エロ。
たった二文字、口にすれば一秒もかからないこの言葉には、無限の夢が詰まっている。人類の、特に男性と呼ばれる人種にとって、それは人生を煌々と照らす太陽。男たちは今も昔も老いも若きもその眩い光に導かれ、輝きの一端を手中に収めようとこぞって手を伸ばしてはその身を焦がし、多種多様な失敗を繰り返す。
借りたマニアックなAVを伴侶に見つかって冷たい視線を向けられる。モバイルアダルトサイトの架空請求を本気で心配して相談した親に笑われる。会社のPCで見たエロサイトのバナーポップアップが止まらず、泣きついたパソコンに詳しい若手に呆れられる。
男は往々にして上記のような失敗談を持っている。本作「アーバンダッシュ!」の主人公も同様である。ゆえに本来、男たちは彼のことを笑えない。罪人の女に石を投げつける民衆に向かい、キリストは言った。「過去、一度も罪を犯したことのない者のみ、この女性に石をなげてよい」。その宣託に従えば、ほとんどの男たちは本作の主人公を笑う権利を持ってはいない。
しかし、笑える。
申し訳ないけれど、無条件で笑える。「馬鹿だなあ」と思う。他人の失敗を嘲笑うなど普通ならば決して褒められた行為ではないだろう。しかしエロに関してはそれが許される。語り部は自らの失敗談を笑い飛ばしてくれることを望み、読み手はその通りに笑い飛ばす。その関係に陰湿さや陰険さは微塵も存在しない。局所的に実現された世界平和がそこにはあり、だからこそエロは光放つ太陽なのだろうと、僕は改めて思う次第である。
なお、個人的にはタグに「スポ根」がついているのが滅茶苦茶笑えた。いや、それは違うだろ!面白いからいいけど!