黒坂三波は、幽霊になりました。

マキハラさん

第1話

──死んだ。ただ今私、死にました。何で意識があるかって?自分でもよくわからない。ただ1つ仮定するならば、私は、幽霊になってしまったようだ。そう、あの貞〇とか、「お〇けなんてないさ」とか、あの幽霊である。……正直死んだことに実感が湧いていない。

私、黒坂三波がこのような状況になるはめになったのは、遡ること2時間前の話である。







青い空、白い砂浜、そして広い海。。最高。超パラダイス。……この状況を除けばだが。

私は、学校行事として2年生全体を対象とした臨海学校に来ていた。うちの高校・私立秀憲学園は毎年、こういう催し事を開くたび、コミュニケーション力をつけろだとか、交流を深めろだとか、そんなのばかりだった。私的にはあまり参加はしたくなかったのだが、中学からの友達である冬美が、どうしても一緒に、というので、、やむなく参加することになったのだ。まぁ、当の本人は海についた瞬間音速の速さでどこかに行ってしまったが。きっと今ごろ泳いではしゃぎまくっているのだろう。

そんな中、私は同じクラスの女子達に岩陰へ呼び出されていた(拉致られた、と言った方が正しいが)。彼女達は、クラスの中でもひときわ目立つ存在で、いわゆるリーダーグループ的な感じだった。私はそのグループの、いじめの標的となっていた。いじめと言っても、何かある事にいちゃもんをつけられたり、物を隠されたり、陰口を言われたりと、とても幼稚なものであったが。その場を離れたかったので、早く終わらないかなーなどと思っていると、そのグループのボス、優子が口を開いた。

「あんたさぁ、ほんっとうざいんだけど。海が汚れるのでお帰り願いますかぁー?」

……またか。私は、飛んでくる暴言の数々を、適当に左から右へと聞き流していた。

余裕があったのだ。だからこのような態度が取れた。その余裕が、すぐに絶望に変わるとも知らずに。

突然、優子が話すのをやめたかと思うと、私に向かってスタスタを足を進めた。ついに暴力も来るのか、と思った次の瞬間

──────優子は何の躊躇もなく、私を海に突き落とした。 私は、動けなかった。頭が混乱して、息もできず、どうすることも出来ずにいた。意識が朦朧としていく中、耳に悪魔のような声が飛び込んできた。

「あんたが水が怖いってこと、私が知らないと思ったァ?あなたの親切なお友達に聞いたら、すぐにおしえてくれたわよー。」

まさか、冬美が?ああ、でもそうだとしたら、合点がいく。何故私をどうしてもここにつれて来たかったのか、何故海についたらすぐどこかへ行ってしまったのか。……私といることで、冬美も標的にされていたのだ。冬美は、私を優子に売ることによって、自分の身の安全を確保しようとしたのだろう。なんだか、とても悲しかった。友達に売られたこともそうだが、何より、本当に友達と思っていた人に辛い思いをさせていたことが1番悲しかった。今更気づいてももう遅い。私は何度も何度も心の中でごめんなさい、と謝りながら、波に意識をさらわれて行ったのだった。


2話に続く




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