第45話 ネクストシート
「と言う訳なんですが、リオレオン様は何かご存知ありませんか?」
結局、アイーナを説得する事ができなかったラズルは、彼女の膝の上に乗せられた状態で魔王リオレオンに元の姿に戻る方法を尋ねていた。
「ふむ……」
魔王リオレオンは己の鬣を撫でながらラズルの姿を見る。
「時にラズルよ、お前は我が何族であるか分かるか?」
「え?」
ラズルは困惑した。魔王である以上、リオレオンは魔族だ。
だがしかし、言われて見ればリオレオンが何族なのか分からなかったからだ。
獣人の様であるが、獣人と魔族は全く違う種族だ。
そして獣人は魔王にはなれない。魔族では無いからだ。
唯一考えられるのは混血だが、基本ラズル達の世界では2つの種族の特性が生まれてくる子供に同時に発現する事は無い。
魔族と獣人の子供なら、生まれてくる子供はどちらかの種族になるからだ。
「分からん様だな。ではラズルよ、ダンジョンコアの能力強化の項目を起動させるのだ」
「わ、分かりました」
ラズルはアイーナの拘束から逃れると、言われたとおりダンジョンコアの下へと向かう。
ダンジョンコアは大人が操作する事を考えたサイズの為、ラズルはホームセンターで購入したアルミ製の脚立を登ってダンジョンコアを操作する。
「はぅ、小さい子が大きい物を頑張って操作するのっていいわねぇ」
アイーナがどこかおかしい感想を洩らす。
「遺憾ですが同意します」
ソレに対しライナも同意する。
「ラズルよ、画面右下の▽を押すのだ」
魔王リオレオンが画面右下にあるマークを指差しながら指示する。
「これですか?」
魔王リオレオンの言葉に従ってラズルが▽マークを押すと、能力強化の項目画面が変化した。
「え?」
そこには人型の輪郭に様々な項目書かれた画面が表示された。
そして一番上の項目を読んだラズルが驚きに目を見開く。
「外見の変更!?」
驚くラズルに魔王リオレオンが頷く。
「然り。魔王の能力強化には2ページ目があったのだ! そして我のこのイカすライオンヘッドもその外見強化によって変化させたものなのだ!!」
「なっ!???」
想定もしていなかった機能のラズルはあっけにとられた。
一体何の為にある機能なのかと。
「おそらくは初期設定が若返りになっておったのだろう。ダンジョンコアは機密が多いゆえ、製造に関わる者も数が限られる。まぁ運が悪かったと思って諦めるのだな。フハハハハハハ!!!!」
あまりにもあっけない原因解明に脱力するラズル。
「なんだそりゃぁぁぁ……」
しかし気を取り直したラズルは、ダンジョンコアを操作して年齢を調整し直す。
「ともあれ、外見操作で年齢を調整すれば元の姿に戻れる訳ですね」
年齢操作設定を終えたラズルは、ダンジョンコアに操作を実行させようとした。
しかし、
「えい!」
突然横から入ってきたアイーナによって操作を解除されてしまう。
「ちょ! 何するんですか!?」
「あらー、だってその姿の方が可愛いじゃないの。だ・か・ら……」
アイーナは自分の胸の間に手を入れる。
「え? な、何を?」
そして胸の中からカードを取り出し、ダンジョンコアにかざした。
するとダンジョンコアの画面にマスターモードと呼ばれる画面が浮き上がる。
「それは!?」
「大魔王の娘権限で外見操作をロックっと、えい」
アイーナが何かしらの操作をしたらしく、ダンジョンコアに設定完了の文字が表示される。
「これでラズル君の外見設定は出来なくなったわ。ずーっと可愛いままよ」
うふふっとアイーナがラズルに微笑む。
「はぁぁぁぁっ!?」
ラズルは慌てて能力強化画面を開き、年齢の項目を操作しようとした。
だが、年齢項目を触ろうとすると【ロックされています】と表示され、操作が出来なくなっていたのだった。
「ちょ、ちょっとぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「じゃあこれから宜しくねラズルくん。私の事はアイーナお姉ちゃんって呼んで」
ラズルに新しい仲間が出来た。
「じゃ、我は大魔王様にアイーナ嬢がラズルの下で暮らす事を伝えに帰るか。おっとラズルの使い魔よ、アキヴァハラへはどのようにして向かえば良いのだ?」
そして、魔王リオレオンは秋葉原の町を堪能してから元の世界へ帰っていったのだった。お土産タップリ抱えて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます