、撫でられていると気持ちよく、だんだん眠くなってきてしまった。
なぜだろうか…安心したからかもしれない。
僕は、うとうとし始めていた。だが、このまま寝てしまいらいつも通り朝を迎えるかもしれない。そんな訳にはいかない。だけど睡魔には勝てず、どうしようもなかった。
そう考えるも、眠くなってきて精神が遠のいていく。僕は精神が遠のく前にあの人の言葉を思い出す。
「明日また出会うだろう。」
僕はその言葉の返事を小声でいう。
「いまから、会いに行きますね…」
小声で言ったつもりだが、ちゃんとその言葉を言えたかは分からなかった。だが、僕は信じた。また、会えることを。
そして、僕があの人に対して、聞きたいことを思い出した。
「そうだ……あの…人の……なま……ぇを………きか…な………………きゃ……」
僕の声はどんどん小さくなっていく。そして僕はその言葉を呟いたと同時に眠りについた。
「スゥースゥー…」
お母さんは僕が眠ったのを確認しリビングに戻って行った……。
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