注水作業
僕は綾音さんと食糧倉庫で非常用食料を積み込んでいる。
その最中、綾音さんは動きを急に止めて、何か考え込むようなそぶりを見せた。
僕は気になって話しかける。
「綾音さん、どうしたの?」
「艦長からの通信です。非常用食料を積み込んでから、水を注水して欲しいそうです。学園側許可は下りているそうです」
「それもそうだね?水の補給は大切だよね」
「はい」
「じゃぁ、食料の積み込み頑張らないとね。非常用食料はこの棚に段ボール事積み込んで良いのかな?」
「はい、エナジードリンクと一緒においてください」
僕は非常用食料とエナジードリンクのの入った段ボール箱を棚に積み込む。
「これで良いかな?」
「はい、確認しました。食糧の積み込みは終了です。注水作業を行いましょう」
僕達は食糧倉庫を出て、船の乗り込み口に向かって歩いていた。そこには水の注水口が置かれている。
なるべく設計と製造の手間を省く為に、ブロック構造とされた音級フリゲートは各ブロックを横断するように水の配管などはされていなかった。
だから直接、船体中央部に置かれたタンクに水を積み込む必要がある。
「水の補給作業はどうするのかな?」
「はい。順平さんは液体補給の資格を持っていませんし、監督者が必要ですから、指導しますね。ビショップ先生に無線通信を行います。まずは注水口の横にあるハッチを開けて、ホースを取り出してください」
僕は言われたままホースを取り出す。
「その次は?」
「注水口にホースをつないでください」
僕はホースの差し込み口を力を込めて押し込む。
かちっと音がした。
「そのまま、ロックをかけてください」
「はい」
僕は言われたままに差し込み口についているバーを倒した。
「ロックは完了しましたね。その次はホースを持ってドック側の送水口に向かってホースを引っ張っていきます」
それもそうだ。当たり前だ。送水口にホースをつながないと意味が無い。
僕はゆっくりとホースを持って行った。
送水口にはテンキーのついた大きな四角形のカバーがついている装置を触れる。
「綾音さん。カバーの意味はあるのかな?」
「盗難防止のためです。水は貴重ですからね。暗証番号を打ち込むから待っていてくさい」
綾音さんが手早く暗証番号を打ち込む。
「はい。完了しました。箱を開けてホースをつないでください」
送水口の横にもテンキーがある。なぜだろう?
「分かりました」
「突然の敬語はなぜですか?」
「綾音さんは指導教官だからね」
「ふふ、順平さんは不思議な人です。注水作業中はホースが水の圧力に負けて暴れたり、無重力状態での水の補給はもし万が一水が漏れた場合は、水滴になって回収ができなくなる事もあります。水滴が船についたり、ドックの機器に触れたりしたら、故障や事故の原因になりますからね。油断は禁物です。集中してください」
「分かりました」
僕は注水口にホースをつなぐとロックをかけた。
「その次は送水口の横にある水補給の許可番号を打ち込みます。また少し待っていてください。後は自動で行われます」
綾音さんは正確にテンキーを打ち込んでいく。
綾音さんはアンドロイドなのだと改めて実感する。
「完了です。送水弁を開けてください」
「はい」
僕はそう言うと大きな丸い形をした送水弁を開放する。
少しずつホースに水が流れ出した。
水の補給が始まった。
続く。
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