第一次月面防衛戦
ヴァン=ガルム
[月と霜の巨人]
火星軍が宣戦布告してから数日月面はたった四機の人型兵器によって占領されて行っていた。
人型兵器TLA、筋肉の動きに連動するMTSによって自在に動くことの出来る兵器。
地球軍もTLAを開発し対抗するが不完全な操縦システムにより苦戦を強いられる。
そして月面での第一世代TLA同士の最後の戦いが始まろうとしていた…
地球軍月面基地[アクレオプス] 基地内廊下にて
「撤退!?どうしてですか!」
激高する女性士官 リアン・パートン軍曹、そして彼女の目の前にいる月面戦争初期からの歴戦の兵士 グウェン・ドリン少尉
「説明した通りだリアン軍曹、月面基地は壊滅状態、少数の防衛部隊を残し撤退せよ…だ。」
「くっ…!たかが四機相手に…」
火星軍のTLAユミールに地球軍は苦戦していた、運動性能の差だけではない、地球軍TLAヨートゥンのレーザーキャノンを弾く特殊なフィールドやプラズマ砲に苦戦しているのだ。
「その悔しさを忘れるな、いずれあいつらに敵うTLAも開発されるハズだ、今は引くんだ。」
「ですが私は戦う為にここへ来たのに、まともに攻撃すら当たらないなんて…!」
悔しさを噛みしめるリアン軍曹、そこへ一人の兵が来た。
「グウェン少尉殿、ヨートゥンの改修は終わったようです、他3名も既に出撃準備完了です。」
「うむ、ご苦労。」
「え? グウェン少尉、まさか!」
「あぁ、私はここに残る。」
兵と共に格納庫へ向かう少尉、リアン軍曹は理解出来なかった、何故死にに行くのか。
「少尉!何故!?」
振り向いたグウェンは笑みを浮かべながら言った。
「今まで死んだ奴らの為に火星の連中に一泡吹かせて来てやるのさ」
そう言ってグウェンは格納庫へと足を向けた。
地球軍月面基地[アクレオプス] 外周
ノイズ混じりの部下の声が聞こえる
「ルナ02からルナ01へ、グウェン隊長本当に良いんですか?」
「お前こそいいのか?娘が地球で待ってるんだろう?」
部下のソルティ・ライズ曹長は震え気味な声で答える。
「…のうのうと逃げるよりも、どうせなら男らしく戦って死んでみたいと昔から思ってましてね…」
「ハハッゲームのやりすぎだぞルナ02」
ルナ03のタケナガ・ゴウカイが笑う、それに対して呆れ気味にルナ04のアレリア・ウェアンが言う。
「もう少し緊張感持ちなさいよ。」
「むしろこの方がいつも通りって感じだな」
「ルナ01から全機、こんな上官に付いて来てくれて、ありがとう。」
「…ふっ」
「今更何いってるんですか隊長!」
「4:4じゃないと時間稼ぎも出来ないから。」
ピーッ!ピーッ!
レーダーに4つの反応が移る、火星の巨人が来たのだ。
「お出ましか…」
赤い細身の機体に青い複数の発光箇所、そして主兵装と思しき大型ハンマーを持った巨人が4機現れる。
対する地球軍
灰色の肩幅の大きな機体にレーザーではなく実弾砲を取り付けレールガンを二丁持つ。
この時は誰も知らなかった、これが長きに渡る火星と地球の不毛な争いの序章に過ぎなかった事を…
第一次月面防衛戦 ヴァン=ガルム @Van15000
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