レイハ、蓼、耀翔の三人について
ドタバタな食事が終わった後。レイハはベッドの上で、身体に毛布を巻き付けたまま正座していた。
(…………何故こうなった…………)
レイハの目の前には豪奢な椅子に腰掛けた、
右側の椅子に座り、本を片手にお茶を飲んでいるのが
そして左手側の椅子に腰掛け、蓼の横から本を覗き込んでいるのが
(…………で、ソレはどうでも良いが。何でこうなってるんだ…………)
この二人の個人情報など気にはならない。レイハにとってはゴミくず以上の価値すら無い、代物なのだ。生きる為の癖として相手の個人情報などを収集するのが当たり前になっている。その程度の事なので、覚えている価値すら無い。と言うのがレイハの中で落ち着いた見解だった。
(居心地、が……悪い……落ち着かない、早く……逃げ出したい、こんな所…………)
身体が落ち着かず我知らず、小刻みに揺らしてしまう。
元々一所に収まっているのは、苦手で、其処に人が居れば尚更、苦手意識が増長する。
そんなレイハの事情を知らず、二人は相変わらず何かを話している。レイハには訳の解らない話なので、手の打ちようが無い。
そうして時は刻々と時間と刻んでいった。
((居心地悪そうだな……))
一方仕事の話をしながらレイハの様子にも気を配っていた、
二人がこの間気紛れに立ち寄った奴隷オークションで、購入した少年レイハ。二人がこの少年について調べたのはそう昔の事では無い。現に今蓼が手にしている手記にはレイハの情報が修められている。
本名レイハ・クーヴェス・フォン・キリングストン。元は地方の寂れ掛かった村の子供で、十年来の子供だったらしい。初めは祝福され大事に大切に育てられたが、三歳の頃に開いた瞳を見て父を含めた村人が恐れ、庇った母親共々村から追い出された。その後暫く母親との二人きりの生活が続いたが、半狂乱になった父親がレイハを殺そうとした為、庇った母親が死に、困惑しながら必死に抵抗したレイハによって父親も亡き者となった。ソレはレイハが十歳になるかならないかの時の事だった。ソレからは独りでフラフラ各地を転々とし、日雇いの仕事で日銭を稼いで食い繋いできたらしい。瞳の色は琥珀色のコンタクトレンズでうまく隠し通してきたようだ。見た目は白銀の長髪を三つ編みして右側に垂らしており、反対側に一筋同じ長さの髪を垂らしている。右が
(詳しい所は、闇の中……か)
(扱い酷かっただろうね、あの様子だと……)
レイハはベッドの上で身体に毛布を巻き付けたまま、正座している。毛布を身体に巻き付けているのは、俺らがレイハに服を着る事を赦さなかった為だ。
身体中に醜い傷痕や痣が這い回っており、初めて見た時は俺も蓼もあまりの酷さに一瞬息が止まった。
レイハは俺らに傷を見られたく無かったのかもしれない。過去を無理矢理暴かれたく無かったのかもしれない。けどソレは無理な相談で。
((……可哀想な事、したなぁ……))
これからレイハが俺達の事を、信用するのは随分と先の事になりそうだ。まァ解り切っていた事だけれど。いざ身を持って感じてしまうと、とても遣る瀬無い思いに駆られる。
レイハは
信用出来ないって事もあるだろうけど、信用したいと思う他人は居なかったのだろうか。
そうやって他人を愛する事も、愛される事も知らずに、今迄生きてきたのだろうか。
ソレは悲しい事だ。ソレは辛い事だ。ソレは虚しい事だ。
その事を俺達は知ってる。だから俺達だけでも、レイハに『愛情』という名の道標を指して教えたい。独りで苦しむ必要は無い事を教えたい。レイハは必要な
だからもう……もう二度と自ら命を絶とうとしなくて良いのだと、どうかどうか気付いて欲しい。
レイハはそんな主二人の切実な願いに気付く様子もなく、静かにベッドの上に鎮座していた。
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