入港
「艦長おはようございます」
光帆さんがブリッジに入ってきた工藤亜理沙に挨拶をした。
「みんな入港訓練はしてくれたからしら」
「えぇ。艦長バックカメラとレーザーセンサーを使っても良いんでしょ」
「もちろんよ。綾音、交替でみんな仮眠を時間とらせてくれたかしら」
「はい。艦長。皆さんに休息と食事の時間はとってもらいました」
「入港するだけね。入港までの時間は?」
「後30分です」
「光帆、学園への帰港コースをメインモニターに出して」
「はい」
「紗枝、コース通りの操縦任したわよ」
「了解」
「光帆、学園の管制室との通信回線を開いて」
「はい。艦長」
「こちらはOTO綾音、管制室聞こえますか?」
「はい。学園管制室」
「これより一番ドックへの入港を申請します」
「申請を受け付けました。ガイドレーザーの照射および船台のショックアブソーバーの準備を開始します」
「管制室。ありがとうございます。入港に向けた旋回作業に入ります。通信を終わります」
「はい。了解しました。無事に帰港される事を期待しています」
「艦長。旋回を開始するわよ」
「コースの幅は広いけど、中心を通ってね。地球に寄り過ぎるのも、学園に近づき過ぎても、入港の妨げになるからね」
「分かってる」
「順平もそろそろ兵装系の電源をカットして」
「兵装系の電源をカットするよ」
僕はそう言うとレーザー砲、フィールドジェネレーター、迎撃ミサイルシステムの電源を落とした。
「綾音さん。電力供給の確認をしてくれないかな?」
「はい。自動点検シークエンスを開始します。二分程度待ってください」
「分かった」
・・・
・・・・・・
「自動点検シークエンスを正常に終了しました。電流はカットされています」
「後は入港コースに船をつけるだけね」
ブリッジにしだいに緊張感が増してくる。
ブリッジは無言になった。
「旋回終了。寄港コースに入るわ。綾音ちゃん。ガイドレーザーの中心軸とターゲットマーカーを出して」
「はい、紗枝さん。艦長よろしいでしょうか?」
「もちろんオーケーよ」
「中心軸及びターゲットマーカーをメインモニターに展開」
「艦長、ガイドレーザー内に船を入れるわよ」
「紗枝、頼んだわよ」
「任せて」
やる事の無くなった僕はメインモニターを見ていた。
「光帆、管制室に入港作業を開始すると伝えてね」
「こちら、綾音、これより入港作業を開始します」
「管制室了解しました」
メインモニターを見ていると中心軸に向かって船が進んでいるのが分かる。
中心軸に船を合わせると、船を貫くように設置している相転移エンジンを逆噴射して慣性の法則に従って入港作業を行う。逆噴射は船の前向きの力を後ろ側にするごくわずかな時間だけ噴射される。船はドックに向かってバックでのろのろと進んで行くはずだ。
・・・
・・・・・・
数分が立つ。軽口をたたく様な状況じゃない。
横目で紗枝さんを見てみる。
とても真剣な目をしていた。
ターゲットマーカーが中心軸を捕らえる。
「綾音、センサー類に異常はない?確実に中心軸を捕らえている?」
「センサー及びバックカメラに異常はありせん。入港コースに乗りました」
「紗枝、相転移エンジン逆噴射。後方に向かって5宇宙ノットになるまで逆噴射を行って」
「はい。逆噴射を開始」
船に相転移エンジンを逆噴射した衝撃が伝わる。
数分間の逆噴射が行われた。
船はゆっくりと後退し始める。
「相転移エンジン逆噴射停止。相転移エンジン停止」
「みんなシートベルトをつけて。これより重力制御を解除します」
僕は慌ててシートベルトをつけた。
「みんなシートベルトをつけたわね。綾音重力制御を解除」
「重力制御を解除しました」
その間にも船はゆっくりと後退していく。
まさかぶつかる事は無いよなと思う。
必要の無い事を考えていたら紗枝のつぶやきが聞こえた。
「エンジンにもハンドルにも触れないのってストレスになるのよね」
「紗枝。私語は厳禁よ。その気持ちも分からなくはないけど我慢して」
バックカメラを見ているとどんどんドックが迫ってくる。
「船台が発進口の真ん中まで来ているわ。ショックアブソーバーにぶつかったら、速度を殺すために、ブレーキをかけながらドック内向かって進んでいくはずよ。衝撃に気をつけてね」
会話をしている内にドック内に船が入る。
「耐衝撃防御」
ブリッジの緊張感が高まる。
工藤亜理沙の命令とほぼ同時に衝撃が走ると同時にゆっくりとドックに向かって仙台が船の速度を殺しながら後退するのが分かる。
バックカメラを見てドック外側のエアロックに船台が止まったのが分かった。
「管制室より綾音、お帰りなさい。ランディングギアの出してください。重力制御を開始します」
「綾音ランディングギアを出して」
「はい。艦長。ランディングギア出しました」
「綾音より管制室。重力制御をお願いします」
「重力制御を開始します」
ずん。
船が船台に着くのが分かる。
「外部エアロックを解放します。解放後船台をエアロック内に進入開始。進入を確認。外部エアロックを閉じます」
「みんな気を抜かないで。ドックに入るまでが航海よ」
「はい」
光帆さんだけが返事をした。
「エアロック内に空気の充填を完了しました、。内部のドアを開きます」
「はい。お願いします」
「ドアの開放を確認しました。これより船台の移動を行います」
数分後、どんと言う音と共に船台が止まる。
「管制室より綾音クルーのみなさんお疲れ様でした。船台のロックを確認しました。通信終わります」
僕の船外作業要員としての初航海の終だった。
続く
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