第3話 趣味と紅葉狩り

 僕は今、京都にいる。

 それは、唐突に来た勇誠からの連絡。

 "紅葉の綺麗な写真がほしい"

 場所の指定は特になかったが、ネカフェで調べた結果、京都の毘沙門堂に心がひかれた。


 ゆっくりと写真を撮りながら毘沙門堂を巡っていく。

 晩翠園や弁天堂なんかでは心が踊った。

 それはもう……勇誠の依頼を忘れるくらい、楽しんだ。

 帰る頃になってようやく思いだした僕は、手頃な場所にずれてしゃがんだ。

 そこは、モミジが地に落ち、真っ赤な絨毯のよう。

 勇誠の依頼を達成するにはよい題材となるだろう。それほどまでに、たくさんのモミジが落ちている。

 そして、撮りだしてみると楽しくて止まらない。

 明度や色彩を調節したり、位置をずらしたりピントを工夫したり……。

 それはもう、撮りすぎだろうとつっこまれても文句を言えないくらいの量を撮った。

 きっと、勇誠の望みはこれで叶えられるだろう。

 もしも、違うと言われたらまた撮りにくればいい。

 そう思い、最後にもう一枚撮ろうと準備をする。

 今度は意図的に落ちている葉をいくつかずらして、自分の理想に近づける。

 ────よし。これだ。

 カシャッ

 僕は、撮れた写真がぶれていないことを確認する。

「きれい……」

 確認中に突然真上から知らない声が聞こえ、反射的に上を向く。

 そこにいたのは一人の女性。

「あっ……えっと、あの……こんにちは?」

 女性は、しどろもどろに言った。


 その後、その女性ひとは、僕の写真を褒めた。

 僕はそれが嬉しくて、写真を見せる。

 彼女の瞳はキラキラと輝いていた。

 写真を一通りみた彼女は"ありがとう"とカメラを返してくれた。

「……あの、良かったら一緒に見てまわりませんか?」

 僕は、彼女の写真が撮りたくて、そんな提案をした。

 彼女は快く了承してくれたが、写真は撮られたくないらしく、その許可はもらえなかった。


 一緒に見てまわっている最中に、こっそりと一枚だけ撮ったのは、彼女には内緒にしなくてはいけない。

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