これは恐怖ではなく武者震え

僕は船外につながるエアロックにいる。

体が震えてくる。

何の支援も受けられない一人での船外活動。

これは命の危険を感じて恐怖している。

当然だ。

これは恐怖ではない、武者震えだと自分に言い聞かす。

音声チャットの着信音が鳴る。綾音さんからだった。


綾音 「順平さん。大丈夫ですか?」


僕 「何とかね。いつもルーティーンに入る所だよ」


綾音「琴音ちゃんをお願いします。琴音ちゃんは海賊警報が発動しているのと主電源喪失で琴音ちゃんの命令で気密扉を開く事はできません。気密扉には独立した電源がありますから操作すれば開きます。しかし、海賊警報のために六桁のパスコードをドアごとに入力して開放をしなければなりません。今、音声チャットでデータを送るのも良いのですが、音声チャットだとコメントが流れて、読み返すのに時間がかかる場合があります。バイザーの右上にパスコードが表示される様にしたいので外部エアロック横の赤外線通信ポートにつないでくれませんか?。宇宙服に左肩に赤外線センサーがついています」


僕は左腕についている赤外線通信のボタンを押して、赤外線通信ポートの前にたった。通信開始とバイザーに表示され、バーが表示された。

バイザーの右上に外部気密扉のパスコード、エアロック内部にある気密扉のパスコード、バイタルパート内にあるエアロックの外部扉と内部扉、最後のブリッジ内にある気密扉のパスコードが表示された。僕は左手に設置されているバイザーに表示される情報のコントロール用のボールを使って、カーソルをパスコードに当て保存とクリックする。その上で視界の邪魔になるので一端バイザーの右端に寄せる。


綾音「パスコードは保存できましたか?」

順平「保存したよ、後どれくらいで隣接するのかな?」

綾音「後15分くらいでしょうか?琴音ちゃんのガイドビーコンが使えないので、   最後は私が操船します」

順平「分かったよ」

綾音「あの、順平さん。怖くないですか?気分転換になるか分かりませんがブリッ   ジの様子を流しましょうか?」

順平「緊張しているの分かった?」

綾音「順平さんは私の船外作業要員で普通怖い事は分かりますから」

順平「じゃぁ、お願いするよ。心配してくれてありがとう」

綾音「順平さんは大切な人ですからね。音声チャットで流しますね。それからエア   ロック内の減圧を開始します」

順平「ありがとう」

僕はその声を聞きながら、作業内容の手順と必要な装置があるかの確認を始める。

ハードディスクドライブはポケットの中にある。ラチェットスパナは腰の用具ポケットある。後は船外作業員室から持って17m両端にフックの付いたロープ。

これは船と船をつないで命綱にするための頑丈なロープだ。僕は左手に握りしめた。右開きの気密扉にある装甲カバー付きのハッチを開けてパスコードを打ち込む。それからだ。僕は自身の恐怖を振り払うためにこれは武者震いと言い聞かせる。

                                  続く

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