第2節 学校へ行こう!

第14話 シロのお願い

 1100年前、突如天使が悪魔に対して宣戦布告を行い、両種族は戦いを始めた。100年続いたこの戦争は後に百年戦争と呼ばれるようになった。終戦後、天使も悪魔も無干渉の構えを取り一切の接触を絶った。

 そして現代、天使が住む天界と悪魔が住む魔界の狭間の世界、境界にて魔王の娘シロと神の弟クロがひょんな事から出会った。この物語は、天使と悪魔の、小さな恋の物語、である。


「クロ、大事な話があるの」

「大事な話?」

 ある春の日の昼食どき、少女は向かい合う少年に話しかけた。クロはご飯を掻き込みながら答える。

「実は明日、私の家臣がここに来るの」

「……もぐもぐ……ふ~ん……よかったじゃん」

 彼はたくあんに箸を伸ばす。

「……そりゃ久し振りに会えて嬉しいけど……クロわかってる?」

「もぐもぐ……何を? カリッ」

「クロは天使なんだよ。明日来るのは当たり前だけど悪魔。って事はつまり、クロの素性がバレちゃいけないって事」

「どうして?」

 またしても彼は軽い返事をよこす。

「どうしてって……天使と悪魔は敵同士だから」

 調子狂うなあ……とシロは思った。

「でも、俺もお前も、お互いがお互いの事知ってるけど別に喧嘩なんかしてないぞ」

「そ……それはそうだけど……」

 それは私があなたを好きだからで……。

「それは例外というか、大概の人達はどっちかっていうと嫌っている感じだから……それにフェイス……明日来る私の家臣は特に……」

「わかったわかった」

 すると彼は突然話を理解したかのような声を出した。

「まあ基本はそうだよな。さすがにそういうのは俺にもわかるよ。で? 俺にどうしろって? 天使である事を隠せって?」

「そ、そう」

 シロは申し訳無さそうに答えた。

「て事は人間のフリをしろって事だろ?」

「まあそうなるね」

「めんどくせーな……涼太のとこに行っとこうかな」

 涼太とは彼らの隣室に住む人間の青年である。ふとした事から交流を持っている。

「でも、3日間滞在するんだよ……そんなにお邪魔したら涼太さん迷惑でしょ。それにうちの人には同居人がいるって伝えてるし」

「3日か……さすがにそんなにあいつん家にはいられねーな……あいつの部屋気持ち悪いし」

 しばらくもぐもぐし続けた後、彼は首を縦に振った。

「わかった。まあ頑張るよ」

「うん、ごめんね。後でお礼するから」

「いいよ別に。同居してるんだし色々折り合いつけてこーや」

 クロは怒っているようには見えなかった。

「ありがとう」

 王女は安堵の息を吐く。これで大丈夫かな? まあ、どっちみち明日から3日は十分に気を配らないとだけど……。

 さて、どうなる事やら。

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