ハロウィン・ウォー

@touka579

第1話

 ハロウィンとは、幼女がロリコンに『お菓子か悪戯か』の選択を迫る伝統的な風習である。世の紳士は、様々なおばけに扮した幼女と合法的に戯れることのできるこの日を収穫祭と呼び、神聖視していた。


 しかし、近年ではこの催しも失われつつあった。


「お兄さん、お兄さん。トリックオアトリート!」

「ぐはあぁぁぁぁっ!」

「同士ぃぃぃぃぃぃっ!?」


 昨今、幼女力の上昇に伴い、世のロリコンたちの精神が耐えられなくなってしまったのだ。きっと、生半可な紳士力では、今の幼女と相対することすら許されないのだろう。それほど、現在の幼女は破壊力(愛らしさ)抜群だった。


 幼女の前から急いで身を隠す紳士が一人。直視をさけるため、壁越しに幼女の気配を感知している。そこに別の紳士がまた一人現れる。彼らは二十一人で構成された集団――ロリコーンの二人だった。


「くそ! また同士がやられた!」

「ああ、これで何人目だ?」

「たしか、十九人はもうやられているはずだ」

「そうか。じゃあ、残りは俺とお前だけだな相棒」


 壁越しだが、しっかりと幼女の気配を感知することができる。彼女はおそらくこの二人を探しているのだろう。どうやら相手の気配を感知する力は、彼らに分があるらしい。しかし、この二人が彼女に見つかるのも時間の問題だった。


「ああ、同士。最初はロリっ子にお菓子を手で渡すだけの催しだと思っていたのに、とんだ誤算だぜ」

「そうだな。でも、見ろよ。アイツらの満足そうな顔。信じられないだろう? 死んでるんだぜ、アレ」


 我が性癖(しょうがい)に一片の悔いなし、と拳を突き上げる同士諸君の姿もちらほらと見受けられる。そんな彼らの勇姿に、二人は感動すら覚えていた。


「そろそろ、行くか。俺たちもあの幼女のもとへ!」

「ああ、どこまでもお供するぜ相棒!」


 夜の帳の降りた街を疾走する二人の紳士。そんな二人を見つけた幼女は満面に笑みを浮かべ、あの台詞を口にする。


「トリックオアトリート! お菓子をくれないと、悪戯しちゃう……ぞ!」

「「ぐはあぁぁぁぁっ!!」」


 こうして年に一度行われる催し――ハロウィンは幕を閉じた。その終わりは実にあっけないものだった。しかし、二人の紳士はこれで満足だったのだろう。その表情はまさに幸福に満ちているのだから。

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