塵都乱
澁谷晴
一~二
一
祝日の
胸を張れる方法で得たのではないが資金は潤沢にあったし元来猫背の白は躊躇せずに餃子をたらふく食い蝶の飛ぶ方角へ向かった。大都市は間違いなく蝶が飛んでいる。ここのは緑色で少し黄色が混じっている。いてもいなくてもどっちでもいい特権階級なのでほとんど存在感は煙だ。馬鹿と煙は高い所が好きというが自分は〈賢明な煙〉と白は自負し地下鉄へ降りた。
見るからにギャング的な若造が血の付いた鉄棒を持って歩いている。何か毒ガスでも撒かれたのかガスマスクを着用の男達もいた。しかしまあ入り口に立ち入り禁止の札も無かったし大丈夫だろう。「中和剤持った中和剤」「あ忘れた、五リットル忘れた」「気をつけてよ安くないんだから」「安くはないねすいません」「昔から闇ある人だったよねあの人」「それはねお父さんを若くして亡くしたからなんだよね彼女はかわいそうなんだ」「何だってお前はそうやって借りてきた猫みてぇなんだ!」「借りてきた猫みたいってことはないでしょう」「若くしてお父さんを亡くしたんだよね」「あの女いけすかねぇ」
一駅二〇〇
二
短期労働者向けの安宿に転がり込んだ。三畳ほどで、無いほうがましってくらい汚く臭う浴室があり、お湯が出なかった。窓から見下ろす塵都はいつまでも雨が降ってて薄暗くて胡散臭い奴らが大量に歩いている。隣に激安で激マズな飲食店があり人造肉丼ばかり食べていた。ガスマスクの集団はいつもうろうろしていて日常的に毒ガステロがあるのかさもなくば都市の悪臭から逃避したい一心なのかと白は思っていたが、同じ宿に滞在している三十過ぎの男に聞いたところ彼らは、彼らにしか探知できないが彼らにとっては毒になりうる何かを探して処分する仕事に従事してるとのことだった。仕事を探そうという気にはどうもなれなかった、それは大抵の仕事は個人ナンバーと連絡の取れる携帯端末を必要としていたからでそうでない仕事は劣悪極まりなく、もちろん白が就ける仕事はどれも劣悪でそれらのうちでも指折りのやつって意味、白は端末も処分していたし個人ナンバーも失効していてどうする気にもならなかった。
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