ボクは飛龍に出会ったんだ

@tarodatoiunoni

セクト 1 十五歳の春

| それは2032年のボクが15歳の春のことだった。僕らは、この国の中で特別な役割を担うため、ボクらは一定の年齢に満ちると、一所に集められる。春のがまだ心に届かないようなとき、ボクらの世界が一変することが起こるのだった。


 といっても、ボクらはまだ何も知らないようなものたちだ。いろいろと楽しいことで過ごしてきた中学校を卒業して、今から新しい世界に入る。しかし一昔のように爪織つめおりの学生服に身を固めて、桜の木の下でをしたりなどの緊張感ありながらも浮かれたことはしない。


 もちろん、どこからが流れてきそうな、切ないメロディのようなものでもまるでない。それどころか、ボクらがいるところはそんなところではない。

 

 そこは、何もない草原のような場所だった。はっきり言えば、何もない原っぱだ。

 

 さてどういうことなのかと、気になる方々も多いかとは思う。この土と木と水しかない、まるで原生を思わせるようなその場所で、どうしてこれからの未来についてのすべてを委ねるお話が始まるのかというのかと。


 ボクの名前はタカシ。


 これはある種の戦いの話で、何か徴兵された悲しき若者の物語の一部ではない。またによって、親の肩代わりをするために何か希望エスポアールとかいう皮肉な名前の船に乗せられそうになっているわけでもない。そういう何かトラブルに巻き込まれて、仕方なくこんな場所に集めさせられているわけでは毛頭ないのだ。


 こうなることは、全市民共通の予定された場所と修養の場所なのだ。幾年と前からこのことについては、学校で聞かされてはいた、そう、ここはの訓練所だ。中学を卒業したボクらの、新たな当たり前の進路である。 


 とはいえ、いきなりそんなことを言われましても的なご意見も多いので、まずはここに至るこの国の状況をお話したい。


 どこから始めたらいいのか。ボクには皆目見当がつかないと言ったら、大げさかもしれないが。あまりくどく説明するのもなんだから、あの人類の運命の転換点から話し始めることにしよう。


 2018年のことだった。そのときは当たり前のようにやってきて、ボクたちの国、ニッポンはあっという間に突発的な転換点を迎えた。それは圧倒的な非常な力をもって、今までの文明をすべてなかったような状態にさせられてしまったのだ。いわゆる龍の革命と呼ばれているあの出来事。当時生きていた人は誰も忘れることができない、そんな事件だった。


 それはSF小説のように、突如のしれないエイリアンみたいなものがやってきてという具合に、龍族はどこからともなくやってきたのだ。そしてこのニッポンのすべてを、掌握してしまった。あっという間にだ。その期間は厳密にいうと、わずか2週間程度だったという。


 人類はいろいろ抵抗はしたのだが、龍の戦闘能力はあまりにも高く、太刀うちできるレベルのものでもなかった。なにせ龍の速さはジェット戦闘機よりも早く、下手したら核爆弾を受けてもその体は問題なさそうだった。


 軍事的にはかなわないボクらの国はなすすべもなく、ただ侵攻してくるだけではなく、政治的な支配さえもしてきた龍に実権を握られてしまったのだ。そして、そこから先がおかしなことになっているのだが、龍たちは実にをしてくれた。なんと、この国ニッポンの中にある問題点のすべてを取り除けてくれた。


 国民総生産の何倍もあった借金をあっという間に返却し、さらに膨大な貿易黒字をももたらした。そして政治体制や格差社会などの問題点も、ある意味な圧制で取り除いた。つまりニッポンの中にあり、弊害と思われていた、文明を停滞するともいわれかねないものすべてを、彼らは一新することをあっというまにしてのけた。


 そして今や政治的にも支配し、龍族の王族を中心とした、政府もつくりこの国に君臨している。こんな軍事的なクーデターみたいなものだったが、敵との力の差がありすぎて戦闘はほとんど起こらず、抵抗するすべもなかったぐらいだ。


 龍族の文明程度があまりにも進んでいた。だから、ある種の抵抗運動していた大人たちも、龍たちが単に人間を支配するだけのつもりではなく、ことさら人類の刷新と叫んでいたことのすべてを代行してやってしまっているのを認めるようになっていった。それも見たこともないような手際で、短期間の内に簡単になしとげてしまったのも大きな要素だっただろう。


 そんなこともあったものだから、彼らの統治のあり方が何か人間の理想のような気さえして、多くの人は次第に龍たちを受け入れ始めたいったのである。


 それが2020年のときだった、龍王国がそこから正式に出発し、国連にも認められ、龍族と人間の評議員がこのニッポンの統治をするようになった。そこで、社会をより創造的にまた自由な人間生活をもたらすためにたてられたのか画期的なシステム、7だった。


 それは中学を卒業したのちと、子育てが終わったのちの7年間を、ニッポンのすべての民が趣味やアートや工学研究などの創造的な活動に従事するための自由な期間を得ることができるように、その労役期間の人だけで社会の生産的なことをすべて肩代わりし、究極の福祉として何もせずに衣食住を与えられるようにするというものだった。


 ニッポンのすべての生命体の存在のための生活基盤を整えるため、ボランティア活動をする時期がこの労役だった。つまりこの労役に携わる人だけで、ニッポンという国のすべてを存続させることが基本的にできる。あとの余暇な時間は共同に分配され、みな一昔前のいわゆるセレブのような生活ができるということになったのだ。


 労役以外の期間は、基本遊んでいてもいいという自由な時間で何をしていてもかまわないものだった。まさに何かが訪れたように当時は言われたそうだ。


 しかし問題も実はあった、それは私有財産の問題、また制度へ納得いかない感情論など、そういうもので一時封建主義的な恐怖政治状態だったことはあったようだが、数年ののちに私有財産の問題以外は解決した。


 そしてその後5年もたったころには、既存の産業ではない龍たちの産業による膨大な利潤によって、私有財産における問題は解決というか、問題の程度がなくなるようになったという。


 ということで新しい扉をひらいた人類だった、というより開かされた人類だったのであった。それから十数年の月日が流れ、ボクたちの世代が龍たちがつくった7年労役の時期を迎えた。僕たちは革命後の世代なので、以前の人類の姿を知らないから、まったくの龍世代といってもいい。


 そもそも小学生の時でさえ、クラスに龍人たちも級友としていたし、僕にもダラスという親友いたぐらいである。そういう経緯で、ニッポンは世界のトップの圧倒的な経済大国になったのだ。日本のGNPは3倍になった。

 しかしボクらは、本当の意味で世界の在り方をこのときは知らなかったのだ。

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