11月28日 愛がテーマのちょっぴりホラーな話
カニバリズムという言葉がある。
日本語に訳すと、「愛死食」と書くらしい。
その人を愛するがゆえに、殺害しその肉体を食べてしまうという一種の愛の形。
・・・という話を書いていると、疲れているのか、病んでいるのかと心配されがちであるが、いたって元気である。
しかし、そんな恐ろしいことが実際に起こるのだろうか。
平和ボケした毎日を送っていた男は、今日も水槽を眺めていた。
水槽は男にとって癒しであった。なぜなら、男は水槽に彼が最も愛する生き物を飼っていたからなのだ。
そう、それは・・・「メキシコサラマンダー」通称、「ウーパールーパー」である。
この水槽の中には2匹のウーパールーパーがいる。
・・・そのはずだったのだが、あれ・・・
どういうわけか、どこを探しても1匹しか見当たらなかった。
水槽の隅々まで探した。ポンプの裏側も見てみた。土管のような置物の中身も見てみた。カバンの中や机の中までも探してみたが、見つからなかった。
もしかして、ものすごい勢いで跳ねて水槽から飛び出し、潰してしまったのではと男は咄嗟に思い当たった。足をあげてみたりしてみたが、やはり見当たらなかった。
いや、いなくなった1匹のウーパールーパーの行方は、男は気づいていたのだ。
気づいていたのだが、気づいていないフリをしていた。
水槽の中で、唯一探していない場所があることにお気づきだろうか。
そう、それは・・・もう1匹のウーパールーパーである。
その時、男の目の前で起こっていたことを、その事実としてありのまま受け止める勇気など、男にはなかったのである。
しかし、結局この結論に至らなければならなかったとき、男はようやくそれを理解せざるを得なかった。
そのウーパールーパーの口から、いなくなったもう片方の頭が出ていることを。
なぜこんなことが起こってしまったのだろうか。
ともに過ごす日々が、彼の心に何らかの影響を与え、魔が差してしまったのだろうか。となれば、愛ゆえの犯行であろうが、もし、ただ空腹だったのだとすれば・・・
その数分前にあげておいた、彼の好物だったミミズはどこに消えたのだろう。
今日も執筆は進まなかった。
***あとがき***
とはいえ、ショックすぎて凹んでいます。
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