武装商船部にようこそ

@tomato197775

その出会いは突然に

宇宙ステーションの外壁の通路を歩いていると窓越しに綺麗な地球が良く見える。僕は宇宙ステーションを丸々利用した軍が運営する商船学校にいる。

いると言うか今日入学し、教室に向かって歩いて行く所だった。地球出身者に対する試練と言う事で磁力靴を履いて歩かなければいけない無重力空間を歩いていた。

木星に存在する星の門と呼ばれる異次元空間から未知の生命体に襲われて30年。熾烈な戦闘が行われている。僕がこの学園に入学したのもその為だった。現在、宇宙艦隊は後方の兵站業務をいくつかの大手輸送会社に任せて、前線に人と船をを送っている。そして不幸な事に限定的な徴兵制を行い人材を確保しているのだった。僕は徴兵をされて、男の中の男、空間歩兵になるのはまっぴらごめんだった。僕の実家は小さな運送会社と倉庫業をやっているので、僕も無重力空間には慣れている。

宇宙出身者から徴兵される事が多い。だから徴兵が免除される輸送会社に就職したい。軍需も大切だけど軍需を支える民需も大切だから、運送業につく人間は兵役を免除されている。だから商船学校で高度な資格を取り、早く実家を継ぎたかった。家にいる時に例外的に認められている、空間作業員2級を取り、資格試験で空間ケーブル接合資格と空間ボルト締め工法3級の資格を取った。これは宇宙ステーションを維持管理する為に必要な資格だから指導員役の教育型アンドロイドによる教育を受ければ簡単なテストだけで合格できるのだった。教育型アンドロイドが中学生相当の教育をしてくれたおかげで、僕は学校と言うものに行った事が無い。零細の家族経営の配送・倉庫業と言うのにはつきものだった。学校に通うに月面、もしくはコロニーはコストがかかりすぎるのだった.

小中学生の時期に寮生の学校と言うのは、私立の学校しかなくてうちの経済力では入学できなかった。人類の生息領域が広がった今、教育型アンドロイドと通信教育による教育が認められていた。宇宙生活者においていくつかの資格が特例で取れたりもする。でも専門資格は実習時間と座学が必要だった。だから僕はこの商船学校に入学したのだ。だけど僕はうれしかった。僕は教育型アンドロイドが教えてくれた古典の時代の一つ、21世紀初頭のオタク文化にあこがれていたからだ。男女共学の学園生活、現実は甘くないだろうけどあこがれていた生活に僕は迎え入れられた。母親と妹以外の初めての女性を会話何てうまくできるのだろうか?初めての学校、始めての共学の学校だった。いやがにも期待が膨らむのだった

「前の人、どいて、どいて、むしろどけ!」

そんな時に後ろから叫び声が聞こえた。

女性の様な声だった。

どうせ無重力空間で必要な磁力靴を忘れたのだろう。床を蹴って推進力を得て、慣性力で止まれないに違いない。僕はどんな人か見ようと振り返る。

「だからどけっていっているでしょ」

僕は磁力靴を強引に引き離し避けようとする。だけど間に合わなった。

彼女は僕を避けようと床を蹴り上げる。

ボス

彼女の胸で視界を防がれる形で僕は曲がり角の壁まで流されていく。

無重力空間での壁への激突事故のダメージを軽減する目的で壁にはクッション材が多用されていた。だから別に壁にぶつかったのは痛くない。

「痛い」

[それはこっちのセリフよ!]

ぶつかり彼女の体重と慣性力が僕の頭にかかってくる。。

古典ラノベか!と自分でも思う。

状況に突っ込みを入れている場合じゃない!

でも古典ラノベだと気の強い少女がぶつかってくるんだよなと思う。

小柄な美少女か巨乳でスタイルの良い美少女に決まっている。。

いやいや冷静に分析している場合じゃない。

問題は僕が女性の胸に顔をうずめる様にして壁にぶつかっている事だ。

顔が痛いと言う事はきっと成長途中の小柄な少女に違いない。

古典ラノベの展開だとそうだと決まっている

かなり顔が痛い。

それにしても大丈夫ともごめんなさいとも言わない人なんだなと思う。

混乱している頭の中でそんな事を考えていた。

だから言葉に出る。

「痛い。早くどいてください。胸骨がめり込む」

「なんですって!あなたはとても失礼な人ね。私の大きな胸がクッションにならなかったのかしら?あきれるわ。古典ラノベ読み過ぎじゃないの?]

「クッションの意味を辞書で引てみた方が良いと思うよ」

このまま話し合っていても不毛な気がしたので彼女を引きはがそうとする。

でもちょっと古典ラノベみたいな感じだなとも思う。

そんな事期待してはいなかったけど。

だから夢を見ている場合じゃない。

僕は腰の高さに設置されている僕は磁力靴を床に押し付け、右手で手すり掴みしっか、彼女の体を左手で引き離そうとする。

簡単に引きはがせた。肩を持ったままだ。ただ引きはがすと彼女はまた慣性力に従って反対方向に流されていくだけだ。だから僕はしっかりと全身に力を込めて彼女を引き留める。非常識な人だけど、床にも足が着かず、廊下の真ん中でふわふわ浮いているのはかわいそうに感じる。

そう言う思いとは別に僕は自然と彼女を観察していた。

船外作業員は観察してから行動を行いなさいと言う基本の教えがあるから無意識に観察したと信じたい。

髪型は黒色の長い髪の毛をストレートに流している。校則違反だ。

身長は高い。僕と変わらないぐらいあるだろうか?

足も長い。

顔立ちはシャープだった。

古典ラノベとは違って胸が小さい事を除けば、超絶美少女の部類に入ると思う。

ぶつかられた事はアンラッキーだけど、こんな美少女を近くで見れたのはラッキーだったかもしれない。

いや観察してどうする。

「失礼な人ね。そんなに私が古典ラノベに出てくる美少女みたいだからってまじまじと見ないでくれる。早く手を放してくない!。気持ち悪いわよ!」

僕はむっとする。落ち度はないのにここまで言われるとは心外だった。

古典ラノベのヒロインと言うにはバランスが悪い」

「どこがよ!」

「胸に手を当てて考えてみれば良いじゃないか?」

「どう言う意味よ!」

「特に深い意味は無いけど、何か思い当たる事でもあるのか?」

「本当に礼儀知らずね。早く離れなさいよ。変態よ]

そうだ、もう手を離しても良いはずだった。変態扱いされてまでもつかんでいる必要はない。少し見つめていたの事実だけど、変態はないだろう。

ぶつかってきたのは彼女だし、吸着靴を履いていない彼女が悪い。

宇宙でのルールを守らず、守らないどころか無視をして事故を起こしたのは彼女で、被害者は僕なのに。

少し反撃をしないと腹の虫が収まらない。

「じゃぁ、離すよ」

そういうと僕はつかんでいた彼女の体を中に浮くように離す。

「ちょっと何をしているのよ。私は吸着靴を持っていないのよ。それに宙に浮いているから、床に足がつかない。私は急いでいるのよ!」

「お望みのまま手を離しただけだよ。気持ち悪い男から離れたいだろうし」

「私は磁力靴履いていないのよ。男ならか弱いレディを助けなさいよ」

面倒くさいけど助けないといけない。関わり合いになりたいないタイプの女性だと思う。だけど僕には船外作業要員としての無重力空間での安全管理義務がある。それに家族以外での初めて出会った初めて女性で、古典ラノベの様な出会いをくれた女性だ。仕方がない助けよう。

僕は右手を差し出すと少女の左手を掴む。

「僕の右手につかまって。重力空間まで連れて行くよ」

「何も私はそこまで頼んでいない。それに私が恥ずかし過ぎる」

「僕も恥ずかしい。だけど重力空間まで連れて行くよ。手をしっかりと握って。それとも廊下を蹴りながら進んで止まれず事故を起こすつもりかな?」

「分かったわよ。ぶつかったこっちも悪いし、少しの間、美少女との登校を楽しまさせてあげるわ」

美少女と自分で言い切るあたり、相当自分のルックスに自信があるのだろう?

それにしてもどこからも上から目線で。自分事を美少女と言い切れるのも問題だと思う。

まるで古典ラノベの登場人物みたいだな。

「美少女と言うにはバランスが悪い」

「何か言った?良く聞こえなかったわ」

「別に美少女である事は認めるけど、胸のバランスが良く無いとは言っていない」

僕は平静を失っていた。あんまりにも僕が好きな古典ラノベ、そう21世紀初頭前後の古典の一種とされるライトノベル的な展開だったからだ。

普段口にしない様な言葉がぽろっと出る。

「怒るわよ。女性のコンプレックスにつけ込むなんて最低の男ね。だったらどうして超絶美少女である事を除いてもバランスの悪い私を助けてくれるのよ?」

「船外作業要員の資格を持っているから宇宙における事故を防止する努力義務がある」

自分でも苦しい言い訳だと思う。素直に言えばこの痛い少女を助けたいと思うのだった。まるで古典のゲーム《20世紀後半の美少女ゲーム》みたいな反応だなと思う。この少女は何と戦っているのだろうか?そんな少女を助けたいと思う僕も古典的ラノベ的だと自ら突っ込むのだった。

「船外作業要員て、宇宙服を着て宇宙空間で作業をする人?その船外作業要員を目指しているのでは無くて、もう船外作業要員なの?」

「そうだよ。家が小さな宇宙ステーションだったから宇宙居住者特例で、宇宙ステーション《家》での緊急脱出や手伝いの為に船外作業要員3級と修理補助や作業訓練ができる船外作業要員2級の資格を持っているよ。無重力空間ボルト締め工法3級と汎用ケーブル接合後方3級も持っているよ。この学校で訓練時間を稼ぐのと実際の修理作業に必要とされる宇宙空間溶接工法3級とか荷物の積み込み資格3級とかとって自宅を手伝うつもりだよ。教育型アンドロイドにいろいろ教えてもらったよ」

その僕の言葉を聞いて少女はにやりと顔をゆがめるのだった。

「良い事を聞いたわ♪」

何かうれしそうな声で声だった。

危ない奴に個人情報を漏らし過ぎたみたいだ。

でも仕方がない。

だって初めての学校生活で家族以外の女性との出会いが憧れていた古典ラノベみたいな出会いだったから。

これから始まる学校生活に胸を躍らせるのだった。

                                 続く                         

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