ぱん、ぱん、ぱんと拍手の音が聞こえてくる。

 ケン太が身を乗り出し、コロシアムを見おろしている。手を挙げ、何度も拍手をしていた。

「素晴らしい! 素晴らしい勝負だった! さすが最終決戦にふさわしい、闘いだ」

 勝はようやく立ち上がり、頭をふりつつコロシアムを後にした。茜が素早く側に近寄り、ふたり肩を並べて出口へと向かう。

「どうだね、美和子。最後に、ぼくと戦わないか? そして、この〝伝説のガクラン〟を手に入れたいとは思わないか?」

 美和子は首をふった。

「いいえ、そんなもの欲しくはありません。それより優勝賞金を頂きたいと思います」

 ケン太はうなずいた。

「そうか残念だな……。しかし、この大会は有終の美を飾ったことになって、ぼくは満足だよ」

「そうかしら?」

 ふいに響き渡った女の声に、ケン太はぎくりと身をすくませた。

「高倉ケン太さん、あなたは偽善者です!」

「だ、だれだ? どこから聞こえている?」

 ケン太はきょろきょろと周りを見わたした。

「ここですわ」

 ぎょっとケン太は背後をふり返った。

 飛行船のスクリーンにひとりの女が大写しになっていた。

 栗山千賀子であった。

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