第2話 その経緯その2

小説家になろうに登録を済ませた所までは良かったが、一向にPVがつかず僕は早くも心が折れかかっていた。自分なりに考えて絶対上手くと思っていた方法なのに肝心の小説にアクセスが集まらない。本末顛倒である。


それでも諦めず必死に投稿を繰り返して、漸く幾つかの短編に評価をもらう事ができてきた。色々と研究をした。Twitterでの小説家仲間も増えてきた。僕は少しずつでも前に進んでいる実感を感じていた。自分のしがない小説を面白いと言ってくれる人がいる。一人でも二人でも、これは心底嬉しい事だった。


おまけにオープンしたばかりのカクヨムにも登録し、僕の小説家ライフはいよいよ充実し始めた。僕は小説を書くのが楽しくて仕方なくなっていた。


人間だれしもある事だが、当初の目的を忘れてしまう事はままある。僕も楽曲を配信した時に少しでも広範囲に拡散出来ればと始めた小説活動だったが、徐々にそちらの方に割く時間が多くなっていた。しまいには歌詞を書くのをおろそかにして、小説ばかり書く様になってしまった。


音楽は歌詞を書く以外にもやる事が多く、音を作ったりメロディを考えなくてはならなかった。レコーディングに始まり、スタジオ練習やライブの日程を決めなくてはいけない。とにかく時間がかかる。僕は少しずつ、音楽活動自体がおろそかになってきていた。


レコーディングは一向に進まず、メンバー内にもピリピリした空気が流れ始めていた(主に僕のせいで)。四月の時点で年内にアルバムを作ろうという話が早くも頓挫しようとしていた。


その空気を感じ取りプレッシャーにやられた僕は一層歌詞が書けなくなってしまっていた。アホである。そして現実逃避としてまた小説を書き続けた。私生活の方も慌ただしくなり半ばノイローゼになりかけていた。そんな時、メンバーの一人がこんな事を言ってくれた。


「お前のペースで良いから活動してくれ。何ならまたしばらく休止したって良い。お前が嫌なら、ここで終わりにしたって良いんだ」


この言葉に救われた。


僕は再び歌詞を書き出した。人間とは身勝手な生き物である。書けと言われれば書けなくなり、書かなくても良いと言われると書き始める。気持ちが楽になり、身体の中に言葉が溢れていた。


こうして僕はコソコソ小説を書きつつ、音楽の方も何とか続けていくことになった。


そして、ついに1枚目のシングル曲が完成し先日配信するに至ったのである。今のところそこそこの売れ行きと評判である。


これに懲りない僕らは早々に2枚目のシングルを配信する事にした。しかも今度は、本格的なMV付きでである。さて、それは如何にして撮影する事になったのか。それはまた後日の話である。


読んでくれた方、応援してくれた方ありがとうございます。良ければ楽曲の方も視聴してみてくださいませ(懇願)

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