本編

prologue



 本棚にぞんざいに並べられた教科書やノート。

 やりかけのまま床に積み上げられた参考書の山。

 朝起きてぐちゃぐちゃになったままのベッドの掛け布団。

 畳もうとして中途半端にぐちゃぐちゃにタンスへ突っ込まれた服。

 高校生男子の部屋でよく見かける光景だ。

 ……いや、ちょっと自分の場合は輪をかけてぞんざいなのかもしれないが。


「……何考えてんだ?俺」


 俺、本郷悠輔ほんごうゆうすけが現在進行形で変なテンションになってこんな説明めいた事を考えているのにも理由がある。


「あぁ、やっとパソコンでゲームができるんだもんな……もう正直スマホMMOの重たさはこりごりだよ」


 母親にパソコンを持たせてもらえなかった俺はずっとスマホゲームをやっていたのだが、スマホはゲームしてるとガンガン重く、熱くなっていく。

 冬はある程度カイロ代わりにいいけど、やはりスマホはゲーム媒体に向いていないと思うのだ。

 そんな俺も遂に、もうそろそろ必要だろうとパソコンを買ってもらえた!

 ノートパソコンだけど、コッソリとゲーミングPCを買うように誘導したから容量も安心だ。

 そうだな……1個のゲームに集中すればいいか。

 母さんはゲーム反対派だが、この部屋は2階。

 ゲームの音声を最小限に、階段を上る音を聞いてすぐにページを閉じたりしたら大丈夫…だろうか?

 スマホゲームはホームボタンをポチッとですぐに隠せたからいいけど、パソコンに関しては勝手が分からない……。

 まあ、追い追い調べてみればいいか。

 それに、ダチ連中に聞いてみてもいいかもしれないな。

 それでも隣の部屋の妹がいつ乱入してくるか不安だけど、そこは天に運を任せるしかない。

 それに最近、面白そうな新タイトルのゲームが出たらしい。

 MMORPG『Brave and Relief』……スキル性で満腹度渇水度アリの、何かグランドクエストがあるわけでもない自由に生活できるゲームのようだ。

 逆に言えば、何か目的が無いとどうしようも無いゲームだな。

 けど、自分としてはなんら問題ないかな?

 気が向いたらこれをする、別の事しても全然OKというのは基本優柔不断な自分としては助かる。

 戦闘して、生産して、友達とかできて…。

 自由でいいならそれに甘えてマイペースで行かせてもらおう!

 というわけで、ゲーマーとしてこれからゲームを始めるというこの状況でテンションが上がらないはずがない!


「よし、ここのページを開いてゲームス……ター……ト……」


 ゲームのタイトル画面に入ってゲームのスタートボタンをクリックしたところで、急に意識が遠くなった。





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