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 ぞろぞろと各宿泊所からトーナメントの参加者が姿を現して、島の北端を目指す。

 全員の胸にはバッジが輝いている。銅色、銀色、そして金色のバッジ。

 みな、この島での戦いに勝ち抜いてきたつわものだ。

 男ばかりではなく、女もいる。北端を目指す彼らは、ちらちらとおたがいの胸に輝くバッジの数を確かめ、どいつがもっとも多く獲得しているか勘定していた。

 その中で、美和子と勝のバッジの数は圧倒的だった。

 昨日、風祭俊平のバッジを奪った勝は、美和子の数をうわまっていた。

 勝の隣には茜が元気良く足を運んでいる。

 彼女は美和子と太郎に気付いた。

 手を振り、太郎の側に近づいた。

 太郎はちらりと勝を見た。

 あれほどの傷が、いまはすっかり癒え、傷跡はもう薄皮がはっている。

「お兄さん、元気になったんだね」

 茜はうなずいた。

「そうなの。兄貴ったら、あんなに酷い目にあったのに、今朝になったらぴんしゃんしてんだから! ありゃ、処置なしよ。殺されたって、死ぬような人間じゃないわ。このトーナメントが終わらないと、家に帰るつもりにはならないわね」

 太郎は苦笑した。

 一緒に歩いていた美和子は、太郎の顔を覗きこんだ。

「太郎さんの笑うところ、初めて見ましたわ」

 彼女の言葉に太郎は耳まで真っ赤になった。

 茜もくすくす笑う。

「そうよねえ~、太郎さんって、いっつもしんねりむっつりで、笑う顔想像できないもん! でも、それなりに可愛いわ!」

 勝が唸り声をあげた。

「おい、お前らうるせえぞ! もっと真面目にやれ!」

 茜は肩をすくめ、舌をぺろりと出した。

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