第13話 地下格闘家Sさん<2>

そして、試合当日。


会場は、見るからにアウトローとわかる墨を入れた人たちで溢れかえっていた。


そして、Sさんの試合。


たくさんの仲間たちと共に、気合い十分のSさんが入場してきた。


すると、会場のアナウンス。


「〓〓選手は計量オーバーでしたけれど、S選手が了承したため、予定通り試合を行います。」


きっとSさんは怒りに震えたことだろう。


Sさんは、左の肋骨に一発もらえば終わってしまうかもしれない状態。


それでも逃げずに、きっちり仕上げてきていた。


「Sさんの漢っぷり、見に行きますからね。」


「頑張ります!」


試合の前日も来店してくれ、最後の別れ際に言葉を交わした時に見せたSさんの真剣な眼差し。


あり得ないほどの計量オーバー。


いくらプロじゃないからって、あまりにも勝負をナメている対戦相手に、私でさえ怒りをおぼえた。


しかし、この時点で気迫の面では勝負がついていた。


ゴングが鳴る。


試合は気迫の違いがそのまま出ていた。


1RKO勝ち。


鮮やかだった。


私はSさんの事情を知っていただけに、鳥肌がたった。


私は、Sさんに一言だけ声をかけたかった。


「Sさん、いい漢っぷり見せてもらいました。また、店来てください。」


イカつい仲間たちに囲まれているSさんの側に行き、そう声をかけ帰った。

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