デッサン ―ガラスの竜胆―

大竹久和

第一幕


 第一幕



 新校舎から第二校舎へと向かう二階の渡り廊下の途中で、僕はふと立ち止まると、窓の外へと眼を向けた。

 GW《ゴールデンウィーク》も過ぎたばかりの柔らかな春の陽光が、まだまだ冬の名残を感じさせる浅い角度で緩やかに、薄いガラス戸越しに差し込んで来ている。先月までは鮮やかなピンク色の花弁を咲き誇らせていた桜の木も、今では青々とした若葉に鬱蒼と覆われ、来月にもなれば幹の根元に毛虫が大量発生する事だろう。

 視線を少し下げれば、家路を急ぐ帰宅部の連中や、文化系の部室棟として利用されている旧校舎を目指す制服姿の学生達が、まばらながらも絶える事無く歩を進めていた。またそんな学生達の横手では、植え込みに囲まれた第二校舎一階の生物室の中庭で、生物担当の染谷そめや教諭が余念無く怪しげな植物の手入れをしている。

 高校生活も二年目に入った今では、それらも全て見慣れた、何の事は無いありふれた光景。僕は視線を下げた事で少しだけ鼻頭からズレ落ちた銀縁の眼鏡をかけ直すと、制服のブレザーのジャケットに少しばかりの暑苦しさを感じながら、第二校舎三階の美術室を目指して歩みを再開させた。

「こんちわー」

 ガラリと出入り口の引き戸を開けて入室した美術室内は、相も変わらずの、不思議で独特な匂いがほのかに漂う。油絵で使うテレピン油や彫塑の水粘土、それにデッサンで使う木炭の削りカス等が発するそれらの匂いにややもすれば心落ち着く懐かしさすら感じながら、僕は空いていた机の一角に無造作にカバンを放り出した。

「あ、笹塚先輩、あの、こんにちわ……」

 無駄に広い美術室内の一角。デッサンの実習課題のための台座に据えられたブルータスの石膏像の前で椅子に腰掛け、既に木炭デッサンの準備を始めていた一年女子の柏木早苗かしわぎさなえが、僕の素っ気無い挨拶に対して律儀な返事を返した。今のところ彼女以外には、室内に人影は無いらしい。

「ああ、柏木さん、こんにちわ。今日は随分と早いね。僕も六限が終わって、すぐに来た筈なんだけど」

「あ、はい、うちのクラス六時限目がいつもよりも早く終わったんで、ちょっと早めに来たんです……」

「へえ、そうなんだ。真面目だね、柏木さんは」

「え? あ、その、はい……ありがとうございます……」

 絵の具や木炭で汚れる事を防止するための作業用エプロンを制服の上から着込んだ、伏し目がちな後輩である柏木。彼女はよく観察していなければ気付かないほどのささやかな笑顔を口端に浮かべながら、褒められた事を素直に喜ぶ。

 語尾が消え入ってしまいそうなほど声が小さく、控えめで、どこかオドオドと怯えているようにも受け取れる柏木の喋り方。初めて出会った頃は、何かしらこちらの所作が彼女に恐怖感を与えているのかとも訝しんだものだが、どうやら単に気が小さくて、物怖じし易い性格なだけらしい。

 そして再び視線を自身の手元に戻した彼女は、書きかけのデッサン画を前に、木炭デッサンの準備を再開する。

 少しだけ寝癖が残った短髪のくせっ毛に、化粧っ気のまるで無い地味な顔立ち。それに第二次性徴の痕跡が一切見受けられないような小柄で痩せた、まだまだ中学生にしか見えない華奢な体格の持ち主である柏木。彼女は気が小さいだけでなく生来極めて人見知りな性分らしく、同じ美術部員であっても、よほど親しくならなければ眼も合わせてくれない。それでも入部したばかりの四月の頃に比べれば大分心を開いて接してくれるようにはなったのだが、腹を割って心の底からの本音をぶちまけてくれるほどの関係になるには、まだまだ時間が必要なようだった。

「じゃあ、僕も始めさせてもらうか」

 誰に言うでもなくそう呟くと、僕は美術室の奥に設置された部員用のロッカーへと歩み寄り、ナンバーロックを外して自分の名前が書かれた扉を開ける。そして中から木炭紙大の木製パネルと鉛筆や練り消しゴム等が詰まった金属製の缶、それに作業用エプロンを取り出してから、再び石膏像の前に戻った。

 ブルータス像の周囲には三脚の椅子と、その前にはそれぞれ一架ずつ、パネルを立て掛けるためのイーゼルが設置されている。更にその外側には五つの赤いカラーコーンが並べられ、それらに張り渡したビニール紐には一枚のコピー用紙が貼られており、そこには「この中には入らないで下さい 美術部」と書かれていた。普段の選択授業で美術室を利用する生徒に美術部の活動を邪魔されないための予防線だが、それでも時々、心無い生徒によって椅子やイーゼルや、場合によってはモチーフの位置が動かされている事は少なくない。だがとりあえず今日は幸運にも、イタズラをされている形跡は無さそうだった。

「よっこいしょと」

 作業用エプロンを着込んだ僕は石膏像を囲む三脚の椅子の内の中央、つまり柏木の左隣に腰を下ろすと、眼前のイーゼルに自身の木炭紙大パネルを設置した。パネルには木炭紙大に切られた画用紙が大きな目玉クリップでしっかりと固定されており、その表面には、描きかけの鉛筆デッサンの荒々しい筆致が踊っている。

「あ、柏木さん。僕もこれ、使わせてもらってもいい?」

「え? あ、どうぞ……」

 隣の椅子に腰を下ろした柏木は、デッサンに使う木炭棒の不要な芯の部分を『芯抜き』と呼ばれるドリル状の金属棒で穿り出すと、それをコピー用紙を折り紙の要領で折って作った小さな紙のゴミ箱の中へと捨てていた。なので僕も彼女の了解を得て、そのゴミ箱に、自分の鉛筆の削りカスを捨てさせてもらう。この紙のゴミ箱の折り方は、僕が先月、彼女に教えてあげたものだ。そして僕は去年、それを一学年上の現部長から教えてもらい、現部長は更にその上の代の部長から教わったと言う。どうやらこのゴミ箱の折り方は、この美術部に代々伝わる伝統の様なものらしい。

 ちなみにこの折り紙のゴミ箱は、デッサンが全て終了した後に、ゴミ箱ごと丸めて捨てられる。

「どう? 柏木さん、デッサンの進み具合は。今描いてるのは今日で終わりだけど、もう完成が見えてきた?」

「え、あ、その、まだ全然形になってくれなくて……。シルエットをなんとか整えようとしてるんですけど、それも上手くいかなくて……」

「そっか。まあ、仕方無いよ。柏木さんが本格的に木炭デッサンを始めたのは、先月ウチに入部してからなんでしょ? 僕も去年の今頃は、石膏像のシルエットなんか全然掴めてなかったからね。ましてやマッスが意識的に捉えられるようになったのなんて、最近になってからようやくだもん」

「そうですか……あたしも早く、笹塚先輩みたいに上手くなりたいです……」

「いやいやいや、僕もまだまだ全然下手糞だから。もっと頑張らないと、来年の芸大現役合格は遠いなあ」

「そんな事ないです……。笹塚先輩、充分に上手いですから……」

 僕と柏木は、一つの小さな折り紙のゴミ箱を間に挟んで木炭と鉛筆を削りながら、どうと言う事の無い会話を続けた。柏木の口数は決して多くはないが、それでも以前に比べれば、随分と饒舌に喋ってくれるようになった方だ。それに彼女も決して、人と喋る事自体が嫌いな訳ではないらしい。その証拠にこうして言葉を交わしていると、その素朴だが可愛らしい顔に、控えめながらも穏やかな笑顔を浮かべてくれる。それに心なしか、少しだけ頬を赤らめているように見えなくもない。

「さて、と」

 削り終えた鉛筆の束を左手に掴んで、僕は眼前のパネルに固定された画用紙をジッと見据える。そこに描かれているのは、右斜め下から見上げた構図の、ブルータス像の全容を捉えた描きかけの鉛筆デッサン。

 ブルータス像は比較的デッサンがし易い、初心者向けとされる石膏像だ。僕の作業の進捗具合としては、前日までの段階で全体的なシルエットと陰影はほぼ捉え終えていたが、まだ細部の形状が定まっておらずに、エッジがボンヤリとしている。それに目を細めて観察してみれば、マッスとしての一体感がまだまだ弱い。おそらくはこのまま仕上げても、それほど高い評価を得る事は出来ないであろう。だがたとえ失敗作であっても、一枚一枚完成作を積み重ねて行くのが上達への近道である事をこの一年間で思い知らされてもいるので、現状の最善を尽くすべく僕は手を動かし始めた。

 前日までの、6Bから2Bの柔らかな鉛筆で撫でるように描き出したおおまかな陰影を、今度は画用紙に立てるように当てたHBから3Hの硬い鉛筆でしっかりと固着させる。またそれと同時に、練り消しゴムも利用して、細部の光と影を丹念かつ緻密に描き込んで行く。手を休める事無く、地道な作業を繰り返して。

 すると次第次第に、目鼻立ちや服の皺が明瞭になって行く、画用紙上のブルータス像。隣に設置されたイーゼルの前では僕と同じく柏木が、自分のパネルに固定された木炭紙に向かって、木炭棒を一心不乱に走らせている。その眼は真剣そのもので、彼女の純真さを象徴しているかのようだ。

 やがて気付けば、鉛筆と木炭棒が紙の上を走るシャッシャッと言う小さな音だけが、無駄に広く静かな美術室内に軽快なリズムを奏でていた。

 そんな静謐な空間の中において、本人は半ば無意識に行なっている癖なのかもしれないが、木炭デッサンで消しゴム代わりに使う古く硬くなった食パンの小さな切れ端を、柏木は時々自分の小さな口へと運んではモソモソと咀嚼している。そのつまみ食いをする仕草はリスかハムスター等の小動物を連想させて、僕は素朴な可愛らしさを感じると同時に、何だかホッと和んでしまうのだった。

「こんにちわー」

「おーす」

「こんちーす」

 唐突に廊下と繋がる引き戸がガラリと開かれると、つい今しがたまで静寂に包まれていた美術室内に、ややもすれば耳喧しくて礼儀正しいとは言えない挨拶が三つ重なってこだました。それと同時にドカドカと連れ立って入室して来たのは、カバンを抱えた制服姿の三人組の女子高生達。その内の一人、綺麗にセットされた肩までの長さのふわふわの栗毛をなびかせた少女はこちらに近付いて来ると、僕の背にもたれかかるようにして、その柔らかな手をそっと肩の上に置いた。そして彼女は頬がくっ付くかと思うほど僕の耳元に顔を寄せてから、小鳥の様に澄んだ声で囁く。

「へえ、すごいすごい。上手いじゃん、笹塚くん。それに、柏木さんも。二人とも今日も真面目に部活に励んで、感心しちゃうな、あたし」

 その言葉と同時に吐き出された彼女の甘い吐息が、僕の鼻腔を優しくくすぐり、えも言われぬ快感をもたらす。香水か何かでも使っているのか、それとも僕が知らないような高級なシャンプーの芳香なのか、ややもすれば不自然なほどに良い香りが、彼女の全身からほのかに漂っていた。そして女生徒から物理的に急接近された僕は少し動悸を早めて顔を赤らめながら、謙遜の言葉を慌てて漏らす。

「あ、芹沢さんこんちわ。いや、そんな上手いなんて事、全然ないよ。それに僕はただ部活をしているだけで、そんな感心されるような事は……」

「それが偉いんだって。あたし達には、とても真似出来ないからさ」

 そう言うと、クスクスと妙に可愛らしく、栗毛の少女は笑う。その天使の様な愛くるしい笑顔は、可憐と言う他に例えようが無い。

「おーい、芹沢ってばー。今更そんな奴にお世辞なんか言ってないで、早くこっちに来なってばー」

「そうだよ芹沢さん。そんなつまんない真面目くん達なんかさ、放っとけばいいんだよ」

「はいはい、ちょっと待ってね」

 残り二人の少女が、僕に対して随分と失礼な物言いをオブラートに包もうともせずに、栗毛の少女を呼んだ。そして合流した三人は、美術室の一角の空いた机にカバンを並べると、空いていた椅子に腰掛けて我が物顔で陣取る。

 ふわふわの栗毛の少女の名は、芹沢胡桃せりざわくるみ。その均整の取れた、大人びていながらも幼さを残した愛くるしい容姿はテレピン油の匂いが漂う美術室には場違いなほど華麗であり、彼女の笑顔を見て心を奪われない者は、この世に存在しないのではないだろうかとすら思わせる。しかもその愛らしさは外見だけにとどまらず、人当たりも柔らかで礼儀正しく、教師からの評価も高い。

「芹沢、ほらこれ、この前言ってた新発売のヤツ。ちょっと辛いけど美味いからさ、食べてみなよ。ほらほら」

 そう言って自身のカバンの中からハバネロ味のスナック菓子を取り出したのは、ろくに手入れもされていないボサボサの長髪を無造作に後頭部でひっつめた、度の強い黒縁眼鏡の少女。菊田秋桜きくたこすもすと言う一風変わった名前の彼女は他の二人に比べると妙に背が高くて痩せぎすで、特に首が不自然に長く、その体型は少しばかりアンバランスなシルエットをしている。うら若き女性に対してこんな事を言うのもなんだが、僕はその姿を見かける度に、交尾の後に雄を食い殺す雌カマキリを連想してしまって仕方が無い。

「そんな事よりも芹沢さんさ、今日は昨日言っていた例の新刊持って来たから、読んで感想聞かせてよ。もう、これだけのためにわざわざ池袋まで行った価値もあるくらいの掘り出し物なんだからさ」

 そう言って芹沢に手招きしている、先程僕と柏木をつまらない真面目くん呼ばわりした銀縁眼鏡にソバカス面の小柄な少女の名は、柳柚子やなぎゆず。彼女はカバンの中から漫画専門店の紙袋を取り出すと、それを芹沢に向かって、嬉しそうに差し出す。いや、差し出すと言うよりも献上すると言った方が正しいほど、その手つきは妙に芝居がかっていてうやうやしい。

「えー、ちょっと待ってよ菊田も柳も。今これのイベントを、ちゃちゃっと終わらせちゃうところだからさ。もうちょっとで、レアガチャ回せそうなの。だからもうちょっと、もうちょっとだけ待ってて」

 菊田からはスナック菓子を、柳からは漫画専門店の紙袋を勧められた栗毛の少女、芹沢。だが彼女は自身のスマートフォンを、そのか細くも流麗な指先で弄りながらそう言って、二人を制した。

「あー、駄目だ。星3のカードしか出なかった。やっぱり課金ガチャじゃないと、レアは狙えないかなー。でも課金し始めちゃうと、切りが無くなっちゃうからねー。今月もお小遣い、厳しいし」

 絵に描いたように残念そうな表情でそう言うと、芹沢はスマートフォンの電源を落として、制服のポケットへと納めた。最近の彼女は世界中の実在する戦車を美少年に擬人化したカードを集めるスマホアプリにご執心らしく、暇があればスマートフォンをポケットから取り出し、熱心に弄っている。

「それじゃあさ、柳のそれ、さっそく見せてよ。それ、あれでしょ? この前のイベントで出た新刊なんでしょ?」

「そうそう、地方のオンリーイベントだったから行けなくってさ。しかもそれが書店委託でも残り三冊だったから、もうちょっと遅かったら手に入んないところだったのよ。ラッキーだったね、ホント」

 そのソバカス面に勝ち誇ったかのような笑顔を浮かべた柳から、漫画専門店の紙袋を受け取る芹沢。果たして彼女がその紙袋から取り出したのは、判型は大きいくせに妙に薄い、漫画の本だった。どうやらそれは『同人誌』と呼ばれている自費出版の漫画冊子らしいが、残念ながら僕は、その内容に関してあまり詳しくは知らない。過去に一度だけ芹沢からその中身を半ば強引に見せられた事もあったが、端的に言ってしまえばそれは、ホモセクシャルを主題とした女性向けのエロ漫画だった。

 その『同人誌』と言う呼称に、国語や歴史の授業で習った明治の文豪達の手による『白樺』や『アララギ』等しか連想出来なかった自分にとってそれは、結構なショックだった事を今更ながらに思い出す。だが何にも増してショックだったのは、勿論僕も人の事を言えた義理ではないが、同世代の女子もまたエロ漫画を読むのだと言う事実に他ならない。特に芹沢の様な眉目秀麗な美少女が進んで愛好しているともなれば、尚更だ。この事実を、陰ながら彼女に想いを寄せている美術部員以外の男子生徒達が知ったとしたら、果たして彼らはどのような顔をするのだろうか。

 そんな同人誌を興奮気味に読みながら、芹沢と菊田と柳の三人は、楽しそうに談笑している。彼女達の様な趣味の女子をその界隈では『腐女子』と呼ぶのだそうだが、その生態を観察する限り、僕とはあまり相容れそうにない趣味だと言える。なので彼女達三人は僕と同じ二年生の美術部員であるにもかかわらず、その接点は、驚くほどに少ない。互いに挨拶を交わす事も稀なほどの疎遠さだ。

「なあ柏木ー。柏木もさ、ホントはちょっとくらい、こう言うのに興味があるんじゃないの? 毎日毎日そんな糞真面目に部活ばっかりやってないでさ、たまにはこっちに来て、一緒にダベらない?」

 ひっつめ髪の菊田が、不自然なまでに胸元をはだけた美少年が表紙に描かれた同人誌をこちらに向けながら、僕の隣に座る柏木に向かって誘いの言葉をかけた。だがその嘲笑混じりの口調と表情は本気で彼女を勧誘している訳ではなく、真面目に部活動に励む柏木をからかっているのが、あからさまに見て取れる。

 当然だが気の小さな柏木は何も言い返す事が出来ないまま困惑した表情で俯きながら、オドオドと怯えていた。

「柏木さん、相手にしなくていいから」

 僕は菊田達には聞こえないように小声で囁き、困惑する柏木に助け舟を出した。すると柏木はチラリとこちらに目線を向けて、穏やかに微笑んで見せる。その素朴な笑顔は、芹沢の見せる天使の様な華やかな笑顔とはまた違った純粋な可愛らしさに満ちており、この大事な後輩を失いたくないと僕は心から願う。

 ここで改めて、僕は広い美術室をぐるりと見渡して深く嘆息した。

 一つの美術室のこちらでは淡々と受験対策の課題の石膏デッサンが描かれ、あちらでは腐女子達がスナック菓子を摘みながら同人誌を回し読みして談笑すると言う、極めて対極的な人間模様が繰り広げられている。そう、この美術部の活動は今現在、大きく二つに二分されているのだ。

 これら二つの勢力に呼称を付けるとすれば、僕や柏木の様な美術大学の入試合格を目標に部活動に励む方が美術受験系部員で、芹沢達の様な漫画やイラストを愛好して美大受験等は一切考えていない方を漫画系部員とでも言うべきだろうか。そのどちらが良いとか悪いとか言うつもりは僕には毛頭無いし、決して敵対していると言うほどにまで、両者の関係は険悪とは言えない。だがこの二者が、一つの瓶に入れられた水と油の様に互いに混ざり合う事無く共存しているいびつな状況が、今のこの千葉県立東柏台高等学校美術部の現状だ。

 もしも美術部とは別に漫画研究会でも存在すれば、もしくは両者に跨って仲を取り持つ人物が存在すれば、こんな事態にはならなかったのかもしれない。だが残念ながら、少なくとも今現在において、その選択肢は存在しなかった。

「うぃーす」

 僕が部の現状を憂いていると、また唐突に廊下と繋がる引き戸が開き、今度は野太い男の声が耳に届いた。

 後ろ手に引き戸を閉めながら入室して来たのは背の高い男子生徒で、彼はズカズカとこちらに歩み寄ると、デッサンに励む僕の背中をバンバンと叩きながら口を開く。

「よう、なつめちゃん。今日も部活動、頑張ってるね。それに柏木さんも頑張ってて、感心感心。真面目な後輩がいて、俺は嬉しいよ」

 僕の背中に続いて柏木の肩も優しく叩きながらそう言った長身の男に、僕は唇を尖らせて抗議する。

「韮澤、その「なつめちゃん」て呼び方やめろって、何度も言ってんだろ? それにいくら後輩とは言え、あんまり女の子にベタベタ触るもんじゃないぞ? いつかセクハラで訴えられるからな、お前」

「おー、怖い怖い。へいへい、分かった分かった、分かりましたよ。柏木さんは、お前には懐いてるからね、なつめちゃん」

 抗議したにもかかわらず、二度に渡って僕を不本意な呼び名で呼んだ長身の男を、僕は練り消しゴムを投げ付けるフリをして追い払う。追い払われた男は美術室の反対側に陣取った腐女子三人組に混じり、やがて自然と彼女らの談笑に加わった。

 長身の男の名は、韮澤蘭造にらさわらんぞう。クラスこそ違えど僕と同じ二年生で、数少ない男子部員同士として、それなりに仲は良い。だが韮澤は一年の頃から特に美術部員らしい活動もせず、かと言って名義を貸しているだけの幽霊部員と言う訳でもない、中途半端で宙ぶらりんな立ち位置をキープし続けている不思議な男だ。体格は良いのに運動系の部にも所属せず、かと言って毎日必ず部室に来る訳でもなくフラフラとしている彼の真意は、付き合いが始まって一年が経過した今でも杳として掴み切れない。一応分類上は彼も漫画系部員と言う事になるのだろうが、特に漫画やイラストを描いている姿も見た事は無かった。

 そして韮澤が呼んでいたように、僕のフルネームは、笹塚棗ささづかなつめ。「なつめ」と言う名前の語感が女の子っぽいので、昔からその名で呼ばれるのが気恥ずかしくて仕方が無い。特に中学生の頃に、当時のクラスメイト達全員の前で実の母親から「なつめちゃん」と呼ばれた時は顔から火が出る思いで、今でも軽いトラウマだ。なので親しい友人達からも下の名前で呼ばせた事は無かったのだが、韮澤だけは何度抗議してもその名で呼ぶのをやめようとせず、僕をからかい続ける。

 さて、こうして美術室には男二人に女四人、二年生五人に一年生一人と、最後の一人を残して美術部員の全員が集まった。そして残る一人を待ちわびていた僕の心を見透かすかのように、前触れも無く引き戸がカラリと軽快に開いて、その人が姿を現す。

「こんにちわ」

 端正だが物腰柔らかな、女性の声。その声の主は淀み無い足取りでツカツカと美術室内に足を踏み入れると、出入り口から最も近い位置の椅子に腰を下ろしていた僕に、背後から優しく声をかける。

「笹塚くん、こんにちわ。どう? 今日のデッサンの調子は」

「あ、橘先輩こんにちわ。えっと、まあ、そこそこに描けてます。なんとか、それなりに」

 情け無くも、少しばかり緊張で呂律が回らない僕。

「こんにちわ、柏木さん。今日もちゃんと来てくれたのね。一年生が頑張ってくれると、私も部長として嬉しいな」

「あ、橘先輩、その、こんにちわ……。あたしも喜んでもらえたら嬉しいです……」

 僕に続いて、隣に座る柏木とも仲睦まじく挨拶を交わした女生徒。彼女は美術部唯一の三年生にして部長を務める、橘桜たちばなさくら先輩。その凛とした佇まいを見せる長身痩躯のシルエットは歳相応以上に大人びて見え、流れる墨の様に流麗な腰まで伸ばしたストレートの黒髪の美しさも相まり、ややもすればその立ち居振る舞いに神々しさすらも感じさせる。ふわふわの栗毛がトレードマークの芹沢が天使の様な愛らしさだとすれば、こちらは天女の様な壮麗さとでも表現すべきだろうか。とにかく橘部長の見目麗しさと柔らかな物腰は、僕の心を鷲掴みにしてならない。

「菊田さんに柳さんに芹沢さん、それに韮澤くんも、こんにちわ。五月に入ってから大分暖かくなって来たけど、皆、体調を崩したりしてない?」

「あ、はい」

「いえ、別に」

「いや橘先輩、俺は全然大丈夫ですよ。見かけ通りに身体だけは丈夫ですから、風邪も滅多に引きませんし」

 改めて橘部長から挨拶された漫画系部員達はそれぞれ、気の無い返事を返す。そんな中でも韮澤だけはそれなりにコミュニケーションを取ろうとしているのかもしれないが、菊田と柳の二人などは、殆ど機械的に無難な返答をしているに過ぎない。更に芹沢に至っては、普段の彼女の人当たりの良さからは想像も出来ない事だが、自身のスマートフォンをわざとらしく弄っているフリをして完全な無視を決め込んだ。やはり水と油は、どうやっても混ざり合わない性質らしい。

 だが当の橘部長はそんな芹沢の不遜な態度を気に留める様子も見せず、悠々と美術室を横切ると自身のロッカーを開けて描きかけのデッサンが貼られたパネルを取り出し、それを僕の右隣に設置されたイーゼルに立て掛ける。そして僕や柏木と同じように作業用のエプロンを着込むと、襟紐に挟まれたその長い黒髪を、両手でおもむろに掻き上げて見せた。ふわりと微かに良い香りが漂うのと同時に、一瞬だけ露になった彼女の白く綺麗なうなじと後れ毛を目にして、僕は思わずドキリとする。

「えっと、その、橘先輩、今日は遅かったですね」

「ええ、五・六時限目は三者面談だったから、それがちょっと押しちゃってね。まだ五月なのに、もう三年生は受験の準備を始めろってプレッシャーで潰されちゃいそう。もうちょっとくらい、最後の高校生活を楽しませてくれてもいいのにね」

「でもウチみたいな進学校じゃ、美大受験をする生徒なんて殆どいないでしょう? 今年は橘先輩一人だけなんじゃないんですか?」

「そうそう、今日の三者面談もおかしくってね。担任の村上先生は美大の受験に関して何にも知らないもんだから、結局あたしが受験したい芸大と美大の名前を列挙するだけで、先生らしいアドバイスなんて何にも無かったの。顧問の椎名先生の言う事を良く聞いて頑張りなさいって言われて、それでお終い。あっと言う間に終わっちゃった」

 僕の問いかけに橘部長は、クスクスと笑いながら答えた。

 今しがた僕が言った事は紛れも無い事実で、自慢ではないが我が東柏台高等学校は県下トップクラス、全国でも指折りの有名進学校だ。そんな進学校の中において文系でも理系でもない美術大学を受験したいなどと言い出す異端児は極めて稀な存在であり、三年生では橘部長、二年生では僕、一年生では柏木と、今のところは全校生徒でも僅かに三名しか在籍していない。そんな例外的な存在に対して担任教師が何の指導をする事も出来ず、部活の顧問に責任を丸投げしたのも、至極当然と言えるだろう。

「さ、そんな事はどうでもいいから、今はこっちに集中しましょ。今回の課題は今日で完成させなきゃいけないんだから、急がなくちゃね。笹塚くんも、柏木さんも」

「はい、橘先輩」

 橘部長の言う「こっち」とは勿論、眼前の石膏デッサンの事に相違無い。僕も柏木も気を取り直してブルータス像に向き直り、そして準備を終えた橘部長もまた、イーゼルに立て掛けられたパネルに向かって真剣な表情で鉛筆を走らせる。

 未だ素人同然の僕なりに講釈を垂れさせてもらうと、デッサンとは、非常に単純明快な作業だ。絵画の世界における、基礎中の基礎と言ってもよい。だがそれだからこそ、その奥もまた深く、難しい。

 必要な事は自分の眼が捉えている眼前の光景を、ただ純粋にそのままありのままに、紙の上へと描き出す事にある。そこには抽象画やデザイン画では重要とされる個人のセンスや個性と言った要素は、一切必要とされない。むしろそれらを加味する事は、デッサンの世界では禁忌タブーとされる。

 ただ目の前にあるモチーフを、見た通り正確に、それがそれであると誰が見ても分かるように過不足無く描き出す。その陰影も色彩も、重量感も質感も、肌触りや温度までをも、その全てがありのままに感じられるほど正確に描き出す事が、デッサンには求められているのだ。日本語で『デッサン』が『素描』と訳される所以も、それが単純な行為でありながら、無限の奥深さを有する事を表していると言えるだろう。

 僕達美術受験系部員の三人は無言で、鉛筆を、木炭棒を、紙の上に走らせる。シャッシャッと言った紙と炭素が擦れ合う音が次第に一定のリズムとなり、部屋の反対側から聞こえて来る漫画系部員達の談笑やスナック菓子の咀嚼音が、次第に脳から遮断され始めた。集中力が、否応にも増して行くのを感じる。

 鉛筆デッサンに使用される鉛筆のメーカーは数多く存在するが、日本国内で主に使用されているのは、国産の三菱社製かドイツのステッドラー社製だ。単純に比較する事は難しいが、三菱社製の鉛筆は色味がやや赤っぽく、これを使用すると全体的に柔らかな風合いのデッサンが出来上がる。それとは対照的にステッドラー社製の鉛筆はどちらかと言えば青味がかった色調で、結果としてその成果物は、やや硬めな印象を与えるデッサンとなり易い。勿論その差は非常に僅かなもので、よほど眼が肥えた人間でもなければ、どちらも白黒モノトーンの諧調にしか見えないだろうが。

 そしてそれらの特徴を踏まえた上で硬めの色調が好きな僕はステッドラー社製の鉛筆でほぼ全てを仕上げる一方、橘部長は柔らかめの三菱社製をメインに据えながら、細部のシルエットを締める際の硬い鉛筆にはステッドラー社製を愛用している。

 画用紙に鉛筆を走らせながらチラリと横に目を遣れば、隣に座る柏木もまた、真剣な眼差しで木炭棒を木炭紙に走らせていた。当然だが鉛筆と同じく木炭棒も、原料である木の種類や太さによって、色調や印象が変わってくるらしい。だが残念ながら、僕は木炭デッサンに関してはさほど詳しくはない。

 美大入試の実技試験の内容は、受験する学部や学科によって、大きく異なる。橘部長の志望する日本画科や、僕が志望するデザイン科の実技項目は鉛筆デッサンが主流だが、柏木が志望する油絵科は木炭デッサンが主流だ。故に同じブルータス像をモチーフにした石膏デッサンであっても、僕達と柏木とでは、使用する画材が異なる。それにデッサンの成果物に対する評価の基準も学科によって若干異なっており、シルエットの正確さや細部の精緻さに重きを置く日本画科やデザイン科や工芸科に比べると、油絵科や彫刻科は全体としての量感や質感、つまりマッスをいかに捉えられているかが重視される傾向にある。

 それら、自分達が目標とする実技試験合格に要求される諸々の要素を頭の片隅に置きながら、僕達は只々一心不乱に、熱意と技術を紙の上に叩きつけ続けた。そんな僕達を、美術室の壁一面に張られたデッサン画に描かれたマルスやシーザーやアリアスと言った石膏像達が、まるで見守っているかのように取り囲む。


   ●


「さて、と。なんとか出来上がったみたいだね、三人とも」

 美術部顧問の椎名桐人しいなきりひと教諭が腕組みをしながらそう言うと、美術室の壁沿いに並べられた僕と橘部長と柏木のデッサン画を、まるで値踏みをするかのように順繰りに睨め回す。その顔には柔らかな笑顔を浮かべているが、眼光だけは真剣そのものだ。

 浅黒く日焼けした筋肉質な体型と、アフロと言うほどではないがモジャモジャと膨らんだ天然パーマの髪型が特徴的な椎名教諭は彫刻科出身の美術教師だが、授業時間以外はあまり美術室には居ない。では普段はどこで何をしているのかと言えば、学校側から正式な許可を得てアトリエとして使わせてもらっている旧校舎の一階で、自身の彫刻作品を造るのに心血を注いでいる。

 そんな椎名教諭が珍しく放課後の美術室に赴いているのは、僕達三人が描き終えたデッサン画に、顧問であると同時に美大受験経験者としての評価を下すために他ならない。いわゆる、講評と言うやつだ。

「どうですか、椎名先生」

 橘部長が、椎名教諭に作品の出来を尋ねた。

 窓の外では既に陽が傾いて宵闇が迫り、流石に教師の前とあってはスナック菓子も同人誌もカバンの中に隠した漫画系部員達は、美術室の奥の一角に集まって特に興味も無さげにデッサンの講評を横目で眺めている。

「そうだね、やっぱり橘くんのはだいぶん全体の量感が捉えられるようになって、このまま続けていれば入試でもかなりいい評価を貰えるんじゃないかと思うな。でも日本画は細部の正確さが評価の基準になり易いから、その辺りをもっと詰められるなら、その方がいいよね。まあ僕は残念ながら彫刻科出身だから、あまり細かく指導は出来ないけど。で、笹塚くんのだけど、うん、ここ最近グッと全体のシルエットが正確に捉えられるようになったと思うよ。あとは全体的に色が薄めで量感が足りなくなりがちな癖を直せれば、もっといいね。描き始めの段階で、もっと濃い鉛筆を大胆に使えばいいんじゃないかな」

 教え子の上達ぶりを喜ぶかのように微笑みながら、椎名教諭が評価を下した。満点には程遠いものの褒められた僕は嬉しくて、思わず拳を握リ締めて小さなガッツポーズを取る。すると隣に立っていた橘部長が、クスリと小さく笑った。どうやら無意識のガッツポーズが見られていたらしく、僕は少し気恥ずかしくなって握った拳を不自然に開くと、パタパタと振って無理矢理に誤魔化す。

「さて、それで柏木くんのだけど、ね。うーん、少しずつ確実に良くなって来てはいるんだが、最大の問題なのはやっぱりまだ、時間内に完成させられていない事かな。まあ、時間配分の難しさは最初の頃は必ず皆経験する事だからね。少しずつ慣れて行けばいいと思うよ、まだ一年生なんだし。それにその点さえ除けば全体の量感も上手く掴めているし、構図もまとまってきているしね、うん」

 少しばかり辛辣な評価を下されて、僕の隣に立つ柏木は申し訳無さそうに頭をポリポリと掻いて俯いた。確かに柏木のデッサン画は石膏像の細部を描き込み切れておらず、時間内に完成させたとは言い難い出来である。だが椎名教諭も言っている通りに、最初の頃は誰しもが、課題の時間配分には苦労させられるものなのだ。当然かく言う僕自身もまた、去年の今頃は未完成作を量産してばかりだったために、今の柏木に当時の自分を重ね合わせて少しだけ懐かしく思うと同時に感慨深い。

「でも私、柏木さんのデッサン、好きですよ。描いた本人の見かけによらず大胆な構図で、石膏像の存在感を描いてやろうって意思と言うか、気概と言うか、そう言うものが感じられるところとか、すごくいいと思います」

「あ、え、あの、ありがとうございます……」

 不意に橘部長に褒められて、柏木の表情がぱあっと明るくなった。そんな後輩の笑顔に、当の橘部長も嬉しそうに穏やかな微笑みを返す。

「そうそう、まだ最初の内は細部の描き込みなんかよりも全体のシルエットと量感を捉える事の方が大事なんだからさ、どんどんガシガシ描いてっちゃった方がいいって」

 僕もまた自分のデッサンの出来は棚に上げて、偉そうに後輩を励ましてみた。すると普段はあまり感情を表に出さない柏木が、本当に嬉しそうに小さく笑う。

「そう言う笹塚くんのデッサンも、私、すごく好き。最近はシルエットがすごく綺麗になって、モチーフとしての石膏像を捉える眼が一段肥えた感じがするの。見ていてすごく、かっこいいかなって」

「え? いや、そんなかっこいいなんて、僕なんてまだまだで、橘先輩に比べたら全然下手糞ですから……」

 憧れの橘部長から不意に褒められた僕は嬉しさのあまり、やや呂律が回らなくなりながら、謙遜した。気恥ずかしさで赤面しているのが自分でも手に取るように分かると同時に、それがまたかえって気恥ずかしさを増し、更に赤面する。そんな僕を見てまた、橘部長はクスクスと可憐に笑う。

「あたしも好きです……。笹塚先輩のデッサン……」

 頬を赤らめながらも消え入りそうな控えめな声で、柏木もまたそう言って僕を褒め殺す。ますます気恥ずかしくなった僕は視線を泳がせ、ふとその視線が、斜め後ろから僕達の講評を眺めている漫画系部員達の一団に向いた。

 そこに垣間見えたのは、あからさまに不機嫌な表情をこちらに向ける芹沢の姿。

 しかし僕と眼が合った事に気付いた彼女は、次の瞬間にはいつもの天使の様な愛くるしい笑顔へと、その表情を変貌させた。だが芹沢が僕達を睨み据えていたのは確実で、見間違いとは到底考えられない。一体何が彼女をそんなに不機嫌にさせたのだろうかと訝しみながら、僕は再び視線を、自分達のデッサン画へと戻す。

 窓の外では宵闇が更に濃くなり、穏やかな春の風が優しく吹いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る