赤い華

 すうっと澄み切った秋空の

 白い水彩追いかけて

 風がただ無邪気に遊んでいる


 そのあぜ道は季節の華を咲かせてる

 道を埋め尽くす眩しいばかりの赤

 それはずっとずっと続いている


 誰も通らない

 何も聞こえない

 雲ひとつない

 目の前にはただ一面の赤


 まるで永遠に覚めない夢のよう

 自分の影さへも忘れて

 その先に何か知らないものが待っていそうで

 でも進めば二度と戻れないような気がして


 ふと振り向いて

 誰も居ないはずなのに

 記憶の底に封印したはずの

 あの人が見ていた気がして


 この先を行ったってそこにはただの有り触れた風景

 だけれどもし物言わぬ華の囁きが聞こえたなら

 風の矢印の向こうに導かれるままに進むなら


 やがて夕焼けが全てを紅く濡らす

 影がその先へ伸びていく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る