時間
僕が待機を初めてもうどれだけったのだろう?。もちろん宇宙服のヘルメットのバイザーにあるディスプレイには時間が表示されている。
だけど、時間が長く感じる。
それを軽減するためにブリッジの音声をチャットにして流してもらっているけど、恐怖がのど元にせり上がってくる。
恐怖は何も訓練を受けていないのに、1人で救出作業をしなければいけないこと。宇宙線は完全に電磁波を通さない構造だから、綾音さんの支援は受けられない。
失敗する恐怖。
自分の力不足で人を殺すかもしれない恐怖。
そして事故を起こした宇宙船に入っていく、死への恐怖。
だめだ!
無心になるんだ。僕の力で琴音さんと岩崎さんを助けなければいけない。
それは宇宙船乗りにとって当たり前の事で、そのための船外作業要員なのだから。
綾音 「順平さん、ランデブーまで、後五分です。大丈夫ですか?怖くありませんか?」
順平 「もちろん怖いよ。だけど誰かがしないといけない。救助できるのは僕しか いない。だから行ってくるよ」
?? 「綾音、誰と話しているのよ。順平でしょう。順平、順平の代わりはいくら でもいるんだけど、今は淳平しかいないのだから気を抜かないでね。必ず 岩崎瑞樹をつれてくるのよ」
通信が入る。この横暴な感じのしゃべり方と内容は工藤亜理沙だ。代わりは誰でもいる。確かに船外作業要員の代わりはいくらでもいると思う。
でも・・・
だけど・・・
・・・今は僕しかいない。
覚悟を決めろ順平。
光帆「淳平さん頑張って、必ず帰ってきてください(*^_^*)」
ディスプレイに光帆さんの言葉表記される。
綾音「必ず帰ってきてくださいね。後三分です。減圧終了です」
めざましく時計の速度は進んでいく。三分を切った。
なんのために船外作業要員になった。
それは?
なんのためだ?
徴兵逃れ?
それもある。
家を継ぐ?
それもある。
だけど。
本当は宇宙と言う不条理に立ち向かいたかったからじゃないのか?
そして僕の前にはその不条理に苦しむ人がいる。
綾音「NOW。接触完了しました。琴音ちゃんをお願いします」
しっかりとエアロック内にあるバーにロープの先端にあるフックを固定して、宇宙に出る側の気密扉を開ける。
順平「みんな行ってきます」
そう言うと僕はゆっくりと船体の壁を蹴り出した。
もう恐怖は無かった。
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