12月6日 言い訳

 ストーリーもプロットも思い浮かばなくなってから数週間。

 風邪やら肺炎っぽい症状からなのか、仕事の忙しさからなのか。

 洗顔フォームで歯を磨いたからなのか。

 割り箸が3回連続で途中から折れたからなのか。

 段差のない場所でつまづいたからなのか。

 自宅でトイレットペーパーが切れて買い忘れたまま用を足してしまったからなのか。

 ガスをつけずに極寒のシャワーを浴びてしまったからなのか。

 肩こりがひどいからなのか。

 草むしりをサボっているからなのか。

 年末ジャンボを買って当たったあとの生活をイメージしながらどのように数億円を隠しつつ平然と町に溶け込めるのかを想像していることが年末ジャンボが当たらない原因だよなと考えているからなのか。


 執筆が進まない原因を考えたら止むことはない。

 日常に言い訳になるようなことがゴロゴロ転がっていて、どれを使っていいのやらわからない。


 とにかく、この何も思い浮かばない症候群から抜けるために、言い訳を考えることをやめなければならなかった。


 言い訳を考えないようにすることは、想像以上に難しいことだった。

 言い訳を考えないように、さまざまなことを妄想してみた。

 空から女の子が!的な展開を考えてみたり、見習い魔女が配達しにくる展開を考えてみたり、隣の山に住んでいるのが1000歳を超えるおばけだったり、名前を奪われた少女が住み込みで働いたり・・・おかしい、なぜかはわからないが、言い訳を考えないようにしていたら、いつの間にか鮮明に映像が見えるようになった。


 今目の前で、心を盗まれた少女に警官が敬礼をしている光景も、妙にリアリティがある。


 これで、言い訳を考えずに済むようになった。

 しかし、おかしなことに、言い訳を考えることをやめた割に、執筆は一向に進まなかった。

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