帰還に向けて

僕は食事を終えてブリッジに向かっていた。

ブリッジの開きっぱなしになっているドアをくぐり、ブリッジに入る。

「順平遅いわよ。速く座りなさい」

前にもこんな事があったな。

僕は反論をするのも面倒くさかったので工藤亜理沙の言う事をおとなしく聞いた。

「八時間に護衛艦隊司令部からスループが派遣されて、私たちは哨戒任務を終えて帰路にあるわ。今から綾音をドックに入れる手順を説明するわ。ぶっつけ本番は危険だからね。こう言うの綾音に任せていれば良いのだけど、必要最低限の人間が乗っているから、人の手で操縦しないといけないのよ。宇宙船の操縦の関する規定にそう書かれているわ」

「どうして全員を集めたんだ」

「難しいからよ。あの学園の施設じゃ、ドックに向かって後ろ向きに船を入れなければならないわ。音級フリゲートは姿勢制御用のジェットもアポジモーターももっていない。細かい姿勢制御ができないのよ。もちろん学園付近のでエンジンの使用もできないわ」

「ちょっと意味が分からないけど」

「学園のドックから出してくれるドックの入り口を示す四角形の四本のガイドレーザーの真ん中に船を持ってこないとドックに入れず学園にぶつかるわ」

「ど真ん中に持ってくる必要があるんだな。操艦が難しいんだね」

「えぇ。説明を続けるわね。前もって学園にガイドレーザーを出してもらって、学園の地球側を回って船の向き、ドックに対して背面を見せると同時にガイドレーザーの中心に船を持っていってもらうわ。綾音の操艦だとそれが一番速いからね。その後、逆噴射をしてベクトルの向きを変えてエンジンを停止。後は慣性力に任してドック入りに船をいれるわ。後は船台にから伸びる停止用にある二本の棒に船体をぶつけて、船台のカタパルトを慣性力を殺すように逆向きに作動させて船の慣性力が止まれば、ランディングギアを出して船台の重力制御を開始。それでエアロックを閉鎖してと開放を繰り返して、船台をドック中央部まで持ってくれば終わり」

「複雑な工程じゃないけど、難しそうね。頭から入れるのはだめかしら」

沙枝さんが質問をする。

「学園の小さな設備じゃ、船を回転させる回転式の船台は無いわ。それに今度の出港の時、背面から綾音を出港させるのは恥ずかしいしね。航行したい方向に船の向き変えるのに手間がかかるのよ」

「それもそうね。私の腕にかかっているのよ。良いじゃない。一発でガイドレーザーの真ん中に持っていってあげるわ」

「それと船台の重力制御を行うから、ドックに入れる間は無重力状態にするわ。二重に重力がかかるのは嫌だからね。みんな分かったかしら」

「分かったわ」

「はい。頑張ります」

「俺は何をすれば良いんだ」

「兵装系の管理よ。ぶっちゃけ全ての電源を落として座っているだけだけどね。暴発したりしたら困るから。後は数合わせよ。順平仕事は無いわ。じゃぁ仮眠してくるわ。ビショップ先生の指導を受けてドック入れの練習をしておいてね」

そう言い残して工藤亜理沙は去って行くのだった。

僕はドックに入れるという難しい作業に緊張感を持つのだった。

                                  続く

                               


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