霧散

霧散

 おれは、画面を見た。

 なんの画面かは分からない。とにかく、画面である。

「うひい」

 自分の胃がばーっと霧散する感覚が頭頂部を貫く。

「ひいひいひい」

 ひとたまりもなく、おれは後ろに控えているベッドに頭から飛び乗る。

 頭頂部が壁に衝突する。

 じんわりと首や背中まで伸びる衝撃を拍子に、またもや胃がばーっと霧散する。

「うひい。ひいひい」

 腕と脚が暴れる。おれはベッドに拳を叩きつける。

 ずもん。そう、ずもん、という音が響いたのだ。

 ずもん、という音が中耳から内耳、鼓膜までいやらしく愛撫する。

「ひゃあん」

 またもや、またもや胃が霧散し、おれは鳴いた。嘶いたのである。

 メスの腐ったオスネコの如く、情けなく鳴き散らかしたのだ。

「どひぃっ」

 おれはオスネコだったのかと思うと、またしても胃が霧散しやがった。

「うひ、うひ。ひいっ! ひひぃんっ」

 ごろごろとベッドの上をのたうち回ると、おれはベッドからずり落ちた。

 おれの身体は床に着陸した。

 胃が霧散。

 その瞬間、おれは頭頂部から首や背中、更には耳までを霧散した胃に舐め尽くされた。

 やはり、ひとたまりもない。

「ひゃああああんっ」

 惨たらしいほどに情けないケダモノの如き鳴き声。胃が霧散。

 おれは、嘶いた。




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霧散 @InkJacket13

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